「高知ファンクラブ」 の連載記事集1

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鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」 ・・・ミーム

2010-11-20 | 鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」

「ぷらっとウオーク」
{ミーム}                             情報プラットフォーム、No.189、6(2003)


  親が身を賭して子を守ることがある。人間や哺乳動物だけではなく、鳥類や魚類にも見受けられる。これを美談や感動的と思うことは自由である。しかし、どんな自己犠牲的な行動も利他的な行動も遺伝子にとっては利己的で合理的な振る舞いと考えると納得できる面がある。つまり、全体のための部分犠牲でしかないと考えるのである。

生物の個体(個人)は遺伝子の乗り物に過ぎず、遺伝子は何時でも乗り換える用意をしているとの考え方である。生殖活動が終わり、遺伝子を次代に伝えれば、存在価値はなくなる。個体が消えて役立つ例も多い。産卵を終えて死を迎えた鮭は孵化してくる稚魚の栄養源になる。

 生物の授業で「獲得した形質は子孫に伝えられない」と教えられた。しかし、生殖能力を失っても生きている人類は、父母に加えて祖父母も一緒に暮らす人類は、文化・伝統を他に伝えることが出来る。衣服や食物の様式、儀式、習慣、芸術、建築、技術、工芸、これらはすべて歴史を通じて、地域の中で、集団の中で極めて速度の速い遺伝子的進化のように伝達すると考えることが出来る。

 この新種の自己複製子をミームと名付けている。gene(ジーン)が遺伝子。ギリシャ語で模倣が「mimeme」であり、文化遺伝子を「meme」と命名している。その特徴は、世代を継ぐとは関係なく多くの脳に伝達できること、群の個体同士なら血縁に関係なく伝達されること、最後に、遺伝子よりもコピーミスが多いことである。

  このミームはジーン以上に自己中心的であり、排他的であり、自己犠牲を嫌わない。思想や神は人間の脳の中にだけ存在するもので、非常に強い伝達能力をもったミームとして実在している。信仰が盲信へ進むと全てを正当化し、あらゆる手段で人の心の中で増殖を始める。政治的な盲信、文化的な盲信もある。人類の歴史はミームの間の生存競争の歴史でもある。今、中東で起こっていることも含めて。

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鈴木朝夫   s-tomoo@diary.ocn.ne.jp

 高知県香美郡土佐山田町植718   Tel 0887-52-5154



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