経理・経理・経理マンの巣窟

大・中・小あらゆる企業で経理実務経験約40年の蔵研人が、本音で語る新感覚の読み物風の経理ノウハウブログです

全く異なる上場企業と中小企業の経理

2011-11-18 10:45:29 | 達人経理マンへの道

 素人からみれば所詮経理なんて金庫番で、銭勘定をしているだけの部署にしか映らないようだ。職務分掌規定や職能要件書を作っている人事部でさえ、新入社員達を引率してきて「ここは経理部で、経費の支払いをしてくれる部署です」なんてバカな説明をしている。
 冗談言っちゃいけない、支払業務なんて、経理業務のほんの一部じゃないか、資金繰りや決算を忘れてもらっては困ると怒鳴ってやった。しかし皆キョトンとしている。そもそも資金繰りや決算って何なのかさえ、誰も知らないのだから情けない。

 経理部は地味な存在だ。しかしその役割と責任は計り知れないのである。だが誰もその役割を知らないのだから淋しい存在だよね。
 ことに大企業の経理部では、業務が細分かつ専門化するので、馴染みのない詰まらない仕事に見えるのだろう。もっともやっている経理マンはもっと退屈なのだから苦笑せざるを得ない。
 ところが中小企業の経理は全く違うのだ。中小零細企業で経理といえば、「事務屋」のことを指す。つまり商事会社なら、販売以外の仕事は全て経理なのだ。だから大企業のいわゆる「管理部門」よりも、ずっと守備範が広いのである。

 大企業の「管理部門」は、通常「人事部」「総務部」「経理部」「経営企画室」「広報室」「秘書室」「情報システム室」などを総称していう。そして経理部はその中のワンセクションに過ぎない。
 ところが中小零細企業の経理とは、この「管理部門」の職務に加えて営業事務や在庫管理などの業務も加わるのだ。いやはや膨大な守備範囲だが、絶対量が少なく法的規制も緩いので、場合によってはこれらの仕事を全て1人でこなすこともある。いわゆる零細企業の通称「1人経理」である。

 結果として全社の組織と仕事の流れを掌握し、事務手続の全てを司るわけだから、この人がいないと会社が機能しなくなる。だから勢い権力を持ち、周囲の人々も機嫌をそこねないように気を使う。
 実は私も20代のときに、ある中小出版社で、この「1人経理」を経験している。当時仕事の遅い編集者に対して、「貴方の仕事が遅いから、資金繰りが回わらない。だから今月は給料が遅配になりますよ」とよく先輩たちを脅したものだ。
 もちろん脅すだけでなく、何度か本当に遅配にした。もちろん遅れた者だけではなく、全員が遅配となるため、仕事が遅れた編集者は、全社員に怨まれることになる。

 20代の若造が独断でこれだけの処置をとっても、社長をはじめとして、誰も文句が言えないのだ。それだけではない、銀行との折衝でも中心的な存在であり、支払先にはペコペコ頭を下げられる。
 監査がある訳ではないから、細かい会計基準なんて無視・無視。商法(現在の会社法)の根本から外れず、税法さえ遵守していれば、自分流の会計で全く問題がなかった。

 そもそも上場企業の会計は、株主や債権者のために存在する。それどころか最近は極論すると、公認会計士の保全のための会計に成り下がってしまった。だから会社自身の経営には余り役に立たない。それで別途「管理会計」なるものが登場したのであろう。

 それに比べて中小零細企業では、かなり自由な会計処理が出来るので、初めから財務会計を管理会計用として活用出来るのである。
 これだけ権限を持ち、創造性と実行力が発揮出来るのが、中小零細企業の経理マンなのである。ただし大企業でのうのうとハンコだけ押してきたオジさんや、専門バカに育ってしまった大企業の経理マン達には、厳しく難しい仕事だろうな。ということだから、中小企業の経理マンは思い切り胸を張りなさい。

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