極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

沈黙との対話

2017年08月30日 | 時事書評

 

     

         成公16年( -575) 鄢陵(えんりょう)の戦い   / 晋の復覇刻の時代 

                                  

       ※  楚の子重、酒を受ける:晋の欒鍼(らんけん)は、楚の軍勢の中に子重の旗
       印を見つけ、属公に申し出た。「楚人の話では、あの旗印は子宝のものだと
       いうことです。あの旗の下に子重がいます。以前、わたくしが使者として楚
       におもむいたとき、こんなことがありました。子重が『晋で勇気があるとい
       う場合、どんなことを指すのか』とたずねたのです。わたくしはそのとき、
       どんな場合にも、軍の指揮がとれること、そして、つねに余裕をもつことだ
       と答えました。楚軍と対峙している今、わが方が楚の陣に使者も出せぬよう
       では、軍の指揮が十分とれていないと思われるでしょう。今となって前言に
       背いたのでは、余裕がもてないのだと思われるでしょう。子重の陣に使者を
       派遣し、酒をとどけたいと思います。ぜひお許しください」

       厲公がこの申し出を認めたので、欒鍼は子重のもとに使者を出した。使者は
       酒をとどけると同時に 欒鍼のことばを伝えた。「戦いのさなかとて、わが
       君の陣屋も人が少なく、わたくしが守備をはなれるわけにまいりません。自
       分で行けぬのは残念ですが、使いの者に酒を持たせますから、ぜひお受けと
       りください」早退は「なるほど、いつかの言葉を実行されたのだな」とうな
       ずいて酒を受け取って飲んだ。しかし、使者をかえすとふたたび陣太鼓を鳴
       らして、戦闘態勢を解かぬことを示した。夜明けとともに始まったこの日の
       戦闘は、星が出てもまだつづいた。
 

 No.58 

 

【ZW倶楽部とRE100倶楽部の提携 Ⅶ】 

【エネルギータイリング篇】 

♞ 最新サーマルタイル技術

 Mar.17, 2016

❏ 特開2017-147376  n型熱電変換材料およびその製造方法

【概要】

自然再生可能エネルギーまたは排熱等から電力を得るものである二酸化炭素フリー発電技術の一つとし
て、熱電変換材料がある一方で、緊急時用、災害時用または医療用の電源利用に、小型で軽量な熱電変
材料が求められている。また、熱電変換材料をウェアラブルデバイスまたはポータブルデバイス等に
適用する場合、熱電変換材料を体の形状に沿って密着させ、熱源として体温を利用できる柔軟な熱電
材料も求められている。この分野に利用可能であり、希少原料/毒性原料に頼らない材料として、
電性高分子を含む有機半導体またはカーボンナノチューブ等のナノ材料がある。

通常、型導電性を示す材料(p型材料)およびn型導電性を示す材料(n型材料)の両方を備えた双極
型素子を用いる。熱電変換デバイスは、温度差により
物質内に生じる電位差を利用によって発電を行う
熱電発電に用いられる。p型材料またはn型材料のいずれか一方のみを備えた熱電変換デバイスでは、
高温側の端子から熱が逃げるため、発電効率が良くない。下図1は、n型材料とp型材料とを備えた双
極型熱電変換デバイスの一例を示した概略図である。双極型熱電変換デバイスであれば、n型材料とp
型材料とを直列につなぐことにより、効率的に発電できる。このように、安定したn型導電性を示すと
ともに電気伝導率が改善されたn型熱電変換材料を実現するに当たり、n型熱電変換材料は、ナノ材料
と、2つ以上のアリール環を有するクラウンエーテル誘導体と、金属塩とを含む組成を提供する。

❏ 特開2017-147311  薄膜熱電素子

【概要】

p型半導体薄膜およびn型半導体薄膜それぞれの本来有すべき性能を積層段階で損なわず適用が可能な
薄膜熱電素子にあっては、薄膜熱電素子は、一対のp型半導体薄膜14とn型半導体薄膜20とが、p
型半導体薄膜14及びn型半導体薄膜20のそれぞれの膜面内方向の両端である第1端部と第2端部の
うちの少なくともいずれか一方の端部側で電気的に接続され、一対のp型半導体薄膜14とn型半導体
薄膜20とが膜厚方向で積層され、p型半導体薄膜14とn型半導体薄膜20との境界面全面に、膜面
内方向に一様な材料から構成される境界膜20Aを備える下図2の薄膜熱電素子を提供する。


【符号の説明】

10…薄膜熱電素子 
12…基板 14、38、48、72…p型半導体薄膜 6、22…第1端部
8、24…第2端部 20、40、54、74…n型半導体薄膜 20A、38A、54A、74A
…境界膜
  26…内部電極  28…第1の外部電極  30…第2の外部電極  32…第1伝熱部材
34…第2伝熱部材

♞ 最新ソーラータイル技術 

❏ 特開2017-147257  光電変換素子とその製造方法、および太陽電池  

【概要】 

表面にナノオーダーの凹凸構造部を有する金属微細構造体、および平面的に配列された複数のナノオー
ダーの金属微粒子等では、金属表面に光が入射したときに金属表面の自由電子の粗密波(表面プラズモ
ン波)が入射光により生成されたエバネッセント波に共鳴して励起される。この現象は、表面プラズモ
ン共鳴と呼ばれる。プラズモン共鳴は、金属の種類と形状とサイズ、および周囲の物質等に応じた特定
の波長領域で生じる。また、このプラズモン共鳴によって、金属の表面およびその近傍では非常に強い
増強電場が発生する。プラズモン共鳴は、このような波長依存性あるいは増強電場を利用して、光セン
サ、光学フィルタ、および光電変換素子等の光学デバイスへの応用が期待されている。

現在、太陽光発電用に実用化されている光電変換素子は、結晶シリコンおよびアモルファスシリコンに
代表される無機半導体型であるが、これらの光電変換素子は製造に掛かるエネルギーおよびコストが莫
大である。そのため、より低エネルギーおよび低コストで製造できる有機材料を使用した光電変換素子
の研究開発が行われている。また、有機材料は材料自体が安価であり、また大気圧での製造方法が可能
なことから大面積化や連続プロセス化が容易であるため、低エネルギーおよび低コストで光電変換素子
を製造できると考えられている。

有機光電変換素子では、生成された励起子(エキシトン)のうち電荷分離に関与しているのは、電子供
与材料と電子受容材料とのp/n接合界面に到達した励起子のみである。励起子がその電荷分離界面ま
でに到達する距離(励起子拡散長)は、材料の化学構造や純度によって異なるものの50nm以下であ
ると考えられている。従って、励起子拡散長の約2倍の距離毎に電子供与材料と電子受容材料との接合
界面が周期的に存在すれば、電荷分離する励起子は増大し光電変換効率は向上すると考えられる。例え
ば、断面視櫛歯構造の電子供与層と断面視櫛歯構造の電子受容層とが互いに噛み合った受光層と、この
受光層を挟持する一対の電極とを備え、電子供与層と電子受容層の断面視櫛歯構造におけるパターン幅
(ストライプ幅)がいずれも5~100nmである光電変換素子を開示されている。かかる光電変換素
子では、電子供与層と電子受容層の断面視櫛歯構造におけるパターン幅(ストライプ幅)が励起子拡散
長の2倍以下であるため、電荷分離に寄与する励起子を増大させることができる(国際公開第2011
/018884号)。

このように、プラズモン共鳴を利用した光電変換素子においては、電場増強効果および光吸収量の増大
効果を効果的に得ることで、光吸収量が増大し、光電変換効率を向上できると考えられ、収量の増大効
果をより効果的に得ることが可能な光電変換素子にあたっては、光電変換素子1は、第1の電極110
と、透光性を有する第2の電極160と、第1の電極110および第2の電極160の間に形成され、
電子供与材料および電子受容材料からなる受光層140とを備える。第1の電極110は、平面視周期
的に形成された複数の凸部21を含む凹凸構造部20を有し、光照射によってプラズモン共鳴を生じる
金属凹凸電極であり、第2の電極160は、互いに導通された複数の細線161からなり、光照射によ
りプラズモン共鳴を生じる金属細線電極である。第1の電極110および第2の電極160はいずれも、
受光層140の光吸収領域内に少なくとも1つのプラズモン吸収ピーク波長を有する光電変換素子の構
造/構成を提供する(下図1)。


【符号の説明】

1  光電変換素子 20  凹凸構造部 21  凸部 21B  仮想底面 21S  側面 22  凹部
110  第1の電極(下部電極) 130  正孔輸送層 140  受光層 150  電子輸送層
160  第2の電極(上部電極) 161  細線 LB  積層体 W1  凸部の断面視最大幅
H1  凸部の高さ P1  凸部の周期間隔 W6  細線の線幅 H6  細線の高さ P6  細線の周期間
隔 D  電極間距離


【図面の簡単な説明】

【図1】本発明に係る一実施形態の光電変換素子の模式断面図
【図2A】第1の電極の模式断面図
【図2B】第1の電極の凸部の形状パターンの一例を示す模式斜視図。
【図3A】第2の電極の平面パターンの一例
【図3B】第2の電極の平面パターンの他の例
【図4A】第1の電極の製造工程図
【図4B】第1の電極の製造工程図
【図4C】第1の電極の製造工程図
【図4D】第1の電極の製造工程図
【図4E】第1の電極の製造工程図

  Aug. 25, 2017


【変換効率30%超時代】

♞ 最新ソーラータイル技術 :NRELなどが開発、パネル効率30%超が視野に

8月25日、米国の国立再生可能エネルギー研究所(NREL)らの研究グループは、シリコン系三接合タ
ンデム型太陽電池として世界最高の変換効率とする35.9%を達成したことを公表している。これは、
接合の数を増やせば、さらに変換効率を高めることも可能だが、Ⅲ-Ⅴ族化合物半導体のみを材料とする
太陽電池はコストが高いという課題があったが――今回開発した2接合セルでは、NRELが開発したガリウ
ムヒ素(GaAs)層をCSEMが開発した結晶シリコン膜の上に重ねた構成のタンデム型とし、32.8%の変換
率を確認したという。
3接合セルでは、ガリウム・インジウム・リン(GaInP)とGaAsを重ねたタンデ
ム型セルを
シリコンのセル上に積層した構成とし35.9%の変換効率を実現した。これは3接合の世界記録
を2ポイントほど
下回る変換効率――シリコンをベースとしたタンデム型セルで克服。


同研究グループの資産では、変換効率30%を前提とした場合、GaInPとシリコンの2接合太陽電池セルが
4.85ドル/W、GaAsとシリコンの太陽電池セルが7.15ドル/Wとの試算結果を示した。
しかし、量産が軌道
に乗れば変換効率が35%まで改善し、コストはGaInPベースで66セント/WGaAsベースで85セント/Wま
で下落する可能性があり、これは、米国での太陽光発電システムの価格の20~40%を太陽光パネルのコス
トが占める。太陽電池セルの変換効率が35%まで向上すれば、産業用太陽光発電システムのコストを最大
45セント/W低減できると予測している。さすがデジタル革命、「変換効率30%超時代」が視野に入
ってきた、これは実に面白い。

 

  ● 今夜の映画

【沈黙との対話:信とは沈黙なり】

映画『沈黙-サイレンスー』をDVD 鑑賞する。体調や精神的な落ち込みもあり、鑑賞を見合わせていた
が、作業休めの気分天転換もありサンミュージックで1週間レンタル。わたしの遺伝子に流れる記憶の発

露により慟哭に支配されるのではないかとの不安であったが、鑑賞を終え以外と冷静に見終えたのはこの
作品の力によるものだと腑に落とす。ところで、『タクシー・ドライバー』などで知られるマーティン・
スコセッシ監督が、遠藤周作の名著『沈黙』と出会ってから28年の月日を経て、その実写映画が完成に
し、今、なぜスコセッシ監督が『沈黙』に魅了され、なぜ映画化にこだわり続けたのかを――スコセッ
シ監督は小説について、遠藤が本で提示したテーマは、私がとても若い
時からずっと考えていたもの――
だと、コメントしている。
『沈黙』は、日本に隠れキリシタンが存在していた時代が舞台の歴史小説。棄
教した師の真相を追い求
め、日本に渡った若き宣教師・ロドリゴ(映画ではアンドリュー・ガーフィール
ドが演じている)の姿
を描いたストーリーは絶賛を受け、一部の評論家からは20世紀最高峰の小説の一
つと称されている。

1966年に出版された同作は、同年に谷崎潤一郎賞を受賞。1969年に英訳されてからは、世界各地にはさ
ざまな言語で翻訳されている。
原作は、1953年から1955年にかけて文壇に登場「第三の新人」と呼ばれる
作家のひとり――「悪い仲間」で第29回芥川賞を受賞した安岡章太郎を皮切りに、吉行淳之介(「驟雨」
/第31回)、遠藤周作(「白い人」/第33回)と軒並み芥川賞受賞作家ともなった日常的な人間性を描く私
小説への回帰を特徴とする。
 遠藤の代表作のひとつの『海と毒薬』(1958)では、太平洋戦争中に捕虜と
なった米兵が臨床実験の被験者として使用されていた実話をもとに「日本人とはいかなる人間か」を追求
する。

 (変わったことはないのや。どや、俺の心はこんなに平気やし、ながい間、求めてきたあの良心の
 痛みも罪の呵責も一向に起こってこやへん。一つの命を奪ったという恐怖さえ感じられん。なぜや。
 なぜ俺の心はこんなに無感動なんや
 
                                                   遠藤周作 『海と毒薬』 

ユダヤ人を収容所へ移送したナチスドイツの高官、アドルフ・アイヒマンの裁判を傍聴したハンナ・アー
レントは、「悪の凡庸さ」という言葉を用いて、人類の普遍的価値に対する犯罪は、怪物的な巨悪によっ
てではなく、共感力・批判的思考力の欠如した平凡な人間によって行われるのだと指摘している。この作
品もまた、戦争末期の退廃的な空気のなか、周りに流される日本人の危うさ、罪の意識の不在を浮き彫り
にする。
熱心なキリスト教徒であった遠藤は、日本人に対して「無意識的な悪」「ありふれた、透明な悪」
の存在を反質する。
戦前の日本において主流だった私小説、短編小説への回帰を狙った「第三の新人」の
ひとりだが、晩年は『ユーモア小説集』を執筆、またTVコマーシャルにも出演する一方、彼は
、日本人に
とキリスト教の意味を問い続けた作家であった。現在、作品が翻訳されている国は20ヶ国以上にも及び、
刊行された作品は百冊を超える。
 

❏ マーティン・スコセッシによるハリウッド映画化 

しかし、映画化は難航を極める、2016年11月、リーアム・ニーソン、アンドリュー・ガーフィールドらの
豪華主演陣に加え、浅野忠信や窪塚洋介という日本人俳優も起用した注目のキャストで米国で公開される
ことも大きな話題となる。
 監督のスコセッシは、一時神父の道を目指していたが、この小説で映画化を
夢見る。資金不足やキャストの変更といった度重なる困難に遭遇しながらようやく悲願を達成しており、
スコセッシ監督は『沈黙』に魅せられる。
 ところで、遠藤周作は、生まれながらにしてクリスチャンではな
く、両親の離婚から神戸に戻り来た幼少時に、伯母の影響でカトリックの教会へ通うようになる。そして
中学生の時に洗礼を受けさせられる。
遠藤はこの時のことを「後々、自分にどういうものを背負わせるこ
とになったかもほとんど考えなかったと述べている。

 だがその後十年たって、私は初めて自分が伯母や母から着せられたこの洋服を意識した。洋服は私の
 体に一向に合っていなかった。ある部分はダブダブであり、ある部分はチンチクリンだった。そして
 それを知ってから、私はこの洋服を脱ごうと幾度も思った。
 

                                                  遠藤周作  『合わない洋服』

このように、日本人でありながらキリスト教徒である矛盾に気付いた遠藤はこの合わない洋服を脱ごうと
するが、その後、キリスト教は自分を少年時代から青年時代にかけて支えた一つの柱で
あるとも考え、こ
の洋服を自分に合わせる和服にしようと決意する。
教えをそのまま受け入れるのではなく、日本人として
キリスト教を見つめ直す――
その姿勢は聖書学研究に従事していた田川建三などのキリスト教信者、聖職
者たちか
ら批判を受ける。それでも遠藤は、キリスト教をモチーフとした作品を通じて生涯努力したとさ
れる。


❏ 「神の沈黙」という永遠の主題に挑んだ『沈黙』 

原作は、江戸時代初期のキリシタン弾圧に遭ったポルトガル人司祭、ロドリゴが背教の淵に立たされる姿
を描いたもので、キリスト教弾圧にまつわる日本史の一場面をもとに、神の存在や西洋と日
本の思想的な
違いを追求したこの作品は、発表当時のカトリック教会の反響をもたらす。
鹿児島県と長崎県では禁書扱
になるほどの衝撃を与える。
イエスズ会において最高の地位にいた教父、フェレイラが布教のために訪
れた日本で過酷な拷問を受け、棄教
したという知らせが届いたローマ。弟子である若き宣教師、ロドリゴ
は真相を探ろうと日本へ赴くも、気弱な日本
人、キチジローの密告によって奉行所に囚われる。やがてロ
ドリゴは師と再会を果たすものの、彼が夜な夜な牢で耳にするいびきのような声が拷問を受ける信者
のう
めき声であったこと、ロドリゴ自身が棄教しない限り彼らが許されないことを告げられ、苦悩します。自
分の
信仰を守るのか、神を裏切って罪の無い人々を助けるのか……ジレンマを突きつけられるロドリゴは、
ある決断――
キリストの教えを誇りに思っていたロドリゴが、神は自分が苦しむ姿を見ながら、何故沈黙
を続けるのか
と呼びかけても応えない神を疑い始め、神は本当にいるのか。もし神がいなければ、幾つも
幾つも海を横
切り、この小さな不毛の島に一粒の種を持ち運んできた自分の半生は滑稽だと。このように
日本史のなかでキリスト教徒が経験したであろう様々な受難の場面にまつわる空想をかきたて、執筆にす
る。 

『沈黙』が海外で高い評価を受けるようになった理由として、グレアム・グリーン――「第三の男」を代
表作に持つイギリスの小説家、グレアム・グリーンは、英訳された『沈黙』を読み、その年度のベスト3
の1つに挙げ、第一次世界大戦後にイギリス国教会からカトリックへと改宗した経緯を持ち合わせるグリ
ーンは、『沈黙』をいち早く認め、遠藤のこの作品を絶賛し、20世紀のキリスト教文学で最も重要な作家
であると断言する。
遠藤『沈黙』の執筆にあたり、グレアム・グリーンの作品『権力と栄光』から大きな
影響を受ける。また、
イギリス人作家、デイヴィット・ミッチェルも『沈黙』について非常に全キリスト
教的な見方をしている所ありとと高く評価、また
、『沈黙』が2009年の英ガーディアン紙が選ぶ「死ぬま
でに読むべき必読小説百冊リスト」に選出されている。
 

『沈黙』が評価される理由

信仰における負の部分にあえてテーマにしたこの作品は、何故、言語も時間も関係なく高く評価され続け
ているののか?それは、言語や時代を問わずキリスト教を信じる人たちの心に響いたとされる。

 聖職者たちはこの冒涜の行為を烈しく責めるだろうが、自分は彼等を裏切ってもあの人を決して裏切
 ってはいない。〔中略〕私はこの国で今でも最後の切支丹司祭なのだ。そしてあの人は沈黙していた
 のではなかった。たとえあの人は沈黙していたとしても、私の今日までの人生があの人について語っ
 ていた。
                                    遠藤周作  
『沈黙』

『沈黙』のなかで、キリストは絶対的な存在ではなく、無力な存在として描かれるが、神は沈黙していた
のではなく、無力さ故に沈黙せざるを得なかった。遠藤の描くキリストは無力ではあった
が、悩める人物
たちと苦しみを分かち合うその表現は批判はされたが、救
われたと感じる者もいた。 ロドリゴを売り渡す
も、許しを乞う卑しい存在として描かれるキチジロー(新約聖書のユダ役)は、遠藤自身であると述べて
いるように、『沈黙』では洗礼を受けながらも信仰について疑問を持ち、自らとキリスト教の関係につい
て考え続けた遠藤周作の作品でもあるが、映画鑑賞して、信仰の深さ、宗門教化の意義と力、それを利用
あるいは敵対する共同体/国家権力との有り様と棄教・転向・背信
への葛藤と苦悩の描写がこの映画では
完璧に仕上がっている(あるいは「パターン化」「通俗化」)ため予期された「慟哭」は薄められことと
なった。このことは、奇しくも吉本隆明は「現代文学の条件 5・遠藤周作の通俗性」(吉本隆明の183
講演、ほぼ日刊イトイ新聞)と通底するものと腑に落とす。


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