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輪違屋糸里 浅田次郎新選組三部作

2016-09-18 03:03:26 | BOOK/COMICS
幕末ものと戦国モノは好きだ。
特に幕末モノは結構いろんな本を読んだ。
幕末は坂本龍馬を中心にしたものと新選組を中心にしたものでは全く書き方が違う。
坂本龍馬を軸に進められる話はいかに幕府が弱体化してたか、長州や薩摩がどういう動きをしていたかが描かれてる。
有名なのは司馬遼太郎の「竜馬がゆく」だね。
福山雅治主演で香川照之の怪演が光った大河ドラマの「龍馬伝」も、武田鉄矢原作小山ゆう画の「おーい竜馬」もそれほど変わりはない。

新選組を軸に話が進められる場合は、壬生浪と呼ばれた彼らが、いかに幕末という時代を生きたかが描かれる。
どちらかというと新選組は時代に殉じた悲劇のヒーローたちのように描かれる方が多い。
BLファン垂涎の「薄桜記」のようにイケメンで描かれて、終焉を迎えた幕府と共に花のように散ってしまうって感じ。

浅田次郎は新選組三部作を書かれている。
一つは「壬生義士伝」。吉村という無名の南部藩脱藩利浪人を中心に描かれ、「一刀斎夢録」では斉藤一の目線で描かれる。
このどちらも新選組ファンにはたまらない。かなりの名作だと思う。読んで損はない。

そしてずっと延び延びになっていた三部作の最後「輪違屋糸里」をようやく今回読んだ。

土方歳三の目線と、京都島原の太夫や新選組に関わる女たちの目線で新選組と幕末が描かれる。
近藤勇を中心とする、土方、沖田、山南、井上、原田、藤堂、永倉、斎藤の試衛館一派と、芹沢鴨を中心とする、新見、平山、平間、野口の水戸一派の対立。
この芹沢一派の粛清、芹沢鴨の暗殺までを描いているのだが、文章に壬生義士伝や一刀斎夢録のような迫力がない。
長い。とにかく長い。だらだらと言ったほうがいいか。
女目線で描くのはいいが、女言葉で綴られる文体がどうもしっくりこない。
読んでてこれは本当の浅田次郎が書いたのか?って思ってしまった。それくらい物語が入ってこないのよ。

土方歳三は新選組で唯一武士に憧れ武士になりたくて武士を貫き武士たらんと死んだ男。土方歳三に比べたら、近藤勇なんておだてられ出世してそこで満足してしまっただけの男だ。その土方が、弁論にかぶれていく近藤勇をそれでも立て、浪人集団の新選組を精鋭武士集団に作り上げる苦悩も描かれてるんだが、なんかダメ。読んでてこれほどつまらない浅田次郎の本は初めてだ。
浅田次郎の本は、太平洋戦争を描いた「シェエラザード・上下」「日輪の遺産」、訳ありの人が集まる「プリズンホテル・春夏秋冬」、「地下鉄に乗って」「珍妃の館」など現代ものでも時代物でも戦争ものでも長編でも短編でも、息もつかせず読ませてしまう名作をいっぱい書いてる。
しかし、初めて「うーん、これはつまらん」と思う本に出会ってしまったようだ。

俺の体調が不完全だったからかもしれないが、これなら司馬遼太郎の「燃えよ剣・上下」の方がよっぽど面白い。
司馬遼太郎お得意の伝記風の描き方で、武州多摩から京都守護職会津藩お抱えの浪士隊として京都に上り、池田屋騒動や伏見鳥羽の戦い、そして函館での死迄丁寧に描いている。この中でも芹沢鴨粛清のことは描かれてるが、30ページくらいだ。「輪違屋糸里」では上下巻で丁寧に描かれてるが、ここってそんなに重要?って思ってしまう。
そりゃ、土方が描く新選組の理想像には、傍若無人な芹沢鴨や、同じ局長格の新見錦などはいなくなってくれた方がいいだろう。それはわかるんだが、色街の女、庄屋の女、商店の女などの目線でだらだらと書かれてもねぇ。
どちらかと言えばそれより沖田総司はどれほど強かったとか、藤堂平八はなぜ伊藤甲子太郎に付いたのかとか、山南敬助はなぜ逃亡したのかとか、原田左之助の槍さばきとか書かれた方が面白いんだけどな。壬生義士伝や一刀斎夢録ではここら辺もうまく挿入されてるのに、今回の輪違屋ではなんか全然。
唯一新見錦粛清後、芹沢鴨襲撃の夜に永倉新八と斉藤一が蔵で向き合い、一触即発になるシーンのみ痛快だったが、それ以外は読んでてしんどい内容。
まぁ、描きたかったのは剣豪ものやチャンバラではなく、江戸の終わりという時代に翻弄されていくのを女の目線から書きたかったんだろうけどね。

ちょっと後味が悪かったので、池波正太郎の「近藤勇白書」も読んでみる。
近藤勇目線のこの本と、土方歳三目線の燃えよ剣、この二冊で新選組の歴史は全てわかるなぁ。

そうか、俺が新選組の歴史を知ってるから、輪違屋糸里は面白くなかったのかも。
新見や芹沢鴨がいつ殺されたのかとか、すでに知ってることだからもどかしいのかも。
ってことは新選組初心者にはこの本は面白いのかもしれない。そういうことにしておこう。
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