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谷口ジローさん死去 孤独のグルメ

2017-02-12 02:44:26 | BOOK/COMICS
谷口ジローさんがお亡くなりになられた。
享年69歳。今の時代なら早逝のほうだろう。

ネットニュースを見ると谷口ジローさんの紹介文やヘッドラインに「孤独のグルメ」と書かれてるのが多い。
確かにこの漫画は有名で代表作のようにあげられるけどさ。だけど、これは実写ドラマ化された後の話だ。ドラマが始まるまでは知る人ぞ知る漫画だった。実際1997年に発行された単行本は初版3刷で絶盤になっているしね。(2000年に文庫本版が発売された)


いろいろな食べ歩きの漫画はいっぱいあるが、この孤独のグルメは異色だ。

この漫画は毎回、主人公・井之頭五郎がひたすら「今日の俺は何を食べたいんだ」と、お店と食べたいものを探すとこから始まる。
主人公は酒が飲めない設定。だから基本的にご飯とおかずを食べられる店を探す。
輸入雑貨商だから東京だけでなく、関東近郊や各地へ行った時もそこで探す。

古びた定食屋から、中華料理店、純喫茶、グリル・・・。居酒屋でもおかずをつまみながらご飯を食べる。
他のグルメ漫画のように薀蓄をひけらかさない、言わない。
食材も有機野菜がどうだとか、化学調味料はダメだとか、出汁の取り方がどうだとか、環境問題がどうだとか言わない。
レシピや作り方を解説したりもしないし、地方の名物や名産、店の紹介をすることもない。(原作漫画では店名など一切出てなかったが、実写ドラマでは実際に営業してるお店を使って撮影したからか、お店の紹介もしている。そのお店はドラマファンが聖地巡礼のように訪れ、流行ってるらしい)

主人公はただひたすら、俺は今何を食いたいのか、この店にするか、何を頼もうか、どうやって食べるか、ソースをかけるか醤油をかけるか、しまったあれもうまそうだな、追加で頼もうか、腹はまだ大丈夫か、うーんうまい。ちょっと頼みすぎちゃったかな、おなかいっぱいだ、この店は当たり(ハズレの回もある)だったな。
頭の中でいろいろ考えながら、ひたすらバクバクパクパク食べる。

この漫画はグルメ漫画ではなく、食生活ドキュメント漫画だ。
この主人公の店選び、食いっぷり、頭の中であれこれ考え自問自答してる姿、それらを谷口ジローさんは見事に描いている。
見開きも交換音もなく、淡々と。

これはすごいことだ。
普通なら料理やメインをバーンと描きたいとこだし、美味しさに感動する姿も大げさに描くもの。
その方が読者にわかりやすいし、「食べてみてぇ〜なぁ」とか「美味しそうだなぁ」と思わせやすい。
谷口ジローさんは、あえて淡々と描くことで主人公の心情を浮き彫りにしている。

漫画原作を実写ドラマにしたものにはブーイングなものが多いが、この孤独のグルメ、松重豊さん主演の実写化ドラマは原作と同等だ。
多分このドラマが始まるまで、この原作本を読んだことがない人は多かっただろう。その人たちからしたら、「松重さん美味しそうに食うなぁ」とか、「この心境わかるわぁ」と思っただろう。
読んだことある人は「原作のテイストそのままで良いぞ」と思っただろう。

松重さんの演技も素晴らしいし、ナレーション(松重本人)もカメラワークもいい。
しかしそれもすべて原作、それも漫画があってこそだ。言うなれば谷口さんの漫画が絵コンテみたいなものだ。

それに久住昌之さんの原作だけでは、あの実写ドラマのクオリティにはならんかっただろう。
「花のズボラ飯」という主婦版・孤独のグルメや、以前このブログでも紹介したことのある、ハードボイルド風ギャグ・孤独のグルメ「食の軍師」(泉昌之名義)なども、孤独のグルメ越えはできていない。


久住さんの原作を活かせるのは、谷口ジローさんの絵があってこそなのだ。(久住さんには申し訳ないが本当にそう思う)

実写ドラマが人気出て、第5シーズンまで作られ、博多編、宮城編、正月SPなども作られた。
ドラマの好調に合わせて、廃刊になった単行本も2008年には復活版が出たし、文庫本版も売れた。そして続編になる単行本2も2015年に発売された。
この続編も、もちろん谷口ジローさんの漫画だ。

しかしこれが、残念ながら最後だ。
もう主人公・井之頭五郎が何を食うか悩む姿も、パクパク食べる姿も、満腹で満足してる姿も見れない。
違う漫画家が今後描くこともあるだろうが、それは見たくないかな。あのテイスト、あのクオリティでは描けないだろうからさ。田中圭一さんなら描けるかもしれないけどね。(田中圭一さんは手塚治虫さんをはじめいろんな漫画家の絵柄・テイストそのままハイクォリティで描ける人)
ドラマなら松重豊さんがご健在の限りは観れるから、そちらだけでいいや。

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