今年も香港に鳥インフルエンザ(H5N1型)の季節がやって参りました。
香港にとって、これは一種の宿命であります。何といっても後背地が「野味」(ゲテモノ料理)の伝統を誇る広東省。中国肺炎(SARS)をはじめ奇病連発の土地柄です。しかも同省当局の隠蔽体質に加えて、香港は中国本土の「植民地」といった政治的に弱い立場。
そもそも水や食料の主要な供給源であるため縁を切る訳にはいきませんし、香港人の大半は広東省系です。ビジネスやショッピング、レジャー以外にも帰省や墓参などで人員往来が頻繁。あれやこれやで、香港は同省から伝播してくる様々な厄災から逃れることができません。
今回の鳥フル騒動(に、これからなるかも)の発端は、これです。
●鳥インフル:中国広東省で疑い例の女性死亡(毎日jp 2008/02/25/20:26)
http://mainichi.jp/select/world/asia/news/20080226k0000m030075000c.html
【上海・大谷麻由美】中国広東省衛生庁は25日、鳥インフルエンザ(H5N1型)に感染した疑いのある同省汕尾市海豊県の女性(44)が同日午前に死亡したと発表した。女性は四川省からの出稼ぎ労働者。今月16日に発病する前、病気のニワトリと接触があった。
中国でH5N1型の感染による死亡は20人目。今年に入って湖南省、広西チワン族自治区など中国南部で同型による感染死が続いている。
記事にある通り、香港からみて広東省のその向こうにある湖南省(1月24日)や広西チワン族自治区(2月20日)で鳥フル感染死の報告が相次いでいました。香港内でも鳥フルに感染した野鳥などが発見されるなどして当局が警戒を強めていた矢先に、今度は隣の広東省、しかも香港から遠くない汕尾市でドカンです。ちなみにこの汕尾市といえば知る人ぞ知る、中国最強の武装農民戦闘集団(東洲地区)の名産地。
香港にとってはもはや至近弾といえる目と鼻の先です。という訳で香港市民はこのニュースに衝撃を受けている……かといえば、さにあらず。もう毎年のことで慣れているのです(笑)。目下のところ中国肺炎当時のような切迫した事態でもありません。私の仕事仲間も、やはり香港人である配偶者の姉も「なんか嫌だなー」という気分を持ちつつも、特に動揺してはいませんでした。
ただし香港市民の感想とは裏腹に、全般を俯瞰してみると準ガクブル状態ともいえる危うさ,脆さのようなものをみてとることができます。今回死亡した女性を取り巻く人々や地元に対する検査や隔離態勢などが、
「さあどうぞ蔓延して下さい拡散して下さい」
と言わんばかりのザル同然であるうえ、香港当局も「宗主国」への遠慮なのか初動から立ち後れたばかりか講じた対策が大甘。それでいて香港市民にも要検査対象の病人がすでに出ているのです。
――――
今回鳥フルで死亡した女性は養鶏場を営んでいた訳ではなく、夫が汕尾市海豊県でレンガ工場を経営しており、その裏の土地で自家用の鶏を飼っていました。工場の職員はいずれも女性(四川省出身)と血縁・地縁関係にある者ばかり約20名。ごく家族的な雰囲気の工場だったものと想像されます。
そしてある日、家で飼っていた鶏のうち1羽が病死。いかに農村とはいえ鳥フルのことは知っていたようですが、いずれも農民出身であることから「もったいない」という気持ちが先に立ち、その病死鶏を料理してみんなで平らげてしまったそうです。
女性にはほどなく肺炎のような症状が現れました(2月16日)。近くの診療所で医者に診てもらったものの病状が回復せず街の病院へ移ったところ、「ひょっとしてこれ鳥フル?」と医師が疑惑を抱いてより大きな病院に転院。入院し検査を受けて鳥フルに感染していると判明したのが24日で、その翌日に女性は死亡しました。
広東省当局は中央の衛生部や「植民地」である香港・マカオなどに事態を通知する一方で、女性の家族や工場職員を隔離して感染しているかどうかの検査にかかり、現在結果待ちの段階。一方で自宅と工場を中心とする半径3km以内の家禽類を全て処分し、消毒などの措置が行われました。
広東省からの通報に接した香港当局はそのニュースを公開するとともに、感染地を中心とする半径13km以内からの家禽類及び関連食品などの輸入を21日間停止する措置をとりました。
ところが。感染地で講じられた措置も香港側の対応も,実は穴だらけだったのです。
――――
まずは感染地である汕尾市海豊県ですが、感染地の近所の農民によるとまず地元の役場から「消毒しろ」との指示があったためとりあえず手持ちの石灰をあちこちに散布。その後ようやく届いた鳥フル用消毒薬を渡されて、衛生部門の担当者ではなく自分たちの手で消毒作業を行ったそうです。省当局から担当者が現地入りしているそうですが、地元当局はグダグダのようです。
その証拠に、隔離措置が徹底していません。……というより機能していません。「病死した鶏をみんなで食べたら家内が肺炎になって……」という女性が発病する経緯は、香港紙『明報』の記者が現地入りして、当の女性の夫からとったコメントなのです。
この記者の報道によると、封鎖されている筈の地域に何のチェックもないまますんなりと入ることができ、「消毒は自分たちでやった」という封鎖地域内の農民から話を聞くことに成功。さらに何と隔離されている筈の夫ほか家族や工場職員たちへのインタビューもしっかりと行っているのです。「隔離」とは名ばかりで実態は「村から出るな」程度の縛りしかなく、「被隔離者」たちは退屈しのぎに村外に通じる唯一の道路まで散歩に出てきたりしていたとのこと。
また、半径3km以内の家禽類は一切処分されたとはいえ、地元の市場では鶏などが普段通りに販売されて普通に買われており、売り上げも1割前後減少した程度で鳥フルの打撃は大きくないそうです。近所で死者が出たことはみんな知っているそうですが、現地は意外にものんびりとした雰囲気。
とりあえず、隔離されている筈の人たちが村内を自由に行動できるうえ、香港紙の記者が封鎖地区へ自在に出入りできるというのは如何なものでしょうか。『明報』に一歩遅れて、『東方日報』や『太陽報』の記者も現地入りしています。
――――
そして香港。マスコミは当局の初動の鈍さをまず叩いています。入院している女性が鳥フルに感染している疑いが強いという通知を広東省衛生庁から受け、それを発表するまでに5時間を要し、同じタイミングで通報に接したマカオより発表が3時間も遅れました。
香港社会は変質しつつあるとはいえ「やったもん勝ち」的価値観がいまなお健在ですから何事もスピードにこだわります。メディアもスクープ記事を出すときには「全球最快」(世界最速)などという大袈裟な見出しを躍らせたりしますから、「発表までに5時間」「マカオより3時間遅れ」というのはマスコミにとっては重大な問題なのです。もちろん、危機管理という点に照らしても香港当局の仕事ぶりはほめられたものではありません。
そして、香港当局が続いて発表した対策がこれまた問題となりました。上述した通り「感染地を中心とする半径13km以内からの家禽類及び関連食品などの輸入を21日間停止」というものです。香港に対する中国本土からの食品輸出は自由ではなく、品質管理の観点から指定業者のみに取引が許されているのですが、その指定業者が「半径13km以内」にはひとつもないのです。要するに対策を講じたといっても、何もしていないのと一緒。
「半径13km」というのも批判の対象となりました。国連の関連組織が定めたガイドラインでは感染地を中心に半径15km以内を管理下に置くべき規制地区と定めているのですが、「半径13km」では指定業者がいないうえ、このガイドラインの条件をも満たさない対応ということになります(ガイドラインに強制力はありませんけど)。これについて担当部門である食品衛生局の周一嶽・局長は、
●死亡した女性は潜伏期間中、感染地から離れていなかった。
●目下のところヒトからヒトへの伝染が確認されていない。
●養鶏業者ではなく、自家用として少数の鶏を飼っていたため、感染拡大の可能性が低い。
と説明していますが、なぜ「半径13km」なのかという問いへの回答にはなっていませんし、「ヒトからヒト感染」については死亡した女性の近親者たちが感染しているかどうかすら検査結果が出ていない段階です。このフニャフニャした姿勢にマスコミや専門家たちから非難が集中しています。
――――
しかし、最も叩かれているのはやはり「何の規制にもなっていない輸入規制」です。
「万一を考えて広東省全域からの輸入を一時停止すべきだ」
というのが専門家の主張であり、実際に一昨年までは、広東省で鳥フル感染者が出ると香港当局もその通りの措置をとってきました。
ところが昨年はそれが「感染地を中心とする半径24.5kmの範囲からの家禽類及び卵の21日間輸入停止」へと規制が緩み、今回は「13km」へと規制範囲も縮小。マスコミからは、
「政治的色彩の濃い措置ではないか」
と疑問の声があがっています。そこは悲しいかな中華人民共和国の「植民地」。「広東省全域からの輸入停止」だと広東省当局から反発が出て、政治的に弱い立場である香港が窮することを恐れているのではないか、というものです。
……いや、政治的な力関係だけならともかく、水や電気をはじめ食料から経済(観光客及び対中投資)まで一切を握られている香港は、広東省の機嫌を損ねるとどういう報復をされるかわかりません。
実際に、輸入した養殖魚から発ガン性物質マラカイトグリーンが検出されて広東省全域からの淡水魚輸入停止を香港当局が実施したのに対し、広東省当局が「香港への輸出禁止」という逆ギレに出たという前例があります。
●既視感?香港の「有毒淡水魚」規制に広東省が逆ギレ。・上(2006/11/29)
●既視感?香港の「有毒淡水魚」規制に広東省が逆ギレ。・下(2006/11/29)
その一方で、香港市民から感染者が出る可能性が現在進行形です。……というのも、現時点で原因不明の肺炎患者6名(男5名女1名・2歳〜95歳)が当局によって確認されています。その全員が発病前の1週間以内に今回の感染地に立ち寄っているのです。この6名に対しては現在検査が行われており、診断結果待ちの状況です。
――――
……という訳で、感染地を抱える広東省も,広東省に身を委ねるしかない香港も、有効な鳥フル対策を実施していないというのが現状。
今回の死亡例が散発安打で終わる可能性もありますが、実務において緊張感があまりに欠如しているため、広東省内の他の地域からも複数の火の手が上がれば香港は一気にレッドゾーン突入となってしまいます。中国に雪害をもたらした例年にない寒波も鳥フルの流行には追い風となりかねません。
観光業界ではすでに「実害」が出始めているそうです。香港から広東省の汕頭・潮州方面への人気ツアーで、観光客が食事に出された家禽類の料理に手を出さず、
「怖くて食べられたもんじゃない。他のメニューに換えてくれ」
とツアコンに要求。
「そんなこと無理です」
「じゃあカネ返せ」
「もっと無理」
といった悶着が起きているとか。まあ現時点では大きな影響は出ていないようですけど。
ともあれ香港には万単位の在留邦人がいますし、広東省に駐在したり省内を飛び回ったりしている日本人ビジネスマンも相当な数になるでしょう。その意味では日本も高見の見物という訳にはいきません。
私の周囲の香港人たちはのんびり構えているようですが、現実にはガクガクブルブルの一歩手前かも知れない状況なのではないか、と愚考する次第です。何事も用心が肝腎ですから。……続報待ちです。
――――
●『明報』(2008/02/26)
http://hk.news.yahoo.com/080225/12/2pfrj.html
http://hk.news.yahoo.com/080225/12/2pfrk.html
http://hk.news.yahoo.com/080225/12/2pfrl.html
http://hk.news.yahoo.com/080225/12/2pfrm.html
●「中時電子報」(2008/02/26)
http://news.chinatimes.com/2007Cti/2007Cti-News/2007Cti-News-Content/0,4521,130505+132008022601655,00.html
●「明報即時新聞」(2008/02/26/20:54)
http://www.mpinews.com/htm/INews/20080226/gb22054c.htm
●『明報』(2008/02/27)
http://hk.news.yahoo.com/080226/12/2pih6.html
http://hk.news.yahoo.com/080226/12/2pih7.html
●『蘋果日報』(2008/02/27)
http://www1.appledaily.atnext.com
●『星島日報』(2008/02/27)
http://www.singtao.com/yesterday/loc/0227ao08.html
●『東方日報』(2008/02/27)
http://orientaldaily.on.cc/new/new_a19cnt.html?pubdate=20080227
●『太陽報』(2008/02/27)
http://the-sun.on.cc/channels/news/20080227/20080227025825_0000.html
http://the-sun.on.cc/channels/news/20080227/20080227025524_0000.html
●『香港文匯報』(2008/02/27)
http://paper.wenweipo.com/2008/02/27/CH0802270031.htm
http://paper.wenweipo.com/2008/02/27/CH0802270032.htm
インフルエンザの感染源として、以下のようなルートで新種のウィルスが出回るのではないか、という説を聞いたことがあります。
「鳥」→「豚」→「人」
鳥類オンリーのウィルスが感染した豚の体内で人間に感染可能な性質をもったウィルスに変異し、豚から人間に感染する。(この場合、懸かるのは人だけ)
鳥類から人間への直接感染ですが、こんなルートの可能性も取り沙汰されています。
「鳥1」→「豚」→「鳥2」→「人」
鳥類オンリーのウィルスが感染した豚の体内で人間に感染可能なタイプ(鳥に感染する性質を残したまま)に変異し、そのウィルスが鳥類にフィードバックし、鳥類から人間感染する。(この場合、人と鳥2が懸かる)
豚と鶏と人間が一緒くたになって居住しているような地域は無茶苦茶危険ですね。
すごいですね。そのパワーには敬服です。
なんか、某地域で云われるトップの『徳』が衰えたことを示す印しが出揃ってきてるような。
起て全国の労働者?
KTKRな事態をWKTKして待ちつつ、その時はKWSK(この略語もいい加減意味不明ながらもまだ増えてるようですなあ)
趣旨を要約すると
・中国は悪いことしていません。
この一点張り。
小生の拙い中国語でも、こいつらの茶番振りは目に余りました。
会見をみて気がついたこと。
・会見した3名のうち、魏伝忠のネームプレートのみ、印字されていた。
ほかの二名については、手書き。直前までバタバタしていた証拠だろうな。
・NHKの記者一名ともう一名(会社不明)の名前と顔を大写しにしていた。
『言い過ぎたら怖いからね』という脅しかな(((((・。・))))
・『調査は終わったのか』という質問に対して、『これで終わりであるべきだ』
その他、『??是』をしつこく使っていた。
http://www.022net.com/2008/2-28/43442838233880.html
の記事は、おいしい発言を随分端折っている。
魏のおっさん曰く
『日本向けの輸出食品は、他国と比べて最高水準で検査している。合格率は99.?%(小数点以下は失念)だ。
それに比べて日本からの輸入食品の合格率はずっと低い。(80+数%と言っていた)』
逆切れしてねえか?
会見内容は、意訳され、曲解されて、捏造報道されること、間違いなし!!
ふざけんなっつうの!
日本人、舐められているぞ!
またなにかあればよろしくお願い致します。
に関してはチャイナネットに日本語版が出てるみたいです。
品質検査総局、「ギョーザ中毒事件」は人為的犯罪事件(動画付き)
ttp://japanese.china.org.cn/jp/txt/2008-02/28/content_11030906.htm
発信時間: 2008-02-28 | チャイナネット
国務院新聞弁公室が28日開いた記者会見で、国家品質監督検査検疫総局(品質検査総局)の魏伝忠副局長、公安部刑事捜査局の余新民副局長は、日本の中国製冷凍餃子による中毒事件関連調査の進展状況を発表し、記者の質問に答えた。
国家品質検査総局の魏伝忠副局長は次のように述べた。
日本で発生した中国製冷凍餃子による「ギョーザ中毒事件」に対して、中国政府は高度に重視し、日本の消費者の健康に大きな関心を払い、中毒にかかった人たちの早期回復を望んでいる。同時に中国は迅速な全面調査を行った。調査の情況は次の通り。
国家品質検査総局は1月30日、在日本大使館の報告を受けた後、これを高度に重視し、直ちに一連の措置をとった。
(1)厚生省など日本の関係部門と連絡を取り、具体的な事件発生状況を尋ねた。
(2)直ちに調査グループを設置し、保存されていた、問題が発生したものと同じ生産日のギョーザのサンプルやその前後の生産日の製品、在庫品に対して抜き取り検査を行った。その結果、いずれにもメタミドホスは検出されなかった。
(3)天洋食品工場に生産や販売の停止を命じ、日本に輸出した製品や日本へ輸送中の製品に対してリコールを命じた。
(4)天洋食品工場の原材料の仕入れや生産加工、包装、貯蔵、輸送、輸出など、一連の製造過程に対して厳密な調査を行い、同企業の監視カメラや同企業の関連生産記録も調べた。
(5)国家質検総局と商務部の作業グループは2月3日、日本に赴き、中国側の調査の進展を知らせ、日本側の調査の展開に積極的に協力した。作業グループが日本から持ち帰った、生産期日が異なる10袋のギョーザのサンプルの検査と研究の結果、全てからメタミドホスと殺虫剤のパラチオンは検出されなかった。
(6)天洋食品は1995年に日本の農林水産省に登録され、2001年3月と2005年6月に、農林水産省の現場再調査を通過した。10年以上にわたって、同食品の日本向け輸出製品の質は安定している。
(7)国家質検総局と河北省政府は2月4日、日本政府が派遣した調査団が天洋食品工場で調査するために、受け入れと手配を行った。調査団の作業にはできる限りの資料を提供し、調査すべき場所と施設をできる限り手配した。調査団は企業に対して全面的な調査を行なった後、作業場は清潔で、管理も整備されており、異常は一切見つからなかったと話した。
(8)2月12日、関係者とともに私は再び河北省に赴き、天洋食品工場の各製造過程の真剣な調査を行なった。私たちの感じでは、日本政府調査団の見方と完全に一致しており、この企業は規範的に管理しており、関連資料もそろっており、各製造過程では何も異常がない。
調査の結果から見ると、第一に、この企業の関連製品、当作業グループが日本から持ち帰ってきたサンプル品を含めて、いずれもをメタミドホスは検出されなかった。第二に、この企業は規範的に管理されており、生産や加工の各過程では異常がない。今回、日本で生じた「餃子中毒事件」は、農薬残留の問題で起こった食品安全事件ではなく、人為的な犯罪行為による個別事件である。
魏伝忠副局長は、食品の安全は世界各国が直面する共通の課題であり、中日双方が迅速に食品安全に関した長期にわたる協力メカニズムを作り、両国間の食品の安全協力を強化して、両国経済貿易の健全な発展を促進することを希望していると強調した。
「チャイナネット」2008年2月28日