日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 昨日お伝えした広東省汕尾市・東洲村を警官・武警(武装警察=暴動鎮圧用の準軍事組織)約1000名が包囲していた一件で動きがありました。

 警官・武警約200名が18日午前3時ごろ東洲村内に突入、地元の警察に連行された村民代表の解放を求め、村民が交換条件の人質として軟禁していた役場(東洲街道弁事処)職員8名を実力行使により奪回した模様です。

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 香港各紙(2006/11/19)の報道によると、16日に約1000名の警官と武警で東洲村を包囲した地元当局は、17日に小部隊による人質奪回を企てるも失敗。

 その後未明を待って午前3時に奇襲作戦を決行、完全武装の警官・武警約200名が警察犬を引き連れて村内になだれ込み、空に向けて警告射撃を行って農民を威嚇しつつ、同村中心部の廟に軟禁されていた人質8名を奪回したとのことです。

 廟の前には見張り役の村民たちがいたものの、警官が解き放った警察犬多数に脅えて躊躇している間に警官隊が廟の扉のカギを壊して内部に突入し、人質を奪われてしまったとのこと。もっとも『太陽報』によると警官隊は警告射撃のほか催涙弾も発射し、慌てて駆け付けた農民数百名が追い散らされたそうです。

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 この際、警官隊は村民2名と香港のラジオ局の記者1名を拘束し連行したものの、3人は18日午後になって釈放されました。このうち村民2名は身柄を取り押さえられている間に警官に暴行されたとしています。連行された報道関係者については諸説あり、

「香港のラジオ局の記者1名」
(蘋果日報)
「外国人記者1名」
(明報)
「香港のラジオ局の記者1名、香港のテレビクルー3名及び運転手1名」
(太陽報)

 と様々です。さらに法輪功系の反中共ニュースサイト「大紀元」は、米国人記者3名が18日朝、取材のため東洲村に入ろうとしたところ警官に発見され、2名が連行されたと報じています。

 残る1名は村内に入れたものの村の外へ通じる道路は全て警察に封鎖されているため脱出することができず、北京の米国大使館に電話して救援を要請。大使館職員は3時間後に迎えを寄越すと応じたものの、いくら待ってもその迎えが来ないため、この米国人記者は行方をくらましたとのことです。

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 一方、今回の事件の発端となった警察が連行した村民代表・陳簽氏は未だ釈放されていません。『明報』によると、汕尾市政府は18日夜に声明を発表、今回の事件の定性(党による善悪認定。違法かどうかより優先される)を「非合法監禁事件」とし、陳簽氏を「村委員会事務秩序騒擾罪」により11月9日に逮捕したと明らかにしたところから、陳簽氏の釈放は望み薄とみられています。

 また『星島日報』の報道では汕尾市政府の声明は警官隊の突入についても言及、

「役人8名は監禁が8日間の長きにわたり、生命の安全が脅かされているという深刻な状況のため、警察側は突入強行のやむなきに至った。警官隊の行動は終始順調で、いかなる衝突も発生していない」

 と発表したとのこと。

 親中紙『香港文匯報』はさすがに中共の走狗だけあって汕尾市当局に直接取材できたようです。それによると村民代表の陳簽氏は9月22日、「私怨を晴らすため」仲間十数名を引き連れて東洲街道弁事処に現れ、職員に暴行を加えたとしており、これが11月9日の「村委員会事務秩序騒擾罪」による逮捕の原因だとしています。

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 『蘋果日報』によると、同村には現在も警察車両十数台とともに警官・武警が残って包囲を解いておらず、緊張は未だ解けていません。このことから、警官隊が再度村内に突入してリーダー格の村民を逮捕するつもりではないかとの見方が村内に広がっているようです。

 今回の実力行使に対してある村民は、

「役人どもはまだ誰かをひっくくろうとしている。こっちは腹が立って仕方がないよ。(「12.6事件」から)もうすぐ1年になるというのに、あいつらは俺たちを逮捕したり監視したりするばかりで、村民側の要求には何ひとつ応じていない。みんなの我慢にも限度がある。この先何が起きても不思議じゃないよ」

 とコメントしています。

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 この新しい動きを報じた香港各紙の見出しが興味深いです。記事内容をそのまま反映している訳ではないのですが、ひとつの目安としてみると面白いのです。……面倒なので原文のまま並べます。

 ●武警強攻東洲村救8官
(蘋果日報)
 ●八官「脱困」汕尾仍緊張
(星島日報)
 ●汕尾救出被扣官員
(明報)
 ●汕尾破門救被扣八官
(東方日報)
 ●汕尾徴地餘波 八官被禁梱八日 千警夜襲破門搶人
(太陽報)
 ●汕尾警方成功解救人質(
香港文匯報)

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 まず親中紙の『香港文匯報』は「成功」「解救」という単語から当然ながら当局側のスタンスであることがわかります。

 香港の中国返還と同時に中共寄りへと露骨に報道方針を転じた『東方日報』も「救」「被扣」(拘束されている)と足並みを揃えています。

 情けないのは、昔日の良心的かつ社会派な編集路線から徐々に大人しくなっていった『明報』もまた「救出」「被扣」と尻尾を振っていることです。……ここまでの3紙のデスクは珠江遠泳8海里&重金属野菜500g一気食いの刑。

 反中色が強く香港の最大手紙である『蘋果日報』はタイトルこそ「救」の字を使って当局寄りのようでもありますが、「武警強攻」には無理矢理やったというニュアンスが漂っていて、実際記事内容は村民に同情的です。及第点といったところでしょうか。

 『星島日報』は「脱困」をカギカッコでくくったところに村民への思いやりがみてとれますし、「仍緊張」(依然として緊張状態)の3文字で「まだ何か起こるかも」という空気を表現した秀逸なタイトルです。銀メダルをあげてもいいでしょう。

 そしてMVPは中共側へと転向した『東方日報』系列ながら、官民衝突モノには無類の取材力を発揮する『太陽報』。まず今回の事件が汕尾市当局の無体な土地強制収用に端を発していることを「徴地餘波」できれいにまとめたうえ、「破門搶人」=扉を破って人を奪う、という村民視点ともいえる表現を使っているのはナイスです。

 ……ただし字数が多すぎます(お前が言うか>>自分)。この記事が中国面のトップでなければ金メダルされど傷モノ、といった評点になるのではないかと。

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 ところで今回の事件、直接的な引き金となった陳簽氏の逮捕容疑には疑問が残りますが、東洲村民が役人8名を人質にとってしまうのは法に照らしても無茶です。

 ただそこまでしないと事態は打開されないという追いつめられた気持ちと、「官匪」への抜き難い不信感は理解できます。汕尾市当局は勝手に土地を強制収用しておきながら村民に補償金を出さないという稀にみる悪代官(売却益横領疑惑も)。しかもそれに村民が異を唱えるや、武警に突撃銃を乱射させて死傷者多数を出すという海外からも注目を浴びる惨劇をやってのけたのです。

 それなのに、農民十数名を逮捕して全員に実刑判決を下す一方、当局側は現場指揮官を処罰(具体的内容は不明)するとしたのみで市の責任者にはお咎めなしという信じ難い幕引き。これを広東省当局も追認したのですから、村民は立ち上がらざるを得ません。

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「官逼民反」(「官」の横暴に追いつめられた「民」が成否を問わず蹶起する)という言葉がこれほど当てはまるケースもないでしょう。信じ難いことに、「12.6事件」で悪名を轟かせた後も、汕尾市当局は現在に至るまで東洲村民からの土地収用に対する補償要求を無視し続けているのです。

 村民たちの今回の行動は非難されるべきものですが、泣き寝入りしようにも補償金すら出ないのでは暮らしが立ち行きません。地元当局が話し合いの場を設けようとすらせず、まさに「官匪」たる姿勢で臨んでくる以上は実力に訴えるしかなかったのでしょう。

 ところが、人質を取って相手を交渉の場に引きずりだそうとした村民に対し「官匪」がとった行動は警官・武警約1000名で東洲村を包囲するという「いきなり一触即発」型の措置。村民を孤立させて威嚇しつつ人員の往来を遮断し、一方で電話やインターネットといった外部との連絡手段を封じ、さらにテレビまで見られなくするという念の入ったやり方には呆れて物が言えません。

 しかも村民から人質を奪い返した後も包囲を解かないでいるのです。事態は来るところまで来てしまった、というしかないように思います。東洲村民がどうするかは別として、事態がここまで進んでしまえば、自衛のために農民が武装化しても不思議ではない状況、といっていいのではないでしょうか。

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 「12.6事件」についての裁定から察するに、広東省当局が腰を上げる雰囲気ではありません。だとすれば、1年前よりは統制力を強めている中央政府が今回は省当局に圧力をかけられるかどうかがカギではないかと思います。

 それとも農民たちを見殺しにするのでしょうか。「和諧社会」(調和社会)を呼号する胡錦涛&温家宝の本気度がいま、試されようとしています。

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 http://orientaldaily.orisun.com/new/new_c01cnt.html
 http://the-sun.orisun.com/channels/news/20061119/20061119013735_0000.html
 http://www.singtao.com/yesterday/chi/1119eo03.html
 http://hk.news.yahoo.com/061118/12/1wnrz.html
 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0611190038&cat=002CH
 http://www.epochtimes.com/gb/6/11/18/n1525822.htm

 ……それにしてもこういう事件は書いていて気が滅入ってきますね。




コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
怖いなあ (五香粉)
2006-11-19 13:01:22
先般コメントを出した『五』改め『五香粉』です。御家人さんの洞察力には感服しています。本ブログが中国本土で見られるのは、①情報分析が緻密。それ故、反共産党分子を燻りだすための道具にぴったり。ということではないでしょうか。そんな訳で、今後コメントは暫し控えたいと思います。アクセスするだけでも危ないでしょうけれど(^^)次回のコメントは、いざ鎌倉!という事態になったときです。
 
 
 
どっかで見たことある・・・・ (後塵)
2006-11-19 16:33:39
陰惨過ぎて、気がめいるのですが、これと似た光景をどこかで・・・と古い記憶を頭の中で反芻していたら、白土三平の「カムイ伝」の最後の方ですね。日置領の農民一揆とそれを弾圧する幕府権力の拷問、殺戮、阿鼻叫喚のシーンが延々と続き、百姓代表の花巻村の正助は、なんと裏切り者にされてしまうんですね。1970年頃の作品ですが、実際の江戸幕府は随分優しい政権で、どっかの馬鹿マスコミが褒め称えていた文革期の中共政権こそ、人権無視の極悪非道政権だったんですね・・・・若い人にはわからないでしょうが、年寄りの感慨です・・・・
 
 
 
あれま (おむら)
2006-11-19 23:35:09
>米国人記者3名が18日朝、取材のため東洲村に入ろうとしたと
>ころ警官に発見され、2名が連行されたと報じています。

 カンボジアの内戦を思い出しました。
 
 
 
Unknown (ざる)
2006-11-20 06:53:35
わたしは黄巾の乱です。
 
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