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お金は盗まれる

最近急に思い出したのだけど、小学校五年生の時にお年玉を二万五千円程もらえた。他の子はもっと多かったけど、私としては人生で一番多かったと思う。親戚がたくさんいるし密な付き合いをしているくせに、こういう時の金払いはケチくさい人達だ。別に家庭家庭の財布事情は違うので、もっと払えよとは言わないけど、あれだけ仲良くしているのにこういう必要なお金は出さない人達なんだよなぁ。父方の親戚は。

不労所得と言えばそうだけど、心労は大変にあったので心労所得になると思う。心を削ってすり減らし自分を殺して得た二万五千円には大変な価値があった。私は引き出しの中にしまっておいた。特に使う予定はなかったし、こんなにたくさんお金があると言う事は、何か買う時に「お金がない、お金がない」という親の言葉も聞かなくてよかったような気がしたから。

ある日お金がなくなった。二万五千円全てがすっかりなくなった。引き出しから消えたと言ってよかった。

当時私には私の部屋などなかったので、引き出しとは書いているけど、父親の靴下が入っている小さなタンスの中にしまいこんでいた。タンスの底に敷いているクッション材のようなものの下に隠しておいて、それを知っているのは母親しかいない。

私は母親に聞いたが「知らない」と言う。父親や弟に聞いたかは覚えてないが、ともかく家庭内でその場所を知っていたのは母親だけだったし、靴下の引き出しを開けるのも母親だけだ。当時父親はたおぱんぱの人だったので、着替えなどは母親が用意していたから、靴下だって用意するのは母親で、父親が引き出しを開ける事はほぼないと言ってよかった。

お金がなくなりおろおろして落ち込む私を見ていて母親は何も思わなかったのか思ったのかは察せられないが、かなり月日が経ってから母親が言った。

「あのお金は林間学校のリュックとか買うのに使った」と。

小学校五年生の五月くらいに確かに林間学校があった。その際に一万円ちょっとのリュックを買うよう学校から指定の封筒が来ていたのは知っている。しかし、あれは二万五千円もしなかった。「残ったお金があるはずだ」と詰め寄る私に「他のものも準備したから全部使ったんだ」と母親は私を切り捨てた。

私は家庭内でお金が盗まれるなんて思ってもいなかった。幼い頃の隣の家の女の子が、母親の財布から千円を抜き出しジェニーちゃん人形を買ってしこたま怒られていたのは知っているけど、「子供が親から金を盗む」のはまぁあるのだろう。ただよくはないのだろう。私はそういう事は絶対しなかったし。逆の「親が子供の財布から金を盗む」があるなんて、私には本当に本当に衝撃だった。

どんな顔をして、何を思って、どんな手つきでどんな体温でやったんだろうか。私が何を思うかわかっていてやったんだろうか。わかっていたから、ずっと黙っていたんだろうけれど。

母親なんて呼びたくもないあのクソ女は、私に正直に「お金が足りないから、林間学校のお金はお年玉を使ってほしい」と言って私が断ると思って黙ってやったんだろうか。それともそれ以前に話が通じる訳もないと私をモノ扱いして勝手に盗んだのだろうか。どういう理由があったって、私はものわかりのいい子だったから「お金がないから、お年玉を使ってくれ」と頼まれても、嫌だったとしても「うん」と私は答えたのに。

盗んだ事より私をモノ扱いした事が許せない。あの女は猫が好きだった。まさに泥棒猫と言って差し支えないクソ女だと思う。

時は変わって結婚式、もらった祝儀を花婿や花嫁に持たせる訳にはいかないので、どちらかの両親に頼んで下さいとプランナーさんに言われた。何故夫側の方へ預けようと言う話にならなかったのかはちょっと覚えてないが、「父親や弟はトイレとかで絶対なくすはずなので、母親に持たせよう」と私と一緒に住んでいたクソ女に預ける事となった。私は何故かそれがとても不安だった。何故だかわからないが、大切な大切なものをあのクソ女に預けてはいけないと心が警鐘を鳴らしていたんだと思う。

あのクソ女は世間体が大切なので人の目があるところで、更に私のものではなく夫のものでもある祝儀を盗む訳もないのだが、私は不安だった。

あの時何故不安だったのか、私の手に透明な手下げに入った祝儀が戻ってきた時とても安堵したのを覚えている。きっと盗まれると思ったからだ。どこかに忘れて来てしまうアホな男性二人より、盗むと言う狡猾な手段を使う事に何の抵抗もないクソ女に渡した方がリスクが大きかったからだ。

しかしまぁ、誰に預けても私は不安だった事だろう。父親ではおそらく嫌がらせでどこかに忘れて来てくる可能性があるし、弟は本当に忘れる可能性が高い。なくす事前提で預けるなら、金を持ってる弟ならなくした後補填出来るので弟が一番良かったかもしれない。でも、やっぱり夫の母親に預けてくればよかった。なんで預けなかったんだろう?
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