裁判員裁判で裁判員に選ばれた聴覚障害者が、正確で適切な情報を得られるための課題や手話通訳のあり方を考える裁判員裁判手話通訳研修会が29日、早良区の西南学院大法科大学院であった。県聴覚障害者協会主催、県手話通訳士会共催で、30日まで。
研修会では、架空の覚せい剤密輸事件の裁判との想定で、女性の聴覚障害者を裁判員の1人に加えて模擬裁判を実施。1日目は冒頭陳述▽証拠調べ、被告の母に対する証人尋問▽中間評議まで進められ、手続きごとに法律や法廷通訳の研究者、手話通訳士、聴覚障害者を交えて質疑応答や意見交換をした。
出席した手話通訳士や聴覚障害者からは、手話にない地名などを指文字で通訳すると進行に間に合わない▽発言者や通訳の誤りを訂正するルールがなく聴覚障害者裁判員が混乱する恐れがある▽異議申し立てなど次々と当事者が発言すると聴覚障害者は通訳されているのが誰の発言か分からなくなる--などの意見が出た。
これに対し、法律家や法廷通訳の研究者らからは「法律家側の障害、手話通訳に対する理解は低い。手話通訳士がプロフェッショナルとして公判前整理手続きなどで法曹三者に説明していくしかない」「制度全体の運用の課題として裁判所に問題提起すべきだ」「実際に裁判に加わる法曹三者を加えたトレーニングの場が必要」などの指摘があった。
研修会講師の水野真木子・金城学院大教授(通訳論、法言語学)は「同時にさまざまな動作で行う手話通訳は、音声による逐語的な外国語通訳と違う難しさがある。法廷でのやり取りが100%伝わらないと公正を欠き、被告や判決に大きな影響が出ることを法律家が理解する必要がある」と語った。
また、検察官役も務めた渡辺修・甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)は「このような取り組みで課題を浮き彫りにする。その上で、手話通訳士が技法を錬磨すること、法律家がそれを使うすべを学ぶこと、とりわけ裁判所が責任を持って裁判員に対する情報保障を行うことが求められる」と話した。
毎日新聞
研修会では、架空の覚せい剤密輸事件の裁判との想定で、女性の聴覚障害者を裁判員の1人に加えて模擬裁判を実施。1日目は冒頭陳述▽証拠調べ、被告の母に対する証人尋問▽中間評議まで進められ、手続きごとに法律や法廷通訳の研究者、手話通訳士、聴覚障害者を交えて質疑応答や意見交換をした。
出席した手話通訳士や聴覚障害者からは、手話にない地名などを指文字で通訳すると進行に間に合わない▽発言者や通訳の誤りを訂正するルールがなく聴覚障害者裁判員が混乱する恐れがある▽異議申し立てなど次々と当事者が発言すると聴覚障害者は通訳されているのが誰の発言か分からなくなる--などの意見が出た。
これに対し、法律家や法廷通訳の研究者らからは「法律家側の障害、手話通訳に対する理解は低い。手話通訳士がプロフェッショナルとして公判前整理手続きなどで法曹三者に説明していくしかない」「制度全体の運用の課題として裁判所に問題提起すべきだ」「実際に裁判に加わる法曹三者を加えたトレーニングの場が必要」などの指摘があった。
研修会講師の水野真木子・金城学院大教授(通訳論、法言語学)は「同時にさまざまな動作で行う手話通訳は、音声による逐語的な外国語通訳と違う難しさがある。法廷でのやり取りが100%伝わらないと公正を欠き、被告や判決に大きな影響が出ることを法律家が理解する必要がある」と語った。
また、検察官役も務めた渡辺修・甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)は「このような取り組みで課題を浮き彫りにする。その上で、手話通訳士が技法を錬磨すること、法律家がそれを使うすべを学ぶこと、とりわけ裁判所が責任を持って裁判員に対する情報保障を行うことが求められる」と話した。
毎日新聞