ゴエモンのつぶやき

日頃思ったこと、世の中の矛盾を語ろう(*^_^*)

当たり前の夢を実現 重度障害、見守りに支えられ

2017年05月15日 19時30分26秒 | 障害者の自立

 午前2時過ぎ、ベッドに横たわる迫田博さん(40)は、天井に向け右手人さし指を立てて見せた。脳性まひで、言葉を発することができない迫田さんがトイレに行きたいという意思表示だ。指が1本ならおしっこ、2本ならうんち。夜中に3回程度訴え、その都度ヘルパーが介助をする。時には間に合わず、漏らしてしまうこともある。ヘルパーは迫田さんのサインを見逃さないよう、寝ずに見守る。

  神戸市長田区の「Re-Smile」(リ・スマイル)。全国的にも珍しい、重度身体障害者も入居できるシェアハウスだ。4階建て建物の個室で迫田さんを含め男女9人が1人暮らしをする。9人の障害支援区分は5~6で、迫田さんは最も重い6。重度の障害者も当たり前に地域で暮らす。ここは彼らの夢を実現する場だ。

 生活を支えるヘルパーは、障害者総合支援法に基づき、重度の障害がある人に生活全般の介護を提供する「重度訪問介護」を利用して、派遣される。ただ、支給時間数は自治体の裁量に任されている。迫田さんは24時間ヘルパーを付けてほしいと求めるが、神戸市は1日最大15時間しか認めていない。深夜帯は「生命にかかわる危険性がない」として、8時間のうち5時間はヘルパーが付かない空白時間帯も生じている。

 しかし実際には、頻繁にトイレを訴える迫田さんに対し、ヘルパーは空白時間帯も部屋を離れることなく、ボランティアとして見守り続けている。「迫田さんの尊厳を守らなければならない」。シェアハウスを運営し、迫田さんらを支援するNPO法人「ウィズアス」職員の村上真一郎さん(39)は説明する。

 トイレだけではない。就寝中、頭がベッドから落ちることもあり注意が必要だ。体調が急変する恐れもある。

 昨年5月20日午後11時ごろ。迫田さんは突然、原因不明の激しいけいれん発作に見舞われた。全身が硬直し、皮膚が青紫色になるチアノーゼの症状も出ている。ヘルパーはすぐに救急車を呼び、心臓マッサージを施し続けた。迫田さんは中央区の中央市民病院に緊急搬送された。

 西区の実家にも連絡が入った。父光弘さん(72)と母歌子さん(69)は病院に急いだ。道すがら、光弘さんの脳裏に30年以上にわたる介護の日々が駆け巡った。

   ×  ×

 博は家族で出かけるのを喜んだ。シェアハウスで暮らすまで、博の世話を一手に引き受けていた歌子がくも膜下出血で倒れた時は、途方に暮れたが娘たちが助けてくれた……。

 ふと思った。<これでみんな楽になれる>

 「親亡き後」どうするか、結論が出ないまま歳月が流れたが、もう案ずる必要もない。すべてが終わるのだ。

 覚悟をして病室に入ると、元気な息子がいた。処置が早く、回復したのだ。ヘルパーが見守っていたからこそ、救われた命だった。

 <お前は懸命に生きようとしとるのに、わしはとんでもないことを考えてしまった。すまん、博>。父は心の中でわびた。息子は屈託のない笑顔を見せる。この子はやはり、かけがえのない子だ。光弘さんの目から涙がとめどなく流れ落ちた。

   ■  ■

 「共生社会」の実現が今、求められている。私たちは何をしたらいいのか。閉ざしていた心の扉を開くと、隣に自分とは異なる個性を持つ人の存在に気づく。まず彼らを知ることから始めたい。第1部は「地域で暮らす」ことについて考える。

脳性まひの迫田博さん(中央)は、父光弘さん(左)と母歌子さん(右)から離れ、シェアハウスで1人暮らしを続けている

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