ゴエモンのつぶやき

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南阿蘇村で温泉旅館閉館 農地に湧き出し営業15年

2016年10月15日 01時57分57秒 | 障害者の自立

 阿蘇山麓に広がる熊本県南阿蘇村。「地獄」「垂玉(たるたま)」と伝統ある名湯が並ぶ一帯で、一軒の小さな温泉が短い歴史に幕を閉じる。農業用の水を求めるうちに湯が湧き出て始まった「蘇峰温泉ゆうやけ」(同村河陽)。障害者に優しいバリアフリーの造りが親しまれたが、経営する後藤司人(もりと)さん(61)と妻の智子さん(57)は、熊本地震で被災した施設の再建を諦めた。湧き続ける湯に後ろ髪を引かれつつ、心を決めた。

 「自然は難しい」

 「自然を観光に生かすのは難しいね」。12日の昼すぎ、4日前に噴火した阿蘇山・中岳の噴煙を山越しに見ながら、司人さんはつぶやいた。瓦は落ちて柱はゆがみ、地面の亀裂に草が生い茂る。半年前のまま時が止まったようだが「湯は変わらず出るんですよ」。火山の恵みを受けて15年続いた温泉は、大地の異変によって終止符を打たれた。

 開業の発端は、智子さんの父、偉裕(ひでやす)さん=2008年死去=が農業用水を求め、田んぼの脇を掘削したことだった。58度の湯が湧き出た。農業には使えない。偉裕さんは「ここで温泉をやる」と言いだした。

 こぢんまりとした施設でも、開業するには数千万円の投資が必要だった。夫と村で学習塾を経営していた智子さんは夫婦で大反対したが、父の熱意に押されて01年に開業し、家族総出で手伝うことになった。

 玄関から浴槽まで完全バリアフリーにこだわった。長男の裕弥さん(30)が自閉症で、家族でゆっくり出掛けることができなかった経験から、障害を気にせず過ごせる温泉を目指した。「ここしか入れない」と障害者の常連が根付いた。100%源泉掛け流しの湯も人気になった。

 地震で温泉施設は大規模半壊し、隣の自宅は全壊した。周囲の同業者は大きな被害を受けながらも、再建を目指して動き始めた。避難生活の中、常連客からは差し入れとともに再開を望む声が届いた。ただ、夫妻は「神様が決めたこと」と閉館を選んだ。ゼロからやり直す体力も気力も、もう残っていなかった。

 「湯船から見る夕焼けは最高だった。湯が出るだけに悔しい」。思いもよらず村の主要産業である観光に携わった後藤夫妻。その復興を、少し離れた立場から見つめていく。

南阿蘇村で温泉旅館閉館 農地に湧き出し営業15年 

本震で傷ついたままの「蘇峰温泉ゆうやけ」の施設を見詰める後藤夫妻。再建の見通しが立たず閉館を決めた

=2016/10/14付 西日本新聞朝刊=

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