ゴエモンのつぶやき

日頃思ったこと、世の中の矛盾を語ろう(*^_^*)

メディアと障害者像=望月麻紀(東京学芸部)

2016年10月08日 11時54分46秒 | 障害者の自立

安易な感動物語、脱却を

 今夏、メディアが伝える障害者像が「一面的だ」と当事者が声を上げ、差別につながると批判した。NHKがEテレで放送している情報バラエティー番組「バリバラ」の8月28日放送でのことだった。

 

パターン化が生み出す差別

 番組では、オーストラリア人の女性ジャーナリストでコメディアンのステラ・ヤングさん(1982〜2014年)が、障害者を感動の対象として取り上げる映像や写真を「感動ポルノ」という言葉を使って批判したことを紹介。スタジオでは、障害者相談支援専門員で脳性まひの玉木幸則さん(48)が「(障害者と健常者が)同じ人間として怒ったり笑ったり、思いを重ねることがホンマの感動。一方的な感動の押しつけは差別だ」と話した。

 同じ時間帯には39回目を迎えた日本テレビ系チャリティー番組「24時間テレビ」が放送中だったが、NHKが日本テレビに注文を付けた、と問題を矮小(わいしょう)化したくなかった。私も20年あまりの記者経験の中で、パターン化した障害者像を記事にしてきたのではないか、という反省がある。

 親元を離れて自立生活を送ろうと地域の理解を得るために自らシンポジウムを開いた脳性まひの男性や、普通学級に通いたいと希望する親子も取材してきた。一方で、「バリバラ」で指摘されたように、音楽活動などで「障害を乗り越え頑張る障害者」を感動的な物語として幾度となく紹介してきたのも事実だ。

 感動的な話の全てが問題なのではない。それも分かっている。だが、7月に相模原市の知的障害者入所施設「津久井やまゆり園」で重度障害者19人が殺害され、27人が負傷する事件が起きた。「障害者は不幸をつくることしかできない」という容疑者の主張に安易に賛同する意見がインターネット上に出現したのは、今なお、障害者は社会の中で見えにくい存在であり、メディアがことさら「頑張る障害者」像に偏って伝えてきたことの反作用のように思えてならない。

 「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」と明記した旧優生保護法が母体保護法に改正されたのは1996年。優生思想に直結する「優生」の言葉が法律から消えるまで、20年以上にわたる障害者の抗議があった。さらに20年が経過した。厚生労働省の推計によると、国民の約6・7%が何らかの障害を持っていることになるが、この実感はあるだろうか。知的障害者約74万人のうち約16%(2011年)は施設に入所している。

 この間、日本経済が停滞する中、共生の理解よりも先に、効率性や「社会の役に立つかどうか」で人の価値が一層語られるようになってしまった。メディアと受け手の間では、見慣れない障害者を「頑張る障害者像」として見せる、という「お約束」を解消できずにいる。

 その結果、障害がテーマの作品や障害者が主要な登場人物である場合を除けば、主人公の同級生の一人や通行人といった立場で障害者が登場することはほとんどない。テレビでは、偶然映り込んだ障害者の姿を、制作者が「意味を持ってしまう」とカットすることも多いと聞く。障害を笑いのネタにもする「バリバラ」は、12年の放送開始以来、いまだ異色の存在だ。

共に生きている現実描いていく

 なぜ、そうなるのか。障害者やLGBTなどの性的少数者が自然に登場するような多様性のある番組作りが大事だと考える放送作家のたむらようこさん(45)は二つの理由を挙げる。一つは「制作者に悪気はないが、テレビマン自身が障害者との接点がなく、先輩から番組の作り方を習った時点で原材料に全く入っていない」。もう一つは「見る側に拒否感があると思い込んでいる」。

 たむらさんはこうも言う。「テレビは大勢の人に対して、誰にでも分かりやすく物事を伝えるというミッションから物事を極端にパターン化する風潮があると思う。そのため、現実よりも一段『視聴者が見たい現実』を描いているのかもしれない」。「見たい現実」は現実ではない。たむらさんが「社会の窓」と表現するテレビで、障害者を含む誰もが共に生きている現実を描いていかなくてはならない。もちろん新聞も同じだ。

 重度障害者で「寝たきり芸人」のあそどっぐ=本名・阿曽太一=さん(37)は相模原の事件後、「障害者は胸を張って街に出よう」と提言した(8月17日朝刊掲載)。

 もっと映ろう。もっと映そう。パラリンピックがその素地を作ってくれた。筋書きのないドラマの主人公の後は、ドラマの通行人やインタビューに応じる市民として、その姿を捉えていきたい。

 相模原殺傷事件の追悼集会。メディアの障害者像を疑問視する意見も出た
 
毎日新聞    2016年10月7日 東京朝刊
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