奈良の福祉事業者「ヒューマンヘリテージ」計画
日本有数の観光地でありながら、宿泊施設の客室数が全国最下位(平成27年度)の奈良で、障害者や高齢者も安心して利用できるホテルを立ち上げようと、介護タクシーを使った旅行サポートなどを行う会社「ヒューマンヘリテージ」(奈良市)の社長、山本善徳さん(42)が計画を進めている。山本さんは「障害者の悩みを解決する仕事がしたい」と話す。
高校時代のボランティアが契機
奈良市で生まれ育ち、高校2年生の時、福祉ボランティアをしていた母の影響で、ボランティアサークルに入った。「障害のある人の生活を支えているという実感があり、『こんな世界があるんだ』と感じた」と福祉活動に取り組んだ。
卒業後、障害者支援を行う「たんぽぽの家」(奈良市)でアルバイトとして働き、24歳で正職員となってからは、障害者の旅行サポートなどを行っていた。
「障害のある人の旅行はなぜこれほど大変なのだろう」。車イスでの移動、多機能トイレの有無、バリアフリーなホテル探しなど障害は多い。「この人たちが心から旅行を楽しめるように、問題を解決するビジネスがしたい」と、介護老人保健施設でケアマネジャーを3年経験した後、平成21年4月、奈良市に「あたりまえの暮らしをすべての人に」がコンセプトの会社「ヒューマンヘリテージ」を設立した。
バリアフリーホテルを自らの手で
介護タクシーを利用した旅行・観光サポートや、「高齢者向けカルチャーセンター」の運営などを手がけているほか、現在取り組んでいるのが「みんなのホテル」プロジェクト。
「車イスでも使える奈良のホテルを紹介してほしい」という障害者の声を実現するため、「障害のある人が安心できるバリアフリーなホテルを自分で作ろう」と考えた。
「障害者、高齢者など誰でも快適に過ごせるデザイン」「地域住民と旅行者の交流拠点」「障害者を雇用して仕事に誇りを持ってもらう」の3つをコンセプトにしたホテルは、31年4月のオープンを目標にする。
10部屋程度で、車イスでも入りやすい介護用ベッドや、風呂にもリフトを装備するなどバリアフリーにし、従業員がヘルパー介護の資格をもっているようにすることも計画している。
現在、奈良市内で土地を探すなど計画実現に向けて取り組みを進めている。山本さんは「地域とともにあるホテルを絶対につくる」と力強く語っている。
「みんなのホテル」計画について職員と話し合う山本善徳さん
産経ニュース