ゴエモンのつぶやき

日頃思ったこと、世の中の矛盾を語ろう(*^_^*)

胸に秘める人生設計 自立した娘、たくましい決意

2017年07月12日 03時13分18秒 | 障害者の自立

 2014年5月、神戸市長田区のシェアハウス「Re-Smile」(リ・スマイル)が開所した。最初は5人が自立生活をスタートさせた。初めての1人暮らしに胸躍らせる障害者仲間の笑顔。その輪の中に、同じ屋根の下で暮らすはずだったNPO法人「ウィズアス」代表の鞍本長利さん(66)の長女麻衣さん=12年12月に38歳で死去=はいないが、麻衣さんと同じ脳性まひの障害を持つ次女紗綾(さや)さん(38)の姿があった。

 

 「紗綾さんがリ・スマイルに入居を希望していますよ」。開所が間近に迫っていた頃、法人職員が鞍本さんに耳打ちしてきた。寝耳に水だった。前年7月に開かれた事業説明会にも紗綾さんは出席していたが、父親は知らなかった。

 内緒にしていたことが父親にばれて、いたずらっぽく首をすくめる紗綾さん。「どういうことだい?」。驚いて尋ねる父親に訴えた。「私も自立生活を送りたい。将来のことを考えながら、自分で生活してみたいんです」

 初めて聞く娘の思いだった。紗綾さんの障害支援区分は2番目に重い5。移動は電動車椅子に頼らなければならないが、会話は普通にできる。両親は最重度で寝たきりの麻衣さんにかかりきりだった。幼い頃からそれを見てきた紗綾さんは、親に負担をかけまいと心掛けてきた。そんな娘だった。自宅がバリアフリーだったこともあり、鞍本さんは「紗綾は(シェアハウスに入居させなくても)いいだろう」と、そのまま一緒に暮らしていくつもりだった。

 だが、紗綾さんは法人職員や仲間から「紗綾さんだったら1人暮らしができるよ」と励まされるうちに、芽生えた自立心をずっと温めてきた。シェアハウスの募集に「チャンスだ」と思ったという。

 この子も地域で暮らしたいと願っていたのだ。考えてみたら、大人の娘にとって自立したいという思いは当然のことだった。「自分でやりたいようにやったらいい」。父親は短い言葉で娘に家を出ることを許した。

 「きっと父は、姉がいなくなったうえに私まで出ていってしまうと寂しいから、家に置いておきたかったのでしょう。仲間の親には、子離れせなあかんと言っているのにね」。紗綾さんは笑った。私がこの話を伝えると、鞍本さんは苦笑いした。図星だった。本音を娘に見透かされてしまって、困惑する父親の表情を浮かべた。

 紗綾さんは、シェアハウスで自炊をする。平日は就労支援事業所で働き、休日にはショッピングや大好きなサッカー観戦にも出かける。スタッフやヘルパーに支えてもらいながら自分なりの自立生活ができていると感じる紗綾さんだが、もう一つ夢を胸に秘める。

 つき合っている男性がいる。同じ脳性まひの障害がある幼なじみという。彼は姉が亡くなった時「大丈夫か」と電話をかけてくれた。足が腫れて入院した時には、心配して見舞いにも来てくれた。紗綾さんはそんな彼のやさしさにひかれた。将来は結婚したい。その準備のためにも、市営住宅で本格的な1人暮らしを始めたい。でも、病気がちな自分の体調管理に不安もあり、その一歩が踏み出せずにいるという。

 彼女は先の人生設計を描いていた。「まだまだ、もっと自信をつけてからの話ですけどね」。はにかみながら「でも」と次の言葉に力を込める。「2人で働いて収入を得て、支援制度も活用していけば何とかなると思う」。たくましい自立した女性の決意だった。

シェアハウス「リ・スマイル」に入居した当時の思い出を語り合う鞍本紗綾さん(左)と父長利さん

毎日新聞   2017年7月10日 

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