ゴエモンのつぶやき

日頃思ったこと、世の中の矛盾を語ろう(*^_^*)

新聞のある情景(3)福祉施設にて

2016年10月19日 01時17分58秒 | 障害者の自立

自宅と同じめくる習慣

 柔らかな日差しが窓から注ぐ朝7時、山口すみえさん(77)の一日が始まる。車いすに乗り食堂に向かうと、朝刊を手に取る。

 三養基郡みやき町にある障害者支援施設「希望の家」。事故で下半身が不自由になった山口さんは、35年前からここで暮らす。

 趣味の編み物の合間に、新聞をゆっくり読み進めるのが日課だ。自室で読むのは前日の新聞。その日の朝刊は読む人がほかにもいるため、勝手には持っていけない。いつか読もうと、自室に取り置いている古い新聞は、ベッドから手を伸ばせば届く所に置いている。

 最近はパラリンピックに夢中になった。ラジオで中継を聞き、新聞を読んで結果を復習する。「車いすでバスケをしたり、テニスをしたり、すごいね。私もたまにやるボッチャは銀メダルだった」とほほ笑む。

 一番楽しみなのは読者の意見が載る投稿欄。「人の暮らしが透けて見える。私も、思いが伝えられる気がして」。山口さんも月に一度は佐賀新聞に投稿する。

 投稿を続けてきて、うれしい出来事があった。7月に「姉が畑の野菜をカラスに狙われて困っている」という投稿が採用されると翌月、「カラスは光り物が苦手ですよ」とアドバイスの投稿が掲載された。「顔が見えない交流だけど、心が温かくなりました」

 多久市の特別養護老人ホーム天寿荘では日中、テレビの前に入所者が集まり、情報番組を見ながら歓談する。それに背を向けるように、鶴田邦吉さん(90)は新聞に目を通す。

 政治の記事を読むのが好きだ。以前に話をしたことがある議員が大臣に就任し、余計に関心を寄せるようになった。被災地の支援にどう取り組むのか、熊本地震の復興の行方は-気になる話題がめじろ押しだ。

 物故者の通夜や葬儀を案内する「おくやみ」欄は欠かず目を通す。「老人クラブで関わりがあった人、同じ地区の人の名前を見つけると、当時のことを思い出すね」。新聞は、新しい出来事を知る手だてにとどまらず、昔の記憶を呼び覚ます媒体にもなっている。

 施設の共有スペースで新聞を読むの人たちの中には認知症の人もいる。「みんな新聞の内容を理解できているかは分からない。それでも、慣れ親しんできたからか、習慣的にめくっている人がいる。そうすることで、落ち着くんだろうね」と鶴田さん。施設に入っても、自宅と同じ風景がここにある。

職員と談笑しながら新聞に目を通す山口すみえさん(左)=三養基郡みやき町の希望の家

職員と談笑しながら新聞に目を通す山口すみえさん(左)=三養基郡みやき町の希望の家

2016年10月18日   佐賀新聞

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