ゴエモンのつぶやき

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視覚障害者の支援機器の技術、ボストンマラソンに挑む

2017年07月17日 13時13分01秒 | 障害者の自立

マラソン出場歴17回のErich Manser氏は、法的認定を受けた視覚障害者です。網膜色素変性症を患い、視力の程度は「パラフィン紙で覆ったストローを通して見たような感じ」だと言います。

4月にErich Manser氏はボストンマラソンに8回目の出場を果たし、完走しました。しかし今回はこれまでとは異なり、Airaという視覚障害者支援技術を使用して完走した初のレースだったのです。網膜色素変性症のため盲目と認定され、過去のマラソンでは伴走者とともに走っていたManser氏(44歳)ですが、今回は伴走者の他にGoogle Glassesを装着して走ったのです。そこに搭載されたカメラで撮影した一人称視点映像が、1,000km近く離れたオハイオ州コロンバスにいるヘルパーのJessica Jakewayさんに生中継され、彼女がそれを見ながらBluetoothのヘッドセットを通して音声指示を出すという試みでした。

今回のレースの結果では技術的不具合も何度か起きたため、このシステムの視覚障害者支援技術としての潜在的欠点と可能性の両方が明らかになりました。ただしAiraは、マラソンのような過酷で混雑した環境を想定して開発されたものではないため、これはきわめて困難なテストでした。しかし、レース場という厳しい条件でのテストは、Aira社の今後の技術向上に役立つのです。

Manser氏は、電話インタビューで「今日のレースがこの技術にとって過酷な試練となることは、皆十分に心得ていました」と感想を述べてくれました。彼は、バリアフリーコンサルタント兼テスターとして、マサチューセッツ州ケンブリッジのIBMに勤めるかたわら、マラソン出場歴17回を誇るランナーとして活躍しています。「このテクノロジーは、視覚障害者をボストンマラソンで単独で走らせるために開発されたものではありません」と彼が言うように、このプラットフォームは、本来、視覚障害者が街中を歩いたり、スーパーで買い物したり、ウーバーを呼んだりといった行動を支援するための技術で、マラソンのテストは技術向上の一環として行われました。

Aira社の共同設立者でCEO のSuman Kanuganti氏によると、Airaのユーザーは現在200人以上おり、うち100人以上が毎日使っているとのこと。視覚障害をもつAiraのサービス利用者がGoogle Glassなどのスマートメガネやスマートフォンから一人称視点映像を生中継し、生身の遠隔ヘルパーがリアルタイムでそれを見ながら、必要なサポートを行うという仕組みです。

マラソン当日、Manser氏は出だしから、Jakewayさんの声が聞こえないというトラブルに見舞われました。「皆が予測していたとおり、いくつかの技術的不具合が起きました」とManser氏は言います。問題の原因は、彼が装着していたBluetoothのヘッドセットだったようです。スタートから8~9kmほどの地点でManser氏と伴走者はコース脇に止まり、ヘッドセットを外してスイッチをオンオフしてみると、聞こえるようになりました。Jakewayさんには、最初からManser氏の声が聞こえていたのですが、一方通行だったのです。

「ハプニング」は他にもいくつかあったとManser氏は言います。Jakewayさんへの映像中継も途中何度か途切れたそうです。2人は、そうしたトラブルを想定し、短い合い言葉で状況を説明できるようあらかじめ打ち合わせをしていました。Jakewayさんが「ブラックアウト」と言った場合は、Manser氏のGoogle Glassの映像が見えないので伴走者の誘導に頼るように、という指示。そしてManser氏にJakewayさんの声が聞こえない場合は「オーディブル」と言って知らせることになっていました。

とはいえ機械的不具合ではなく、単に観衆の喧騒が原因で彼女の声が聞こえないこともありました。「どんなヘッドセットを付けていてもボストンの観衆にはかないません」と彼は言っていました。結局完走には5時間あまりかかったそうです。でも今回のレースは、タイムが目標ではないのです。

Aira 社の通信部門の副社長Kevin Phelan氏は、AT&Tの広報担当者を通したEメールでこのように述べています。「弊社は、徹底的な顧客第一主義なので、技術チームには継続的な向上が求められます。たとえば、音声が聞こえないという問題は、Erichの選んだイヤホンとBluetoothの接続の問題に起因していたようです。しかし私たちは、オープンプラットフォームにした以上、彼がそのイヤホンを使いたいと言ったら、それをこころよく奨励すべきなのです」

トラブルはあったものの、マラソンでのテストはけっして失敗だったわけではありません。伴走を務めたIBMの同僚 David WeiさんはManser氏の左側を走っていましたが、JakewayさんがGoogle Glassの右側に付いているカメラ映像を見ていたおかげで、右側で起きていたことが伝えられたのです。たとえば「右側にランナーがいる」とか「給水所が見えてきた」などと知らせたり、マイルマーカーを読み上げたりしたと言います。「それらは価値ある補足情報でした」とManser氏。彼はそうした情報を少し茶化して「(実況の)穴埋めトーク」と呼んでいます。

一方、Jakewayさんは、オハイオの自宅でレース映像をモニターしていました。 彼女には中継映像の他、Manser氏の地図上の位置や気温、そしてGoogle Glassやストリーミングに使われたAT&T のMifiという機器のバッテリー残量なども表示されていました。

Manser氏は、当日は完璧な状況ではなかったが、テクノロジーの進化の手伝いができてうれしいと言っています。「今回のテストは、Airaを使えば、全盲の人が3万人のランナーに交じって1人で走れると証明するためのものではありません。でも、これでその状態に一歩近づいた、ということが私はとてもうれしいのです」

 Pushing the limits of assistive technology during the Boston Marathon| Popular Science

Image: Byelikova Oksana / Shutterstock.com  2017.07.16


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