倉敷市内にある障害者の就労継続支援A型事業所5カ所が今月末で一斉に閉鎖され、事業所で働く約220人の障害者に解雇予告が出ていることが、市などへの取材で分かった。事業所は市内の一般社団法人と関係会社が運営しており、経営悪化を理由に閉鎖すると市に説明している。全国的にも異例な規模の障害者の一斉解雇とみられ、倉敷市やハローワークは対応に追われている。【小林一彦】
市などによると、閉鎖される事業所は2014~17年に開設。パンなどの食品製造や軽作業などをしており、雇用する障害者に最低賃金以上の賃金を支払っている。一般社団法人が4カ所、法人の代表理事が代表を務める株式会社が1カ所をそれぞれ運営している。この法人は他にも1カ所の就労継続支援A型事業所を開いていたが、今年5月末で閉じている。
障害者に対する解雇予告は6月下旬にあった。法人が出した「整理解雇のお知らせ」によると、「経営不振に陥った中、雇用を維持するべく経営努力をしてきたが、明るい見通しが立っていない」とした上で、「最も避けなければいけないことは、働いていただきながら賃金が不払いになること。それを絶対に避けるため、事業所を閉鎖せざるを得ないという判断をした」と説明している。一方、法人は市に対し、事業所とは別に設けたウナギの養殖場に対する投資で経営が悪化したと述べたという。この養殖場は、障害者の施設外就労の場にもなっていた。
閉鎖する事業所で働き、精神障害がある30代女性によると、6月下旬ごろに職場のフロアに集められ、全員解雇すると告げられたという。女性は「頭が真っ白になった」と困惑している。
こうした事態を受け、市はハローワーク倉敷中央とともに、解雇される障害者の再就職に向けた相談などを受け付ける説明会を今月中に開く方針だ。
厚生労働省によると、就労継続支援事業所や一般企業から解雇された障害者の数は昨年度で全国に1335人いる。厚労省障害者雇用対策課は「1度に3桁の障害者を解雇する例は、少なくともここ数年では聞いたことがない」と話している。
事業所設置基準を厳格化 補助金で賃金支払い相次ぎ
厚生労働省によると、就労継続支援A型事業所は2017年3月時点で全国に3596カ所ある。12年3月時点では707カ所で、5年間に約5倍に増えている。
市障がい福祉課などによると、就労継続支援A型事業所は、国の特定求職者雇用開発助成金を障害者1人あたり3年間で最大240万円、市のA型サービス事業費を同1人あたり1日5840円(国、県の補助も含む)受け取れる。
これらの補助金は、事業所の経費にしか充てることはできず、障害者の賃金は事業による収入から支払うのが原則だ。しかし、収益性のない事業をしたり、事業そのものをしなかったりし、補助金を賃金の支払いに回すケースも見られるという。
このため、厚労省は今年3月、事業所の設置や継続の基準を厳しくし、指導を徹底するよう各自治体に通知。これを受け、倉敷市も事業計画書の提出を各事業所に求めているが、なかなか出てこないのが現状だという。
毎日新聞 2017年7月20日