診療所だより

開業医gobokuの日記

こんなこと考えながら、
こんな生活しています。

死亡診断書

2017年09月29日 | 診療
いつの間にか季節は秋を迎え、
朝晩の気温も下がってきました。

そんな中、
20数年前から知っている患者さんのご家族から
連絡があり、
92歳のその患者さんが弱ってきているので
これから定期的に往診してほしいと言うことです。

数年前に脳梗塞になり、
身体が不自由となり、
それ以来 脳外科に通院しているその患者さんは、
ときどきうちにも来て、
健康診断などを受けていていました。

いわば、開院以来の患者さんです。

もちろん 二つ返事で、
「わかりました。そうします。」とこたえました。

それから、患者さんのお宅に伺い、診察をすることになりました。

それからしばらくして、
ある日の夜、
「センセ、おじいちゃんの具合が悪いようです。すぐ来て下さい。」
という電話がありました。

駆けつけると、患者さんは呼吸状態も悪く、
診察した時点で これは余り持たないなと思い、

その旨 ご家族に話し
最後は自宅でそのときを迎えることを決めました。

そして、
数時間後
たくさんの家族に囲まれながら、
静かに呼吸は止まりました。

ご家族がおじいちゃんに声をかけます。
「おじいちゃん!おじいちゃん!」

声が収まった頃を見計らって、
死亡確認です。
いよいよお別れの時です。

「残念ですが、お亡くなりになりました。」

開院以来の患者さんです、
いろいろなことが思い浮かびます。
「おじいちゃん、色々あったけどよく頑張ったね」と
僕も感慨深いものがあります。
それと、
最後まで診てあげられてよかったなぁ、
という気持ちも浮かんできます。
でも、これでお別れです。

それから診療所に戻って、死亡診断書を書きます。

夜、たった一人で書く 死亡診断書。
間違いがあってはならないので、
カルテを見ながら、書いてゆきます。

カルテは患者さんの記録です。めくりながら
「あぁ、こんなこともあったけなぁ、
そうそう、このときは どうしようか 困ったんだっけ。
脳梗塞になって7年もがんばったんだね。」
などといろいろなことが思い出されて、
あふれてきました。

書き終えて、間違いがないか確認して、封筒に入れました。

次の日、診断書をとりに息子さんが来られて
その死亡診断書を息子さんに渡すとき、
不意に
「あぁ、これが おじいさんとの、本当のお別れの時なんだ。」
そんな思いが沸いてきて、僕の身体いっぱいに広がってきました。
「よろしくお願いします」そう言っておわたしするのが精一杯で、
深く頭を下げて、息子さんを見送りました。


 

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。