散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

資源の無い国のトラウマ~輸出偏向型経済戦略

2014年02月21日 | 経済
昨年12月の貿易収支は1兆3021億円の赤字であり、18カ月連続の赤字であったことを昨日の記事で報告した。
 『貿易赤字の拡大と実質賃金の停滞~規制緩和と成長戦略の行方140221』

更に昨日の公表では、1月は2兆7900億円と想像を超えるペースで貿易赤字が拡大している。輸出が数量ベース前月比15%、金額ベース14%と大幅に減少し、赤字額が急拡大した。2014年に日本が慢性的な経常赤字体質となるのはほぼ確実な状況となってきた。

改めて、昨日の経常収支のデータを小黒・法大准教授の論考から掲載すると、下図のようになる。長期トレンドが一目瞭然だ。更に貿易赤字拡大の原因は、原油価格の高騰と円安が主因である。メディア等では、原発停止による液化天然ガスの輸入量の増加との説があるが、それは誤解である。
 
安倍政権は円安によって輸出を回復させる経済政策を取ってきた。しかし、優れた認識を有する学者、エコノミストが指摘する様に、この認識は誤りである。要するに、安倍政権の取り巻きには人材が不足しているのだ。

この貿易赤字については、既に野口悠紀雄・早大教授が鋭く分析している。
つい最近の貿易赤字は小黒氏の指摘の通り、原油あるは液化天然ガスの輸入増加である。しかし、この1年程度を取れば、輸出の伸び悩みの影響も大きい。2013年の輸出総額は69兆7877億円で、対前年比9.5%の増加だ。ただし、これは円安によって円表示の価格が上昇した影響もある。下図に示す様に、輸出数量指数の対前年比は1.5%の減少だ。つまり、円安下であるにもかかわらず、輸出数量が落ち込んでいるのである。


結局、円安による為替差益により、輸出金額は増加しているが、国内生産の状況は変化していないのだ。これは、アベノミクスが実体経済を改善していないことを示す最も重要な証拠の一つだ。更に、安倍政権が期待した貿易収支の改善は見られず、まったく逆のことが起こっている。

野口氏は日本の輸出立国モデルは崩壊したと述べている。
しかし、この状況を導いた安倍政権内部の認識として、資源の無い日本は、輸出によって生きていくという、戦後日本の政策、それが大成功した高度経済成長時代の印象が、トラウマとして残っているように思われる。経団連という輸出大企業の利益を代表する団体が今もなお、企業集団の代表として君臨していことも含めて、グローバル化した世界の中の日本が問われていることでもある。

      

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