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インド、「温暖化ガス排出上限」に反対 India’s rebuff

2009-07-20 | 中国・ロシア・インド・ブラジル動向
2009年7月20日(日)

クリントン米国務長官は、5日間の予定でインドの公式訪問を始めたが、インドの反応は、冷たいものとなっている。

オバマ政権は、ブッシュ前政権の政策を大幅に変更し、地球温暖化ガスの排出上限設定に向けて、明年の「京都議定書以後」(post-Kyoto protocol)交渉に復帰している。クリントン米国務長官はこの政策に沿った形で、インドに対して、「温暖化ガス排出削減はインドの経済発展を阻害するものではない。両国で低炭素社会の到来に向けて両国間の協力体制を築きたい。米国も技術面で支援したい。」と、温暖化ガスの排出上限設定(emissions caps)を提案した。

しかし、インド側は、この提案をにべもなく拒否した。対応した環境大臣は、クリントン国務長官に対して、「一人当たりの排出量では、きわめて低い水準にあるインドにとって、排出量を削減せよと圧力をかけられる理由は存在しない。そして、米国は、圧力のかけ方が足りないと思えば、次はインドからの輸入に対して、『炭素輸入税』(carbon tariffs)をかけると脅すつもりでしょう」と、反駁したのである。

これに対して、インドとの関係に気を使わねばならない同長官は、「世界最大の民主主義国家インドの経済発展を阻害するつもりはない。インドの経済発展は世界の利益にもかなうことである。二酸化炭素の排出を抑制しながら、経済成長を支えるエネルギーの生産・消費の方法はあるはず」と、やんわりとした反論にとどめた。

インドは、自らの経済発展を阻害するものとして、WTOのドーハラウンド交渉に反対し、地球温暖化ガスの排出上限の設定にも反対し、米国の政策には従うつもりがないことを、今回改めて世界に宣言した。

中国とインドと、あわせて25億人になんなんとする人口を持つ両国が、「世界新秩序」の主導権を目指す世界の構図がはっきり見えてきた。米国の一極支配体制は、ブッシュ政権とともに終焉しているのである。

しかし、インドも米国との関係を無視できるほど、その実力は磐石ではないし、米国が中国との関係強化一辺倒になられるのも、中印関係の緊張状態からも非常に困ったことになる。米・中・印は、こうした微妙なバランス関係に入っている。

長官は、ムンバイでは、昨年爆弾テロで多数の犠牲者を出した、Taji Hotelに宿泊し、入院中の犠牲者を見舞うなど、「民主党政権は、中国にのみ秋波を送り、インドに冷淡なのではないか」とのインド側の懸念を払拭するポーズ(In a symbolic act of solidarity)をとったことが、両国関係を象徴している。。




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