今月は桂三枝氏
金融翻訳者の必携アイテム、日本経済新聞。単純に読み物として面白いものもたくさん掲載されていて、「私の履歴書」はその筆頭じゃないかと思う。今月はどなたかな、と毎月楽しみにしている。
今まで読んできて一番印象に残っている方は、遠州茶道宗家・小堀宗慶氏だ。第二次世界大戦後にシベリア抑留された体験が、日経紙面で1ヵ月近く来る日も来る日も詳細に語られて、過酷な日々を知恵と工夫で生き抜いたエピソードの積み重ねに圧倒された。
この欄に登場されるのは、当然ながら功成り名を遂げた一定年齢以上の方々であるため、成功談へと至る前の序盤あるいは前半に戦争体験が語られることは多い。でも、小堀氏のときは、その月の上旬を過ぎ、中旬を過ぎても、シベリア抑留のお話が終わらず、このままでは戦後に遠州流を盛り立てた成功談を記すスペースがなくなってしまうと余計なお世話だがハラハラして読み続けた。もう月が終わるという頃になって、ようやく帰国後のお話に移り、何年もしていなかった難しいお点前をいきなりお弟子さんに所望される場面があった。
小堀氏がたじろぎながらもお点前を始めると、長いブランクにもかかわらず不思議と体が動き、見事やり遂げることができたのだそうだ。壮絶なシベリア体験と静かなお茶の対比とか、その後の成功談なんて言わずもがなと思えるエピソードの数々とか、ただただ凄いなあと感じて、強く印象に残っている。
どんな方のお話にインパクトを感じるかというのは人によって多少違うのだろうか? 私は他に作曲家の遠藤実氏やドトールコーヒーの鳥羽博道氏の「履歴書」にとりわけ感銘を受けた。皆様は?
T.T.(40代、女性) 在宅翻訳者。「履歴書」の隣の文化欄も好き。
























