カラン、カラン♪
『いらっしゃいませ、アッ?!陳さん!』
開店早々、隣の中華料理店玄武門店長にして、李大人の侍従長が喫茶キャッツアイにやってきた。
『ファルコンはどうした?シンフョン?』
陳は、椅子に掛ける事もなく杖を真正面についたまま、規律の姿勢だ。
『今日はミキとでかけています。ミキが作ったサンドイッチ持って、上野の動物園にいくそうですよ。』
こんな朝からの陳の登場に信宏は驚いたが、陳に驚かされるのは慣れているので、いつもの調子で話し出す。
『そうか・・・。では、帰りは夕方かの。』
『遅くならないと思いますが。ファルコンさん、アメ横でアヒルの頭を買ってきてくれるので、今夜はから揚げを作るんですよ。香瑩と冴羽さんも呼ぼうと思って。』
信宏は店で出すメニューの準備に、ジャガイモの皮をむきながら話す。
信宏のいつもと変わらない様子に、陳は出直す事にした。
『そうか。だが、信宏。今夜は、それどころではないかもしれないぞ?』
『え?』
信宏が顔を上げると、陳の姿は店内に既になかった。
«続»