Takの秘密の木

誰にもいえない気持ちは、誰もしらない秘密の木の洞に、こっそり語って蓋をするんだって。@2046

社会派という名の時代劇

2009-10-19 | ドラマ・映画・舞台の感想
今週は忙しくて、ようやく今、「不毛」を見終わりました。
ということで、日21の2回目はまだHDDの中。見ていません。

で、「不毛」ですが。・・・・・
社会派という名の時代劇に、なっちゃってるような気がするんですけどー・・・・・。・・・・・
社会派を時代劇にしちゃったら、意味ないんじゃないかなー・・・と。

いかに"現代社会"を鮮やかに切り取って魅せるか、かつ、万人が共感せずにはいられないような普遍性を持った"人間"を描ききるか、というのが、社会派と呼ばれる作品の真骨頂だと思うんです。
そもそもこの「不毛」という作品は、それがゆえに超話題作で、ベストセラーとなったわけで、・・・・・当時は。
現代を生きる人のリアルな感情に密着しているからこそ、社会派と呼ばれるんじゃないかなー・・・・と。
でも、時代はどんどん流れてしまって、当時の"現代社会"は、今や遠い過去の話になってしまってる。
"戦争"や"昭和"というキーワード自体が、ノスタルジーと共に語られる、遠く離れた過去のもの、時代劇の一つに、なりつつあるんじゃないかなー・・・・と。
私の年齢でも、シベリア抑留や日本人軍人という存在は、あまり実感を持ってリアルに感じ取ることができないものになっているのは事実です。
なんか日本人じゃないみたいに見える。
そういう状況は決して看過すべきものではないとは思うけど、でも私の年齢でさえそうなのに、私より下の人にしてみれば、もっと「不毛」の世界は遥か遠くに離れた異国のお話のようにしか見えないだろうなー・・・・・と。・・・・・

でも、「不毛」は、社会派の傑作として名を馳せてる作品のはずなんですけど!(苦笑)
決して、追憶や懐古や、過去の歴史を教科書とする訓戒や、戦争の悲惨な現実や高度経済成長時代を啓蒙することを目的にした作品ではないはず。
なのに、どうも最近、城山三郎や山崎豊子とかの作品を映像化すると、昭和懐古のヒロイック時代劇と化してしまってるような印象があるのは、私の気のせいなんでしょうかねー・・・・・。

逆に、藤沢周平の作品が人気があるのは、「時代劇という名の社会派」だからだろうな、と思うんです。
いつの世であっても変わらない、人間の営みの普遍性を、すばらしくリアルに描いてる。
藤沢周平は、敢えて時代劇というファンタジーの中で人間を描くことによって、より鮮やかさを増しているんじゃないかなー・・・・と。
現代人でも共感せずにはいられないような、悲しみとか喜びとか、挫折とか成功とか。いかんともしがたい不条理とか世知辛さとか、どうしようもない切なさや人生の至福や・・・・・そういう普遍的なものが、きっちりと軸にあるんですよね。
時代劇が、社会派の側面を持つことでより説得力を持っているのに、なんでそもそもが超硬派で社会派の作品を、ノスタルジックな時代劇に終始しちゃうのかなー・・・・・。
感傷的な社会派なんて、なんかそもそもが軸がブレブレのような気がするんですけど。
普遍が普遍じゃなくなっちゃってる。

そういう意味では、舞台を現代に翻案した「巨塔」は、とても賢明だったのかも。
鉄平を主役にした「華麗」も、鉄平がMIT卒で銀行家の息子という設定は、現代とリンクする部分も多いから、これもまあまあ成功だったのかも。
先鋭的な社会派だった作品を、単純明快な勧善懲悪時代モノにして本質失ってちゃ意味ないじゃん。本末転倒だもの。
"昭和"が時代劇となってしまったのは仕方ないとして、"人間を生々しく描きこむ"というそもそもの良さは、きっちり表現してほしいなー・・・・・。
山崎作品も城山作品も、それがあるからこそ、今持って支持されてるんだと思うし。

「不毛」は山崎作品の中でも、特に連ドラ化が難しい作品だとは思います。
シベリア抑留の部分は、お台場は一体どうするつもりなんだろう・・・・と思ってたし。(苦笑)
だってどう考えたって視聴者の食いつきが悪いのは想像に難くないし、ひたすら敷居の低さ、気軽さ重視のお台場にしたら、明らかに暗くて重過ぎる題材でしょ。
でも、シベリア編を描かないと、壱岐という人物がなぜああいう男性なのかというのが、存在感を持って浮き上がってこないんですよね。
シベリア部分はどうしても省けない。
だからこそ、初回の1回で長尺取って、思い切って全部一気にやっちまおう、というのが、お台場の狙いだったのではないかと思うんだけど。・・・・(苦笑)

しかし山崎作品ってこういう感じのが多い気がする。
なにしろ原作が長大で精緻で膨大で、「沈まぬ」とかも、やっぱアフリカ編は省けないと思うし。・・・・
おかげで今度の映画、上映時間が3時間超えるようですが・・・・・。(苦笑)
でも、仕方ないかなー・・・・・・と。
そういう事前の緻密な積み上げがあるからこそ、というのが後々確かにあるんだよね。
なんか極めて重い、石臼みたいな感じ。
重たくて重たくて、始めはなかなか動かないし面倒くさいし疲れちゃうんだけど、でも一度勢いがついてきて回転し出すともう止まらない。ものすごい質量と充実感というか。・・・・・・

だから次回に期待しておきます、お台場さん。
いいもの見せてください。

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