アメージング アマデウス

天才少年ウルフィは成長するにつれ、加速度的に能力を開発させて行きました。死後もなお驚異の進化は続いています。

あいものがたり Ⅲ

2016-12-07 17:48:45 | 物語
さて、座敷童だけが残されたテントの前は閑散としていました。
 桜の木陰、緋色の紬で後神がテントの木戸口を見やっていました。一目で田舎者分かる親子が悩んでいたからです。
「母ちゃん、見たいよ」
 女の子の訴えに母親は溜息を付いて連れ合いを見ます。
「父ちゃん、おいら一生懸命勉強して一杯お金を貯めるから、花子に見世物をみせておくれ」
「太郎ねそんな先の事を言ってもしょうが無い。今、家は貧乏なんだよ」
 父親は財布の中を覗き込んで首を力なく振ります。
「東京見物だって清水の舞台から飛び降りるような気持ちで出て来たんだ」
「母ちゃん、やっぱり見たいよ!」
 愚図る花子の手を引いて歩き出す母親、父親も太郎を促して歩き出す。

 桜の木陰から姿を消している後神、木戸口に一陣の風とともに姿を現す。
 風に長い髪が乱れて、後頭に大きな眼が現れる
が、慌てずに髪を整えると、親子の後ろ髪を引いた。
 未練たらしく木戸口に戻って来る親子。
 後神は、出来る限りの笑顔を創って女の子に話しかけた。
「お嬢は幾つ?」
「花子、六つ」
「だったら問題無い。この小屋は十まではただ。僕は?」
「もうすぐ十五」と、胸を張る太郎。
「嘘だろう。どう見ても十にしか見えない。十まではただて見られる」
「本当ですか?」
 母親が顔を輝かせた。
「どうか、二人を入れて下さい」と、後神に頭を下げる父親。
「それが出来ないんだ。大人が付き添わないと駄目なんだ」
「だったらあんた、二人に付き添っておくれな。後の遣り繰りははあたしがなんとでもするからさ」
「だから、田舎者は嫌なんだ。良く考えてご覧、大人が二人で八十銭、あんたら親子は四人だろ? 四で割ったら二十銭、こんな計算も出来ないのかい」
「二十銭」と、財布を覗き込む父親る。
「分かったよ、十銭でいいよ。だけど条件が有る。弁当を四つ貰つておくれ。売れ残って困ってるんだ」
 確かに弁当が山のように積まれている。だが、満席になる目論見だつたから、これでも足りない位だった。
 弁当が四銭、四つで十六銭、どう計算しても六銭の赤字になる。それでも後神涼しい顔をして、耳を澄ました。
 風に乗って、チンドン楽隊の音が聞こえて来た。
「もうすぐ帰ってきそうだね」
   2016年12月7日    Gorou
ジャンル:
小説
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