(フットボールチャンネル)
マドリーが脱落。2大巨頭の牙城を崩したアトレティコ
スピルバーグでさえ、ここまでのシナリオは書けなかったに違いない。スペインリーグのタイトル決定は、リーグ戦最終節まで持ち込まれ、FCバルセロナとアトレティコ?マドリーの一騎打ちとなった。
昨年8月にスペインリーグの最終節がバルサ=アトレティコ戦になるとのスケジュールを見た時に、ここまで本当にリーグ戦が混戦となることを予想できた者は、誰もいなかったことだろう。
ここ数年、チャンピオンズリーグ(CL)がお茶の間に普及し、その価値があがると共にリーグタイトルはおろそかにされる傾向が出てきていたが、それはリーグ優勝がある程度、見えていることが条件になっていたのだ、と今季改めて気づかされた。
スペインリーグにおいて、優勝できるのは限られたクラブ。誤解を恐れずに言えば、バルセロナあるいはレアル?マドリーだけ、という状況が続いていたことも要因の一つにあった。しかし、今季この争いにアトレティコ?マドリーが本格的に参戦したことで、リーグ戦は俄然面白くなった。
手にしている時はたいしてその価値が認められないが、手放す可能性が見えた途端に他人に手渡すのが惜しくなる。リーグ戦とは長年付き合った伴侶のようなものだ。熟知しているからといって、努力を惜しむとすり抜けていってしまう。
最終節の1週間前に、レアル?マドリーがセルタを相手に試合を落とし優勝争いから脱落した。セルタ戦前の時点では、バルサを下して国王杯を手に入れ、CL決勝を目前に唯一3冠制覇の可能性があったのだ。
それだけに、試合に負けたロッカールームでは、フロレンティーノ?ペレス会長が「ピッチでこんなイメージを見せるなんて許されない」「3冠のオンリーチャンスを逃すとは」と珍しく激高して選手に向かって怒ったことが、メディアによって明かされた。近年、苦渋をなめてきたフロレンティーノ会長にとっては、1点も決められず自ら脱落した選手の失態は許せないものだったのだろう。
バルサの“ポゼッションサッカー”を無力化させたシメオネの“ダイレクトサッカー”
さて、残った二強のうち、現在首位を走っているのはアトレティコ?マドリー。元々アトレティコは、スペインリーグの中でもそのサポーターの熱さにおいては1、2を争うクラブ気質がある。
元キャプテン時代から、モチベーターとして能力が高いチョロ?シメオネが監督としてベンチに座ってから、現在までのアトレティコの飛躍は今となっては周知の通りだろう。今季のCL決勝は、アトレティコ?マドリー対レアル?マドリー戦であることを鑑みても、アトレティコが既にスペインの枠に収まらず、欧州レベルでの成功をおさめていることは火を見るより明らかだ。
一方、勝ち点3差で追うバルセロナだが、今季はシーズン最初からプレシーズンの最中にティト?ビラノバからタタ?マルティノへの監督の変更、その後メッシ、プジョル、バルデス、アルバと次々と主力の選手が負傷した他、ネイマール騒動によるサンドロ?ロセイ会長の辞任、シーズン終盤のビラノバ逝去、とこれ以上、何が起きるのかという激動の一年を過ごしてきた。
サッカー面で言えば、アトレティコとバルセロナは今季5回戦っているが、バルサは一度もアトレティコに勝利することができずにいる。それも、毎回圧倒的なポゼッション率を誇りながら、バルサの求めるスピーディで正確なパスをベースにしたポゼッションサッカーが、シメオネの追求するダイレクトサッカーの前に通用せず。
グアルディオラからスタートし、スペイン代表が流行を作ったここ数年主流のパスサッカーコンセプト自体に疑問を突きつける様相も見せている。
リーグ優勝にふさわしいのは勝利を手にした方。1年の集大成を懸けた戦いへ
アトレティコが勝利を収め、独走態勢に入ってリーグ戦は早々と王者を決めるかと思いきや、CL決勝進出が決まってから、アトレティコ、バルサ、マドリーとも全チームが勝てずに終わり、その結果、最終節までもつれ込む形となった。これだけ毎年、大舞台でプレーしている経験豊富な選手達の神経戦となるのだ。
来年、既にマルティノ放出を決めているバルサは、来季監督になることが予定されているルイス?エンリケが強化担当と打ち合わせしているところをメディアに報道され、今週末でリーグが終わるというのに、マルティノ監督が選手に休日を与えた他、今週はプジョルが惜別の会見が行われるなど、最後の一戦に集中できる状況とはほど遠いように感じられる。
ホームで最終戦を戦えるメリットはあるが、そのメリットすらアトレティコの前には役に立たなかったことは今季、証明されている。
泣いても笑っても、あと90分。シメオネはディフェンスも含めてベストの布陣を手にし、カンプ?ノウにやってくる。
イニエスタが話したように、「リーグ優勝にふさわしいのは勝利を手にした方」なのだ。1年の集大成を懸けた試合は、土曜日の18時(日本時間、日曜日25時)にキックオフだ。