大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 7月17日 千円札(2)

2016-07-17 19:25:46 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 7月17日 千円札(2)




 この紙幣は確かにこの前、郵便局に送金したはずだ。
こんな紙幣をお客さんに出す訳には行かないのは、コンビニも郵便局も変わらない。
その同じ紙幣が、数日経たとは言え、なんで同じ店から出てくるんだ?
 鮮やかな色の口紅は、何だか笑っているように見える。
とてつもなく嫌ぁな気持ちになりながら、とにかくその紙幣は前回同様に送金袋に突っ込んだ。
 三度目は十ヶ月ほどブランクを空けてから来た。

“ そういえば去年、あんな事があったなあ。
でもまあ、タチの悪い偶然だったんだろうなあ。”

そう思い始めた矢先の出来事だったから、見つけた瞬間は思わず凹んだ。
正直、虚空に向かって、

「 何でやねん!」

と小さく叫んだ僕も、ハタから見るとちょっと恐かったかもしれない。
キスマーク付きの千円札、見れば見るほど不気味なブツであり、持っているだけで不幸になりそうな、そんな予感がある。
どう始末を付けたかは、過去二回と同様である。
 それで、ある日、久しぶりに友人に会ったとき、世間話的に尋ねてみた。

「 お金に呪いとか何か込められるのかねぇ?」

 キスマークの千円札が出てきた前後に、自分や店に不幸があった訳ではないが、明らかにあの紙幣は意思を持っているように感じたのだ。
そして、アレに意思があるとしたら、それは決して良いものでは無いと思うのである。
 友人は言った。

「 聞いた事無いけど、出来たとしてもしょうがねぇよなぁ。」
「 しょうがない?」
「 人間に食べられる為に殺される動物達の霊はどうなってんだ、って疑問と一緒でな。
在ったとしても、何の手立ても無い訳だしさ。」

 家畜の霊が恐いから肉食を止める事は出来ないし、呪われたお札があるからお金を使うのを止める訳にもいかない、と言う事か?

「 考えてみると金ってやつは、確かに呪いとかには便利だよな?
赤の他人同士がやり取りするのに何の疑問も抱かないのは、これぐらいのモンだし。」
「 いや、そうでも無いだろ。」

友人はちょっと考えてから返答してくる。

「 赤の他人同士簡単にやり取りするんだから、呪いたい相手がいつまでその紙幣を持ってるのか判らないんだぞ?
仮に誰かがお前のコンビニを呪いたいからって、そんな事をしたとして、実際、一日経たずに紙幣は郵便局に送られちゃってるんだしさ。」












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