今回は、倉吉博物館の「フィギュア博覧会」の見学レポートです。
倉吉博物館は、外装を古い街並みの赤瓦と城壁のイメージにまとめ、打吹山公園の東側に位置して落ち着いた空間を有します。以前は歴史民俗資料館を含む施設でしたが、統合後は展示室を美術部門と歴史部門とに分け、主に美術部門での展示に力を入れてきた実績があります。
それで、今回のフィギュアやねんどろいどというカテゴリーも、いわゆる造形品の一種と捉えて美術カテゴリーの展覧会を実現したのでしょう。
フィギュア博覧会の会場は無料でした。桜ミクの案内POPが良いです。
公立博物館の特別展示がタダで見られるというのは、滅多に無いことです。展示品の出品者側が出資する場合に限られるはずなので、今回の展覧会はグッドスマイルカンパニーさん側の希望で成立、倉吉博物館が会場を提供した、という形なのかもしれません。
会場は二階にあり、階段を登ってエントランスに向かうと、大きな看板の下の奥の展示空間に「ぐま子」とグッスマ星人が居ました。東京本社からはるばるやってきたのですね。ぐまー、と挨拶しておきました。
この「ぐま子」は中に人が入ってイベントなどでマスコットとして活躍しているものです。アニメイベントやホビーショーなどで、主にミクダヨーとペアで出ていたのを御存知の方も多いと思います。身長が私とそんなに変わらないのですが、写真では大きさがあまり伝わってきませんね・・・。
「ぐま子」のねんどろいどは私も持っていますが、こちらの「ぐま子」と全く同じ姿です。体型もねんどろいどタイプなので、ねんどろいど商品化を前提としてデザインされたのかもしれません。
しかし、2008年に4月バカのイベント「ぐっすまうどん」に絡めて「ぐま子」が初登場した時は、またグッドスマイルカンパニーさんが遊びと冗談で楽しませてくれるな、という程度に見ていましたが、まさか正式キャラクターにおさまるとは予想もしませんでした。何がどうなるか分からないものです。
入口のパネルも「ぐま子」メインです。これ欲しいなあ、ポスターとか売ってないかな、と思いましたが、販売コーナーにもポスター類はありませんでした。ぐまー。
会場に入るやいなや、視界に入ってきた長大な展示ケースです。ずらりと並ぶ500体のねんどいどです。おーこれが500体か、500体って思ったよりも凄い数だ、展示して並べると壮観だなあ、と感動しました。
初期の商品はほとんどが初めて見ましたね・・・。こんなのがあったのか、と眺めてしまう商品が多いのでした。順に見ていくと、だんだん知っている商品が出てまいりました。こなた、涼宮ハルヒ、びんちょうタン、コトナエレガンなど。
初音ミク、鶴屋さん、鏡音リン、朝倉涼子、桂木弥子・・・、おおっ、ペンギンこと南極さくらがありますね・・・。知らなかった、ねんどろいど化されていたのか・・・。
ああ、ざんげちゃんが居ますな・・・。ナギ、つかさ、ゆい・・・。ゆいって「こはるびより」のキャラだったかな・・・。・・・なんだこのクマみたいなのは・・・、レオナルド博士?知らんぞ・・・。・・・サイボーグみたいなウサギがおるな・・・、ウサコッツ?全然知らんぞ・・・。
100番台前後から、知っているキャラクターが増えてきました。玩具店やフィギュア専門店などで現在も販売しているのを見かけることが多いですからね。「リリカルなのは」や「けいおん」などのキャラクターはみんな好きでしたが、商品を買うまでには至りませんでした。
このなかで買ったことがあるのは96番の海上じえいたんです。ウェブコミック「魔法の海兵隊員ぴくせる☆まりたん」が結構好きだったので・・・。
000番、001番のネコアルクです。ねんどろいどシリーズの最初のキャラクターはオリジナル品だったのだと、初めて知りました。000番があるというのも初耳でした。
9番の涼宮ハルヒです。人気アニメキャラクターのねんどろいど商品化第一号だそうです。これが大ヒットしたことにより、現在に至るねんどろいどシリーズの基本方針が定まったということです。
ねんどろいどシリーズにおいて最多のバリエーションを誇る初音ミクシリーズの第一号が、上図の33番の商品です。以後のミクは色々と変化があり、季節ごとのデザインバージョンもあるので、どれが本来の姿なのかよく分かりませんでしたが、これを見てやっと理解出来ました。私が持っているミクは、ファミリーマートのくじ商品だけなのですよ・・・。
161番のストッキングです。以前はこれも持っていました。アニメ「Panty & Stocking」のキャラクターですが、けっこう気に入っていました。五年ほど前、模型サークルの知人にあげました。引き換えにコムクラフト社の「あきつ丸」をいただきましたが、今考えると、ちょっと惜しいですね。
それから順に見てゆくと・・・。
310番は、ガルパンの西住みほです。
続けて見てゆくと・・・。
412番は、ガルパンの秋山優花里です。
さらに見てゆくと・・・。
434番は、ガルパンの武部沙織です。現時点で商品化されているガルパンキャラクターは三人までです。あとは五十鈴華、冷泉麻子、ですが、商品化決定のアナウンスがあったのみで、いまだに具体化されていません。
そして真ん中あたりを見てみますと・・・。
200番のぐま子とグッスマ星人です。同じのを私も持っています。独特の可愛らしさがあって良いです。ぐまー、と言いつつ、うどんを食べたくなります。
最新の商品が500番の桜ミクです。グッドスマイルカンパニーさんが倉吉市の西倉吉工業団地内に国内初の生産拠点となる「楽月工場」を設置し、最初の国産商品として送り出したものです。記念品的な存在であるせいか、造形表現のクォリティも高く、髪に表される桜の意匠などはほとんど蒔絵に近い出来栄えです。日本のフィギュア造形技術が世界一であることを改めて示してくれます。
日本美術工芸史を専攻し、仏教美術を中心とした造形美術の歴史を研究した私から見ると、日本のフィギュアは既に立派な造形芸術の域に達しつつあると思います。かつては仏像や彫刻の立体化に進んだ技術を示して多くの名品を生んだ日本ですが、現在の創作系立体造形のジャンルにおいては、どう考えてもアニメフィギュア関連の作品が質量ともに他を引き離していると思います。間違いなく、世界に誇るべきコンテンツであって、近い将来には日本美術史の一ページに加わると思います。冗談でなく、本気でそう考えています。
とにかく、500体の展示は、博物館の特別展示の展示数としては桁外れです。普通の特別展示の出品数平均が多くて200点前後であることを考えますと、ねんどろいどだけで500体、他のフィギュアも合わせると600体を超えるというのは凄いと思います。
展示が展示だけに、見学客も若い人が圧倒的に多かったです。女性が多く、ねんどろいどが女の子にも人気があることが改めてうかがえました。男性も10代や20代が大半でした。博物館に若者が集まってくるという事自体が珍しいので、こういう展覧会は今後も当たるだろう、と感じました。
ねんどろいど以外のフィギュア商品も、100点ほどが出品されていました。上図はマックスファクトリーさんの「魔法少女まどか☆マギカ」のキャラクター群です。
パネル展示で興味深かったのは、上図の「楽月工場」の解説コーナーでした。工場の精密な模型も展示され、商品の生産ラインの様子が分かるようになっていたのも面白かったです。地元住民にアピールし周知を図る、といった目的も付与されているのでしょう。
グッドスマイルカンパニーさんは、世界的に有名な日本のフィギュアメーカーですので、その工場誘致に成功したことは、倉吉市にとっても非常に有意義な出来事だった筈です。市を挙げて歓迎したほか、県も全面的に後押ししたと聞いています。
面白かったのは、上図のねんどろいどの着色作業手順を、桜ミクの実際のパーツごとに示してある展示パネルでした。ねんどろいどって、こんなに細かくパーツ割りされているのか、と驚きました。一つ一つ手作業で行われる部分も少なくないそうです。造形のクオリティの高さは、造形職人たちの高い技術のなせるわざなのですね。
500番の桜ミクのパッケージサンプルです。何人かの女性見学客が「これ売ってないんですか?」と係員に問い合わせているのが聞こえました。会場内の販売ブースでも完売だったようで、既に入手が困難になってしまっているようです。
ねんどろいどの初音ミクはいずれのバージョンでもすぐに売り切れるほどに人気があるそうなのですが、500番の桜ミクは国内生産第一号ということもあり、蒔絵のような仕上げの美しさなどもあって、発売前から話題沸騰、予約殺到だったということです。
それよりも驚いたのは、付け替えパーツの中に団子が入っていて、どう見ても倉吉特産の「打吹団子」なのでした。倉吉の「楽月工場」の生産第一号ですから、地元倉吉のアピールもきっちりやってくれるわけですね。やるじゃないか、グッドスマイルカンパニーさん。
会場出口にも「ぐま子」のパネルがありました。これマジで欲しいんですけど・・・。ぐまー。
会場内の販売ブースで購入してきた、倉吉土産の「打吹公園だんご」です。昔からある特産物の一つで、私が見てきた限りでは、日本で一番小さな団子じゃないかと思います。鳥取に居た頃にも何度か倉吉で買いましたが、今回は博覧会記念の特別包装になっていて、桜ミクが打吹団子を手にする姿がデザインされています。商品パッケージの付け替えパーツの中に入っている打吹団子と皿をセットした姿ですね・・・。
で、打吹公園の桜を背景にして撮ってみました。いい絵になりました。
ぼくも見てみたいです。
このご時勢、国内工場を作ったメーカーは応援したくなります。
先日、地元の友達が西住殿のねんどろいどをくれまして、
我が家は「サクラ大戦」の真宮寺さくらと2体になりました。
「ヤマノススメ」の雪村あおいも揃えたくなります。
博物館の展示なので、ねんどろいどの歴史という形でビジュアルに演出し、そのなかで重要だった商品は何番か、それがどういう役割を果たしたか、というような切り口で紹介されていました。ホビーショーなどでの展示とは異なり、問題提起と新視点紹介のメッセージを込めた展示なので、見応えもありましたし、考えさせられる事も多くて有意義でした。
今後のねんどろいど商品はだいたい倉吉の楽月工場で生産されるそうなので、それからの歴史というものもこれから形作られていくわけですね。
次は1000体になった時点でまた博覧会をやるんじゃないか、とか噂されているようですが・・・。