シャボン玉の詩

残り少ない道のりになりましたが、
気持ちをこめて!
ありのままを!

老人と犬(2)(彰ノ介日記)

2016-10-16 08:59:32 | Weblog

――しかしあの頃はもっとよかったな。
田んぼがね、あの向うのビルの先の方までいっぱいに広がっていた。
あちらこちらに水引の為の小川が流れていて、その川の中には色んな生き物が居たね。
メダカ、フナ、ドジョウ、シジミ、カニ、エビ、ナマズやウナギもいた。
ウナギが田んぼの中に入り込んでいて、子供たち、大騒ぎして追っかけたものだ。
川遊びは子供たちの最高の遊び場、あの頃の友の顔が浮かんでくるね。
春先の朝の味噌汁の具はすぐそこで取ったセリ、セリの匂いはおふくろの味だよ。
稲が穂先を垂れる頃、皆でイナゴを取りに行ってね、あの佃煮もおふくろの味。
次から次へとあの頃のことが思い出されてくる。――懐かしい。
あの頃はね、自然と人間が一緒に生活して、生きて、そう、皆仲良しだったよ。

変わったね、今じゃパソコン、スマホ、ゲーム、あの頃のものは殆ど消えちまった。
便利になって、美味いもの食えて、何処へでも旅出来て、それは嬉しいことだが、
これで本当によいのかな。幸せって計量できないものね。
ただね、僕らみたいな老人は最早居場所がなくなって来たという事よ。
実に寂しい。—―

おっ、もうこんな時間になっちゃった。
何だか雲の動きが怪しいぞ、一雨来るかもしれないな、引き返そう。
老人は転ばぬよう細心の注意を払いながら麓に向かった。



 

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