横浜地球物理学研究所

YOKOHAMA GEOPHYSICS RESEARCH LABORATORY
地震予知・地震予測の検証など

神奈川県西部地震(小田原地震)に備えよ

2013年08月01日 | 地球物理学一般
前回の記事で、神奈川県西部、山梨県東部の地震活動に少しだけ触れたので、補足しておきます。

神奈川県に住む者としていま最も警戒しているのは、小田原地震です。言うまでもなく、電磁波などの薄弱な根拠で予知を申し上げているわけではありません。「また確実に起こる」と世間で言われている東海地震などの歴史地震学的な意味で言えば、小田原地震も「また確実に起こる」地震なのです。

神奈川県を中心に被害が想定されるということもありますが、東海・東南海地震や首都直下地震、さらには富士山噴火などに比べると、全国的に話題になっていないという意味でも、警鐘を鳴らしておきたい地震です。


■小田原地震の歴史

歴史的に日本の中心は京都など西方であったこと、小田原付近を支配していた北条氏が滅ぼされてしまったこと、色々理由があって、古い記録があまりない地震です。

ですが、記録が明確に残るようになった江戸時代以降、73年±1年という規則的な周期で、震度6や7、マグニチュードで言えば7前後の直下地震が、小田原付近で繰り返し起こっていることが分かっています。そのたび、城は崩れ、街が壊滅し、近隣の漁村が津波に襲われ、多くの犠牲者を出してきたのです。

1633年 寛永小田原地震 M7.1小田原で震度7?
1703年 元禄関東地震 M8.2 箱根で山崩れ、鎌倉で津波
1782年 天明小田原地震 M7.0 箱根、富士山で山崩れ
1853年 嘉永小田原地震 M6.7 山崩れ多数
1912年 大正関東地震 M7.9 関東大震災、小田原で震度7


■小田原地震のメカニズム

それぞれ微妙に震源や機構が違い、特に大正関東地震は複数要因が絡んでいると考えられていますので、ひとくくりにできない面もあります。ですが、石橋克彦氏(神戸大学名誉教授)らの研究により、これら小田原地震のメカニズムはおおよそ次のように考えられています。

フィリピン海プレートが北上し、相模トラフで関東の地下にもぐり込んでいます。ところが、小田原から西のあたりは、ユーラシアプレートととオホーツクプレートの境界でもあるため抑え込みが弱く、地殻塊がもぐり込めずに、そこで留まってしまいます。その塊は、もぐり込むプレートから引きちぎられ、断裂が生じます。なお、この「もぐり込めない地殻塊」が、丹沢山地であり伊豆半島と考えられています。

つまり、小田原直下には南北方向に断裂があって、プレートの圧力によりこの断裂面で周期的にアスペリティがずれ、直下地震が起こるというわけです。もちろん、この辺りの運動は複雑なので諸説あると思いますが、プレート構造や震源分布から、現在のところこの推定は支持されるべきと思っています。

なお、このダイナミクスに付随して起こると考えられている地震が、前回の記事で触れた山梨県東部地震(道志村地下深くで、もぐり込みに成功したプレートの境界で起こる)や、伊豆半島東方沖地震(上述した南北方向の断裂部のズレで起こる)だと考えられます。ただし、これらの頻発地震については、マグマの動きによるとする説もあります。


■次の小田原地震と被害想定

いちばん最近の小田原地震は、関東大震災を起こした大正関東地震(M7.9)です。周期的に起こっている地震のなかでもかなり規模が大きく、殆どのエネルギーが解放されたとみられます。そのため、次の地震は73年後よりも遅れるだろうと思われていました。実際、90年近く発生していません。

全国的には注目度が低いのですが、小田原市や近隣の町村では「神奈川県西部地震」としてかなり警戒されています。何より怖いのは、地震直後の津波です。上述した南北方向の断裂は伊豆半島東沖の海底にあると考えられており、震源が相模湾内となる可能性が高く、その場合は地震後すぐに(北海道南西沖地震で奥尻島を襲った津波よりもっと早く)陸地に到達する可能性があります。

なお、小田原から浜岡原発(静岡県)までの距離は120kmほどだそうです。小田原地震は直下の断裂破壊型地震となりますので、被害は比較的局所に集中すると考えられますし、震源は海底なら伊豆半島の東側となると思いますので、浜岡原発の津波被害もあまり大きくないと予想します。ただし、駿河トラフでの地震を誘発する可能性などもあり、油断はもちろん禁物です。


■小田原地震に備えよ

我々も、当該地域を震源とする地震活動を注意深く見守り、何らかの徴候がないか、気を配っていきたいと考えます。

湘南海岸、熱海、伊東といった観光地が、津波被害の想定域となります。住民の方のみならず、観光で訪れる皆様も、地震発生時の避難経路(特に津波はすぐに来る可能性がある)をシミュレーションやイメージトレーニングしておくなど、万全の備えをお願いしたいです。
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1 コメント

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「地震に備えよ!」Re. GPSによる計測等 (石坂 信)
2014-05-05 05:49:23
「GPSによる計測」とか云うお題ですが、毎年10月初旬に東京ビッグサイトで「危機管理産業展」と云うイベントが行われるのですが、「災害への備え」の参考にかなりなると思います。ネットで過去のイベントを探してみるのも良いかと思いますが…。(セミナー等も行われます。)

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