地形学とGIS / Geomorphology & GIS

ある研究者の活動と思考の記録

Welcome to the Future

2009-10-03 | 音楽
僕は国際学会の発表に,しばしばジョークを入れる.外国人のジョークは,スライドの合間に一言のような形が普通だが,僕は専用のスライドを使ったりする.笑いがとれると嬉しくなる.もちろん発表は科学を伝えるものであるが,パフォーマンスという面もある.実際,発表をしている時に,かつて文化祭でギターを弾いた時に似ていると感じたことがある.

先日,台湾の学会から戻る飛行機の中で,アメリカのカントリー歌手であるブラッド・ペイズリー(Brad Paisley)の"Then"を聴いた.6月にビルボードのカントリー・チャートで1位になったバラードで,アメリカでは結婚式の定番になり始めている.ベイズリーが次に出したシングル"Welcome to the Future"は,"Then"ほどは売れていないが,日本人が聴くべき曲である.

まず,歌詞にパックマンが登場する.これは世界のゲームの概念を変えた,日本が誇るべき遺産である.ペイズリーは「子供の時にはゲームセンターのパックマンが自宅にあればと夢見ていたが,今は自分の携帯に入っている」と歌っている.

次に,ペイズリーの祖父が第二次大戦の時に,日本兵と戦うためにフィリピンに駐留していた話が出てくる.続いてペイズリーは「今朝,東京の友達とビデオ・チャットをした」と歌っている.

さらに,この曲のビデオ・クリップには,熊本のカントリー歌手であるチャーリー永谷,熊本城の前に立つ子供,高校生による和太鼓の演奏,動くアシモ,東京の夜の風景などが出てくる.チャーリー永谷は,一部をペイズリーの替わりに歌うほどフィーチャーされていて,見事な友情の瞬間になっている.

曲の後半では,人種差別の解消への願いが歌われる.7月には,ペイズリーがホワイトハウスに招かれ,この曲をオバマ大統領の前で歌った.演奏の前のスピーチでは,「世界は予想を超えて良くなる」という歌の主旨を,オバマ大統領の誕生と結びつけた.演奏の終盤で,大統領とペイズリーが涙ぐんでいたのが印象的である.

ところで,国際的な学術コミュニティーは,欧米の白人を中心に動いていることが多く,他はよそ者というイメージが未だに残っていることがある.僕は,そのような古いイメージを壊す意外性を持ちたいと願ってきた.学会発表のジョークも,そのための一つの試みである.よって,"Welcome to the Future"に大いに勇気づけられた.

ペイズリーの日本での知名度は,カントリーのファンを除くと高いとはいえず,日本語のウィキペディアにも今は項目がない.上記のビデオ・クリップとホワイトハウスでの演奏は,YouTubeで視聴できる.日本と交流があり,素晴らしい思想を語るアメリカのアーチストとして,広く認知されてほしいと思う.

追記:"Welcome to the Future"は,ブライアン・アダムスの名曲"Summer of '69"に少し似ています.

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2 コメント

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RE:Welcome to the Future (田代 博)
2009-10-06 23:08:08
私は音楽分野は全くだめなのですが(^_^;)、UCLAに留学している卒業生に紹介しました。
こんな返事をくれました。
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Woody Guthrieをよく聴きます。1948年にカリフォルニアからメキシコに追放され不法労働者運んでいが飛行機が墜落した事故を歌った“Deportee”とか。

http://www.youtube.com/watch?v=q_2F4OrHeak

これはBob DylanとJoan Baezの演奏です
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アメリカの授業(農業)の際に使えますね。

Welcome to the Past (OGU)
2009-10-07 13:23:38
田代先生,再びどうもです.僕は今,イタリアにおります.

卒業生さん,UCLAに留学中ということは20代でしょうか? それでWoody Guthrieが最初に出てくるとは,すごいですね.僕も古い音楽が好きではありますが...

地理教育に使える洋楽,他にもいろいろあると思います.僕の知人はアメリカ地理を教える際に,地名がたくさん出てくる"Route 66"を使っていました.

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