防災ブログ Let's Design with Nature

北風より太陽 ソフトなブログを目指します。

実力と実績

2009年08月31日 | 雑感
選挙は下馬評どおり、民主党の圧勝に終わりました。自民党は、”政権を担った経験がない、実績のない民主党にできるものか”のようなネガティブ・キャンペーンを張っていましたが、結果からみれば空振りに終わったのでしょうね。

国民の皆様の期待に、、、という常套句がありますが、期待しているのは実績ではなくて実力であるはずです。公共事業調達にあたっては"実績重視”という言葉が、あたかも”実力重視”のように使われることがありますが、事実上”過去の”実績であるがゆえに、目新しいものが永遠に参入できないというスパイラルに陥っています。

”脱官僚”というキャッチフレーズもありましたが、”哲学なき前例至上主義”を覆すということでしょう。基準書に定められた調査方法でないと防災計画として認めない。基準書に従ってさえいえれば災害になっても"想定外”で逃げる。。。質的な変革ができるでしょうか。

無駄の省き方

2009年08月30日 | 維持管理の時代

今日は衆議院選挙の投票日です。私は仕事のため期日前投票をしておきました。全党のマニフェストに掲げられているのは、無駄をなくすということです。

しかし、その意図はハコモノであるとか、新幹線・空港など、まずは形から議論が進んでいて、それがなぜ無駄なのか、無駄でない公共事業とはなんなのか、ということはあまり議論されません。

私に言わせれば、無駄を省くというのは現場の実情に応じた投資をすることなんです。特に防災にあたっては、既往最大実績であるとか100年や200年に一度であるとか、”大は小を兼ねる”発想で設計されていることが多い。しかし、その考え方をすべての現場にあてはめるから無駄が生じるのです。


砂防の終局の目的は緑化にあり

2009年08月29日 | Design with Nature
今日は足尾で現場でした。雲行きが怪しかったのですが、現場が終わるまでに天気は持つだろうと思って合羽を持っていきませんでした。そうしたら、現場から3kmほどの帰路につこうとしたとたん、大粒の雨が降り出しました。

ああ、こりゃたまらんと思って、出来るだけ森林の下を歩こうと思い斜面の裾を歩いていましたが、以外とぬれませんでした。

広葉樹林偉大なり!!

「砂防とは何か?ということについて本質的に理解している人は決して多くない!」 地球は「植生連続」と「浸食輪廻」という二つの大きな営力の釣り合いで保たれている。人間の営みは「浸食営力」にあたる。「砂防」とはその終局において「緑化」を目的とするものである。」 「緑化と言っても、草でも木でも何でも良いから見たところの緑化になればよい、という意味ではない。植生連続における極盛相climax phase、すなわち理想の森林を目指すものだ

なにかの文献で読みましたが、まさにそのとおりと納得しながら歩を進めたのでした。

鳥取県の盛土造成地盤調査

2009年08月28日 | 盛土が安定すれば安心
地すべり学会の話をもうひとつ。
飲み会で、太田さんが「重鎮ばかり質問に立ってたらだめだ、若い人がやらないと」といわれたからではありませんが、鳥取県の宅地盛土地盤の調査結果を報告していた方に質問をぶつけて見ました。

私は太田さんや釜井先生と付き合いがあるので、盛土を滑らせる主因が側部抵抗力にあるため、二次元安定解析と三次元安定解析では違った答えが出るのではないか、そういう意味では斜面を薄く盛ったところと沢筋を厚く盛ったところひとつの二次元側線で解析するのは、今後の対策にも影響をあたえるのではないか、といった質問をぶつけてみました。

発表された方に、それはそうなんだけどガイドラインが。。。という表情を読み取ったのですが気のせいでしょうか。

地すべりの活動から直下型地震の履歴を読む

2009年08月27日 | Design with Nature
 今回の地すべり学会でとても興味深い発表がありました。5年前の新潟県中越地震において大規模な天然ダムを形成した東竹沢地すべりが、2,900年前に同じような地すべり→天然ダムを形成したと言うものです。産業総合研究所地質調査所の行った活断層のトレンチ調査とも良く整合するということでした。
 
 ということは、東北日本の巨大地すべりは、内陸直下型地震で形成されたという可能性がますます高くなります。そのメカニズムは、粗っぽくて間隙に水を含んでいる砂層が液状化し、だるま落としのごとく崩落するといったところでしょうか。
 
 最近ではIT技術ばやりで、GPSや合成開口レーダーなどの測地技術で相対的に地震のエネルギーを溜め込んでいるところを抽出しようという論調ですが、このようなまさに地に足をつけた研究も大変重要だと思います。また、東北日本だと、地すべりという形で順を追って年代を計ることができるのでしょう。しかし、今懸念されている東海・東南海地震では内陸直下型地震に比べ頻度が高いことで証拠となる物質が砕け散り流れ去ってしまうので、山の斜面から地震の履歴を読みとこくことは難しいかも知れません。

地すべり学会にて

2009年08月26日 | 雑感
今日は新潟大学で地すべり学会に参加、そのあとの飲み会を2次会まで付き合ったらこの時間です。しかし、1次会からかなり出来上がってしまいました。よって、少し、戯言を言います。

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1次会で初対面の女性に”ブログ楽しみに読んでます。誠実そうなブログで、お気に入りに登録しました”。とのこと。いやあ、うれしいですねえ。女性に”誠実””お気に入り”と言われたのは、妻以来ですよ(もちろんお気に入りの意味が違いますよ)。そして、その方もとても誠実な技術者で、かつ現場を大事にする良心的な方でした。類が友を呼ぶといいますので、誠実な方と出会ったのは、ブログやっててよかったことです。
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ただ、学会の研究発表全体のムードはちょっと新鮮味に欠けるところがあります。質問者は決まって座長か重鎮さん。そして、まだ一点豪華主義で、市民目線がない。私の得意分野で言えば、現地調査に行く前の予習にレーザー計測微地形判読図が有効である、といった発表があったこと。このレーザー計測地形図作っている間に、判読も現場も終わらせて地形分類図、地質図が描けます(”書く”ではないですよ)と言いかけたがやめました。

、、、、やっぱり酔ってるなあ

林野も砂防も、、、技術はどこへ行った、、、、

2009年08月25日 | Design with Nature
人様のブログからの引用で恐縮ですが、核心を突いているので紹介します。

白井裕子:『森林の崩壊―国土をめぐる負の連鎖―
http://www.shinchosha.co.jp/book/610296/

何事でもそうだが、自分の思い通りにビジョンを描き、そのマニュアルに従ってもらい、一から十までコントロールするより、それぞれの個性を尊重しその力をいかんなく発揮し、自発的に伸びる方がよく成長し、持続性が高い。そして後者の仕組みを考える方がはるかに難しい。国から地方にお金が配布されるほど、個性や発意自立性が薄れ、競争力が衰え、地域社会が衰弱していく理由の断片がここにも見えてくる。片田舎には不釣合いな地元民も驚くような箱物が出現するのも、このような仕組みのお陰であろう。どこも似たような施設が建ち、立派な道路が延び、どこへ行っても同じような風景が広がり、そしてそこから人がいなくなる。 

思い通りのビジョンを描きとありますが(まさにDesign with Nature)、それを否定され続けた事があります。いわく、再現性がないのはサイエンスではない、誰がやっても同じ答えが出るように定式化を目指すのが技術だ、、、

与えたら考えない、飢えるから考える。ただ、飢えるのもちょっとしんどいので、知恵の林を植えましょう。

ブックマーク追加 - beachmollusc ひむかのハマグリさん

2009年08月24日 | Design with Nature

新しいブックマークを追加しました。beachmollusc ひむかのハマグリさんという方です。海の無脊椎動物(貝、ヒトデ、サンゴ、クラゲなど)が専門で、自称の学位はDoctor of Underwater Marine Biology (DUMB:バカセ)とのこと。

http://beachmollu.exblog.jp/

ブログの内容はとても誠実で、示唆に富んでいて、しかも写真が美しい。海の音、風の音に心が表れるブログです。私は山の防災をメインに仕事をしているので、海洋についての知識が疎く、勉強になります。これぞ、Design with Nature です


そこで、キャッチコピーを、知恵の海洋大循環。清風洗心、黒潮とともに

とつけてみました。納得していただけるとありがたいのですが。


投票に行ってきました

2009年08月23日 | Design with Nature
今月の30日は衆議院選挙の投票日ですが、急遽現場が入ることになりそうなので、今日期日前投票を済ませてきました。専門技術者が如何なく力を発揮する、高等教育(特に自然科学系の大学、工専)の授業料を安くし、技術立国を目指す、自然災害は経済を低迷させる大きな要因となるため防災産業の育成に取り組む、、、、などといったことを大々的にアピールする政党・候補者がいれば、そこに投票しやかったのですが、そんなところはなかった(まあ、ないか)ので、本命のないなかの投票でした。

そんななか、農業に関しては自民も民主もだめだというニュース記事がありました。

日本の農業ダメになる 自・民に失望の声
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090822-00000553-san-pol

豊能町の兼業農家の男性(58)は、「戸別所得補償をするにしても、MA米の廃止が前提だ」と注文を付ける。自民党は補助金を用意して農家の大規模化を促し、収益性の向上を図るというが、この男性は「山間部では田畑が獣に荒らされて“自然減反”が進んでいる。現場を知らない人らが施策を決めている典型例」と手厳しい。

農業や林業は、Design with Natureの根幹です。”環境”はCO2だけではないのです。

佐用町の豪雨と災害廃棄物

2009年08月22日 | 災害の記憶と想像力
麻生総裁が佐用町の被災地の視察に入るとのニュースを読みました。牛山先生のホームページによれば、1976年台風17号以来の災害だったようです。

http://disaster-i.net/disaster/20090809/d-table2.html

今回の災害でクローズアップされたのは、災害廃棄物です。これまで地震や火山による災害廃棄物については、私たちも研究を重ねていたところです。

http://www.kankyo-c.com/waste.html

廃棄物を中長期にわたり放置すると、有害物質や地下水の汚染など、環境地質学的な問題が生じることを指摘したものです。今回の佐用町は水害です。牛山先生のHPの災害履歴をみても、1976年の災害時には床下・床上浸水が多かったのですが、今回の災害は全半壊の家屋が突出しています。さらに、山地荒廃による流木も見過ごせない問題でしょう。

場当たり的復旧のための公共事業という、単純な発想では意味を持たないということです。

花粉症も地球温暖化も「ムダな抵抗はしない」が正しい

2009年08月21日 | Design with Nature
日経ビジネスオンラインに興味深い記事がありました。

花粉症も地球温暖化も「ムダな抵抗はしない」が正しい http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20090818/202779/

科学的な計測で得たデータを根拠に環境問題に取り組む姿勢が当たり前とされていますが、その発想に欠けているのは何だと思いますか?

  やはり“流れを止めない”という観点でしょう。現在、二酸化炭素の増大が問題になっていますが、二酸化炭素そのものは悪者ではありません。炭素の大きな循環の一形態に過ぎないからです。 人間にとって二酸化炭素の使い道はあまりないのですが、いつも一定量の平衡状態が保たれているのは、植物の光合成が行われているからです。
 いまの問題は、炭素の循環の一形態が二酸化炭素という状態に留まり過ぎていることです。ただ、その状態が温暖化をもたらしているかどうかわかりません。もたらしていないかもしれない。
 でも、確実なのは、循環の滞りが動的平衡に歪みをもたらしていることです。その状態が続くと、とんでもない事態に陥るのは間違いないでしょう。 環境問題は、流れを止めないという観点に立つとシンプルに見えてきます。インプットを減らすか、アウトプットを増やすしかない。インプットを減らすには、できるだけ化石燃料を燃やさず、代替エネルギーを求めて使う。
 アウトプットを増やすには、光合成を応援するしかありません。木を植えることもひとつですが、海洋中の微生物が二酸化炭素を有機物に変える作用もあるので、海洋の保全を考えることも大切です。

余震観測

2009年08月20日 | 災害の記憶と想像力
『内陸地震はなぜ起こるのか』という本の最後の方に、2004年新潟県中越地震と2007年中越沖地震が、時間的にも空間的にも非常に近い間隔で発生しとことに注目されていました。このようなことは、明確なこたえが出ていないというのが現実のようです。1995年兵庫県南部地震以来、不気味に増加する内陸地震、そしてこの間の駿河湾の地震、、来るべきときが近づいているように思います。

伝統工法を継承する技術者、地場の建設・建築産業の育成

2009年08月19日 | Design with Nature
今日のケンプラッツの記事に、自民党と民主党とのマニフェストにおける住宅政策の比較表が掲載されていました。

http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/building/news/20090805/534465/

これを見てみると、どうも民主党の方が意欲的です。記事でも民主党のマニフェストについて、以下のようにポイントを整理していました。

1.住宅建設にかかわる資格・許認可の整理・簡素化、関連組織の整理・縮小 
2.より細かな住宅政策を推進するため、必要な予算を地方自治体に一括交付 
3.建築基準法を単体規制に特化すると同時に、地方分権を前提として都市計画法を「まちづくり法」に再編
4.情報公開と市民参加を徹底した地域主権型のまちづくりのシステムを構築

さて、私が注目したのは、まう比較表も国産木材振興政策において、民主党案で次のような一節があったことです。
(木材住宅産業による)伝統工法を継承する技術者、地場の建設・建築産業の育成

さあ、ここで技術者の育成、産業の育成ときましたよ。住宅建設に関連する資格・許認可の整理・簡素化ともあります。決められたことをそのとおりにこなすだけが技術ではないことをどこまで認識できているか、そこに真価があるんですが、果たして、、、、

プロによる地盤調査 - こんなにも”差”があります -

2009年08月18日 | 技術動向
地盤工学会のリスクマネージメントセッションに参加しておりました。大きな話題のひとつとして、地盤技術者の存在感が薄い、窓口を増やすべきだ、といった意見が出ました。地質調査業協会でも取り組んでいるというので、ちょっとホームページをのぞいてみました。

こんなにも差があります!プロによる地盤調査
http://www.kanto-geo.or.jp/html/juutaku/pro.html

正直いってがっかりです。五十歩百歩の意味の説明かと思ってしまいました。SWSより標準貫入試験の方が、より高度です、、とそんなことをアピールしてもほとんどメリットがありません。そして、
費用と期間はかかるものの、精度が高く深い所までの調査ができます。とのこと

正直いって相談する一般市民の方は困り果てています。金がかかちゃあだめなんです。
知恵とハンマーとクリコン その程度の武器で勝負をしなければ。。。

勘所という言葉の意味をかみしめた方がよいと思います

学会発表のカテゴリー - 市民向けはまだまだ -

2009年08月17日 | 技術動向
明日は地盤工学会に参加し、「地盤工学とリスクマネージメント」というセッションで話題を提供します。斜面と市民生活とのかかわりについて述べます。

一般市民にとって、斜面は決して関心の薄い問題ではありません。しかし、わたしたちの存在感がとても薄いのが現実です。そのあたりをどのように解決し、技術者冥利に尽きる時代を引き寄せるか、話しあいます。

来週は地すべり学会ですが、同じようなテーマで発表します。しかし、カテゴリーは『地すべり発生機構』です。昨年は一般調査、リモートセンシングだったし、まだまだ学会のなかにも、市民目線が根付いていないことを痛感させられます。