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【論考】幼児教育・保育の現場からみた「こども保険」の問題点と改革の方向性

2017-06-13 | 論考

 

     

 
【論考】幼児教育・保育の現場からみた「こども保険」の問題点と改革の方向性

 自民党内で3月にまとめられた「こども保険」構想については、財源確保の方法論に議論が集中し、それにより実現が目指されている幼児教育無償化のそもそもの是非や、無償化がもたらす影響などについての検討が不十分である。本稿では、こうした重要でありながら抜け落ちている論点について考察する。
 
 「こども保険」は幼児教育無償化を前面に出すが、幼児教育・保育の現場から見れば、より優先度の高い政策課題が多くある。第一に、保育所の待機児童解消である。国は 2017 年度末までに待機児童をゼロにするという目標を、2020 年度末までに 3年先送りしたが、子どもの貧困対策、少子化対策、女性の活躍推進を掲げる政府としては、最優先に取り組むべき課題のはずである。
 
 第二に、幼児教育・保育の質の確保である。保育所が急増するなか、経験の浅い保育士の増加や自治体の監査が手薄になるなど、質の低下が懸念されており、質確保の方策を早急に検討する必要がある。
 
 第三に、保育者の処遇改善である。保育の量および質を確保するためには、保育者の賃金引上げに加え、業務負担の軽減、研修時間の確保、保育の長時間化に歯止めをかけるための働き方改革、ICTの積極的活用など、保育者の処遇の在り方を総合的に見直す必要がある。
 
 幼児教育無償化は、これらと比較して政策としての優先度が低いだけでなく、実現した場合にはデメリットも予想される。一つは、幼稚園・保育所サービスの需給が歪みかねないことである。「こども保険」が実現すれば、家庭の保育料負担がなくなる。すると、保育事業者の側は追加的な有料サービスを提供しやすい環境となり、親の側はより長時間の保育を希望する可能性が考えられる。その結果、待機児童問題、保育士不足、保育の質の低下などは、むしろ深刻化することが懸念される。
 
   もう一つは、保育の提供体制に改革が求められているにもかかわらず、それが遅れかねないことである。今後は子どもの数の一段の減少と女性の就労率の上昇により、とりわけ幼稚園需要の大幅な減少が必至である。幼稚園の認定こども園への移行促進、幼稚園・保育所を合わせた統廃合など、提供体制の大胆な改革が求められている。そうしたなか、幼児教育無償化が、幼稚園・保育所の救済補助金として機能してしまえば、本来なされるべき改革が停滞しかねない。........
 
 
  

    

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