男には
戦わなければならない時と
守らなければならない時がある
どんなに相手が怖くても
誇りを傷つけられた時
臆病な心に鞭を打ち
戦いに向かうだろう…
それともう1つ
一握りの
大切なものを守るため
身を盾にせねばならない
そんな時が必ずくるだろう
そこで足踏みするようでは
明日の飯が
旨いと感じられないだろう…
麻里子は私の心を
たやすく動かした
何かに流されるような人生を
送ってきたワケじゃない
しかし
直感で感じるモノがあった
この人は
とてつもない悲しみを背負っている
だからこそ
言葉一つ一つに重みがあり
人を動かす力がある
見てみたい…
今まで私の心を動かせたのは
すべて荒ぶる男だった
だが…間違いない
目の前にいる女性…麻里子さんは
女の皮を被った…強者
力ある者を優しくなだめてしまう
この人に認めてもらいたいと
私の心が望んでしまった
やってやるさ…
1年半もくすぶっていた炎が
再び燃え上がる瞬間だった
Yesと答えた私に
麻里子さんは店のカードキーを渡し
大男を連れて事務所へと帰っていった
提示された条件は
必要な予算は出来る限り用意する
開店の期限は定めない
それと…
3ヶ月目にして
赤字が出なければ成功とみなす
素人の私から見ても
かなり緩い条件だったが
気になる事が2つ…
内装は現状を維持すること
2階のエントランスから左手に
Barカウンターがあり
右手に下る階段
1階部分にはビップルームとして
カラオケを配置した
10人規模が騒げる個室が2個
2階のメインフロアの中心に
大きなグランドピアノがあり
バンド生演奏も可能
それを取り囲むように
4人掛けのボックス席が12個
まさに
目が狂いそうな豪華な店内
これだけの物を与えられて
失敗するワケにはいかない
それともう1つ
麻里子さんからこの店の歴史を聞いて
不思議に思う部分があった
5年前から6人も経営者が代わり
長くても1年しかもたなかった事実
こんなテナントに手を出す業者だ
それなりに自信があったハズだろ
何故だ…?腑に落ちない
質素な遊びが主流になった
現代の荒波にのまれてしまったのか?
まさか…あり得ない
6人もの猛者を葬り去った
決定的な原因が必ずある
まずはそこを調べないと…
規模の大きさに
いつも以上に慎重になっていた
店内を歩き
イメージを膨らませる
客の立場に立って
ソファーに腰掛け想像する
ありとあらゆる角度から
店が繁盛するイメージを思い浮かべた
しかし…
どれもがピンとこない
いや…むしろ失敗するだろう
決定的に足りない何か?
新しいが古き良き文化というか
私が思いつくモノは
誰かがどこかで行っている
それでは勝てない
考えても考えても
いいアイデアなんて浮かばなかった
夕方に入店してから
ふと気が付くと深夜の3時を過ぎていた
とにかく今日は帰ろう
支度を済ませ店を出た
その時だった
路上に力無くへたり込む
ある男の姿が目に入った
あれは…大河か?
それは半年前に知り合った
大河という若手ホストだった
『どうしたんだ!…』
うなだれ生気を無くしていた大河は
私の問いかけに反応しない
肩を揺さぶり正気に戻そうとした
ん…?
全身ずぶ濡れじゃないか…
大河の体から甘い匂いがする
これは…シャンパンか!
『お前…なにされた
しっかりしろ大河』
「須藤さん…
すみません…俺…
もうダメです
これ以上…頑張れない」
コイツが弱音を吐かない男なのは
私がよく知っている
努力して…我慢して…
走り続けた人間が
それでも壁を超えられなかった時
こんな顔になるもんだ
『またヤラれたのか!』
「・・・・・・・・・」
『ちゃんと答えろ!大河!』
なにも答えようとしない
そんな大河を見て
私には察するところがあった
最近の若者にしては
真面目で根性があった大河
はじめての出会いは半年前
沢村達と新宿で酒を飲んでいた時
路上で1人
キャッチに勤しむ若いホストがいた
日曜日なのに珍しく
仕事熱心なホストだと
感心していたのだが
我々の宴が終わってもまだ
大河は1人
女性に声をかけ続けていた
やるじゃないかあの若者…
我武者羅で直向き
自分が忘れかけていた大事なものを
大河の姿に照らし合わせていた
明らかに新人ホストだと
声のかけ方で見抜いた私は
大河に歩み寄り
1万円を渡し
『もし女が立ち止ってくれたら
これで旨いもんでもご馳走してやれ』
そう言って立ち去ったのが
最初の出会いだった
それから数日後
歌舞伎町を歩いていると
大河に呼び止められ
あの後、キャッチに成功して
おいしいご飯が食べられましたと
キッチリ礼を言ってきた大河が
なんだか可愛く思えて
すれ違うたびに
飯を一緒に食べたもんだ
その時の会話の中で
大河が仕事を頑張る理由を知った
実家が農家で
自分は長男で跡取りであること
その前に一度だけ
憧れの東京で勝負がしたいと
父親に相談したところ
親父さんが1着のスーツを仕立て
笑顔で東京に送り出してくれた
親心を理解していた大河は
1年だけ…と期限を決めて
夢だったホストになった… 続く
戦わなければならない時と
守らなければならない時がある
どんなに相手が怖くても
誇りを傷つけられた時
臆病な心に鞭を打ち
戦いに向かうだろう…
それともう1つ
一握りの
大切なものを守るため
身を盾にせねばならない
そんな時が必ずくるだろう
そこで足踏みするようでは
明日の飯が
旨いと感じられないだろう…
麻里子は私の心を
たやすく動かした
何かに流されるような人生を
送ってきたワケじゃない
しかし
直感で感じるモノがあった
この人は
とてつもない悲しみを背負っている
だからこそ
言葉一つ一つに重みがあり
人を動かす力がある
見てみたい…
今まで私の心を動かせたのは
すべて荒ぶる男だった
だが…間違いない
目の前にいる女性…麻里子さんは
女の皮を被った…強者
力ある者を優しくなだめてしまう
この人に認めてもらいたいと
私の心が望んでしまった
やってやるさ…
1年半もくすぶっていた炎が
再び燃え上がる瞬間だった
Yesと答えた私に
麻里子さんは店のカードキーを渡し
大男を連れて事務所へと帰っていった
提示された条件は
必要な予算は出来る限り用意する
開店の期限は定めない
それと…
3ヶ月目にして
赤字が出なければ成功とみなす
素人の私から見ても
かなり緩い条件だったが
気になる事が2つ…
内装は現状を維持すること
2階のエントランスから左手に
Barカウンターがあり
右手に下る階段
1階部分にはビップルームとして
カラオケを配置した
10人規模が騒げる個室が2個
2階のメインフロアの中心に
大きなグランドピアノがあり
バンド生演奏も可能
それを取り囲むように
4人掛けのボックス席が12個
まさに
目が狂いそうな豪華な店内
これだけの物を与えられて
失敗するワケにはいかない
それともう1つ
麻里子さんからこの店の歴史を聞いて
不思議に思う部分があった
5年前から6人も経営者が代わり
長くても1年しかもたなかった事実
こんなテナントに手を出す業者だ
それなりに自信があったハズだろ
何故だ…?腑に落ちない
質素な遊びが主流になった
現代の荒波にのまれてしまったのか?
まさか…あり得ない
6人もの猛者を葬り去った
決定的な原因が必ずある
まずはそこを調べないと…
規模の大きさに
いつも以上に慎重になっていた
店内を歩き
イメージを膨らませる
客の立場に立って
ソファーに腰掛け想像する
ありとあらゆる角度から
店が繁盛するイメージを思い浮かべた
しかし…
どれもがピンとこない
いや…むしろ失敗するだろう
決定的に足りない何か?
新しいが古き良き文化というか
私が思いつくモノは
誰かがどこかで行っている
それでは勝てない
考えても考えても
いいアイデアなんて浮かばなかった
夕方に入店してから
ふと気が付くと深夜の3時を過ぎていた
とにかく今日は帰ろう
支度を済ませ店を出た
その時だった
路上に力無くへたり込む
ある男の姿が目に入った
あれは…大河か?
それは半年前に知り合った
大河という若手ホストだった
『どうしたんだ!…』
うなだれ生気を無くしていた大河は
私の問いかけに反応しない
肩を揺さぶり正気に戻そうとした
ん…?
全身ずぶ濡れじゃないか…
大河の体から甘い匂いがする
これは…シャンパンか!
『お前…なにされた
しっかりしろ大河』
「須藤さん…
すみません…俺…
もうダメです
これ以上…頑張れない」
コイツが弱音を吐かない男なのは
私がよく知っている
努力して…我慢して…
走り続けた人間が
それでも壁を超えられなかった時
こんな顔になるもんだ
『またヤラれたのか!』
「・・・・・・・・・」
『ちゃんと答えろ!大河!』
なにも答えようとしない
そんな大河を見て
私には察するところがあった
最近の若者にしては
真面目で根性があった大河
はじめての出会いは半年前
沢村達と新宿で酒を飲んでいた時
路上で1人
キャッチに勤しむ若いホストがいた
日曜日なのに珍しく
仕事熱心なホストだと
感心していたのだが
我々の宴が終わってもまだ
大河は1人
女性に声をかけ続けていた
やるじゃないかあの若者…
我武者羅で直向き
自分が忘れかけていた大事なものを
大河の姿に照らし合わせていた
明らかに新人ホストだと
声のかけ方で見抜いた私は
大河に歩み寄り
1万円を渡し
『もし女が立ち止ってくれたら
これで旨いもんでもご馳走してやれ』
そう言って立ち去ったのが
最初の出会いだった
それから数日後
歌舞伎町を歩いていると
大河に呼び止められ
あの後、キャッチに成功して
おいしいご飯が食べられましたと
キッチリ礼を言ってきた大河が
なんだか可愛く思えて
すれ違うたびに
飯を一緒に食べたもんだ
その時の会話の中で
大河が仕事を頑張る理由を知った
実家が農家で
自分は長男で跡取りであること
その前に一度だけ
憧れの東京で勝負がしたいと
父親に相談したところ
親父さんが1着のスーツを仕立て
笑顔で東京に送り出してくれた
親心を理解していた大河は
1年だけ…と期限を決めて
夢だったホストになった… 続く
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