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大阪無償化裁判が結審、判決言い渡しは7月28日

2017-02-20 10:00:00 | (相)のブログ
 大阪朝鮮高級学校(以下、大阪朝高)を高校無償化制度の対象としないのは違法だとして、大阪朝鮮学園が国を相手に無償化申請に対する不作為の違法確認と無償化の義務づけを求めた訴訟(以下、大阪無償化裁判)の第16回口頭弁論が2月15日、大阪地方裁判所で開かれた。
 2013年1月の提訴から約4年の歳月を経て、この日、大阪無償化裁判は結審を迎えた。原告側から2月10日付で、被告側からも2月15日付でそれぞれ最終準備書面が提出された。
 原告側弁護団は最終弁論の場で、これまで行ってきた主張をまとめた最終準備書面の要旨を陳述した。
 まず、李承現弁護士が本件事案の概要について述べた。
 李弁護士は、高校無償化制度は各種学校である外国人学校にも就学支援金を支給するという画期的な制度だったと指摘。この裁判が、朝鮮高校に通う生徒たちだけが支給を受けられないという異常な差別状態を解消し、無償化法の目的である教育の機会均等をなしとげるためのものであり、朝高の生徒たちが普通教育に加えて民族教育を受ける権利を充足するための、子どもたちの未来を切り開くものであるとのべた。また、被告側による規定ハの削除は、拉致問題など日本と朝鮮との間に存在する政治、外交上の理由によってなされたと指摘。これは「無償化法の趣旨を蹂躙する明白な違法であり、無効である」とのべた。
 続いて金英哲弁護士が、「規程13条に適合すると認めるに至らなかった」という不指定処分の理由の違法性について明らかにした。
 被告は教育基本法第16条の「不当な支配」を理由に朝鮮高級学校は学校の運営を適正に行うことができない疑いがあるとしているが、金弁護士は日本教育法学会の成嶋隆会長の見解を引用しながら、規程13条は一種の訓示規定と解するほかなく、かりに法令に基づくことを指定の要件と解するとしてもその法令の範囲は限定され、学校の一般的な財務会計事務にかかる法令であると解すべきだと指摘した。そのうえで、文科大臣が「不当な支配」などの会計事務とは直接関係ないものを法令に含めて解釈し不指定処分を下すことは法の委任の範囲を逸脱する違法行為であるとのべた。続けて、文部科学大臣が指定、不指定を判断するにあたっては憲法、国際人権条約、高校無償化法などによりその裁量は著しく限定され、本件不指定処分が文科大臣の裁量の逸脱であることは明らかであると指摘。産経新聞などの真偽未確認の記事や教育目的でない公安調査庁の情報等は「認めるにいたらない」とする根拠にはならないとのべた。これらに加え、本件不指定処分には民族教育の権利の侵害、憲法14条違反、国際人権法違反、行政手続法違反などの違憲、違法が多々あり、いずれの観点からも取り消されるべきだと主張した。
 最後に丹羽雅雄弁護団長が、この裁判において充分に理解されるべき本質的事項について、以下のように陳述した。
 ①朝鮮学校とそこで学ぶ子どもたちは日本国家による朝鮮半島全域の植民地支配という歴史的経緯を有する存在である。②本裁判は朝鮮学校で学ぶ子どもたちの教育への権利に関する裁判である。民族的少数者の子どもたちは国際人権法によって母国語による普通教育と民族教育への権利を保障されており、外国人学校や民族学校は民族的少数者の子どもたちの教育への権利を充足させるための施設である。③高校無償化法は、各種学校扱いされてきた外国人学校にも就学支援金を支給する初の法律で、受給主体は生徒たちである。④第2次安倍政権は朝鮮学校で学ぶ生徒たちを無償化制度から排除する意図を持って本件不指定処分を行った。⑤本件不指定処分により、朝鮮学校で学ぶ子どもたちの等しく教育を受ける権利が侵害され、差別的言動やヘイトクライムの誘因ともなっている。⑥本件訴訟は憲法訴訟であるとともに国際人権訴訟でもある。朝鮮学校の生徒のみを無償化制度の対象から排除したことは、日本国家による制度的人種主義ともいえる事案である。
 丹羽弁護団長は、裁判官に向けて「歴史の法廷にも耐えうる公正な判断を求める」と訴え、陳述を締めくくった。

 これをもって弁論は終結した。裁判長が、判決の言い渡しは7月28日午前11時より行うとのべて閉廷した。
 高校無償化制度からの朝鮮高校の排除という差別に果たして大阪地裁はどのような判断を下すのか。結果は5ヵ月後だ。(相)
 
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