友人が脳梗塞で緊急入院した。
その情報を聞きつけた僕は、すぐにでもお見舞いに行こうとも思いつつ、
病状を考慮して一週間ほどのちに病院を訪れた。
ナースステーションで、彼の病室を訪ねると
「昨日、退院されました」
と聞き、ほっと胸を撫で下ろした。
友人は、1週間の入院を経て3日間の自宅療養の後に職場に復帰した。
幸いにも勤務中に自覚症状があり、
自らの判断でかかりつけの医院に足を運んだところ、脳梗塞と診断され緊急入院した。
脳幹にできた血栓を溶かす薬物を投与され、事なきを得たのだという。
身近に脳梗塞になった人が何人かいるのだが、
身体には何らかの障害が残っている人が殆どだ。
麻痺による言語障害や、運動機能障害により、
薬物治療やリハビリを続ける生活を余儀なくされている。
頭蓋には痛々しい手術跡が残り、生涯その傷が消えることはない。
先日友人に会う機会があったのだが、思ったよりも元気そうで安心した。
いろいろと話を聞いていたところ、
同席していた友人の彼女が父親の看病の為に実家に帰るということを知った。
彼女の父親は突然倒れ、植物状態に陥り、現在も意識がないのだという。
「おれはひとりモンになるけど、よかったら一緒にまた呑もうな」
と僕に言う友人の言葉に物悲しさを感じ、やりきれない気持ちになった。
彼女は言う。
「この年になるとね、再就職しようとしても年齢で切られる事が多いのよ」
「自分は何も変わっていないと思っていても、世間はそうはみてくれないのよ」
それがいわゆる「社会の常識」というものなのだろうか。
「この年」とはいっても、彼女は確か僕よりもひとつ年下の筈なのだが。
僕は現在30歳だが、それほど歳をとったという感覚がない。
たんに自覚していないだけなのかもしれないが。
生老病死は、人間にとって避けては通れない永劫の命題であろう。
旅やスリルに身をやつしてきた僕も、
いずれの瞬間にかそれらと対峙することになるのは必然である。
「私の父親はね、お金は持っていたけど幸福にはなれなかった人なのよ」
彼女のその言葉が、耳の奥のほうでいつまでこだましていた。
そんな夜だった。
その情報を聞きつけた僕は、すぐにでもお見舞いに行こうとも思いつつ、
病状を考慮して一週間ほどのちに病院を訪れた。
ナースステーションで、彼の病室を訪ねると
「昨日、退院されました」
と聞き、ほっと胸を撫で下ろした。
友人は、1週間の入院を経て3日間の自宅療養の後に職場に復帰した。
幸いにも勤務中に自覚症状があり、
自らの判断でかかりつけの医院に足を運んだところ、脳梗塞と診断され緊急入院した。
脳幹にできた血栓を溶かす薬物を投与され、事なきを得たのだという。
身近に脳梗塞になった人が何人かいるのだが、
身体には何らかの障害が残っている人が殆どだ。
麻痺による言語障害や、運動機能障害により、
薬物治療やリハビリを続ける生活を余儀なくされている。
頭蓋には痛々しい手術跡が残り、生涯その傷が消えることはない。
先日友人に会う機会があったのだが、思ったよりも元気そうで安心した。
いろいろと話を聞いていたところ、
同席していた友人の彼女が父親の看病の為に実家に帰るということを知った。
彼女の父親は突然倒れ、植物状態に陥り、現在も意識がないのだという。
「おれはひとりモンになるけど、よかったら一緒にまた呑もうな」
と僕に言う友人の言葉に物悲しさを感じ、やりきれない気持ちになった。
彼女は言う。
「この年になるとね、再就職しようとしても年齢で切られる事が多いのよ」
「自分は何も変わっていないと思っていても、世間はそうはみてくれないのよ」
それがいわゆる「社会の常識」というものなのだろうか。
「この年」とはいっても、彼女は確か僕よりもひとつ年下の筈なのだが。
僕は現在30歳だが、それほど歳をとったという感覚がない。
たんに自覚していないだけなのかもしれないが。
生老病死は、人間にとって避けては通れない永劫の命題であろう。
旅やスリルに身をやつしてきた僕も、
いずれの瞬間にかそれらと対峙することになるのは必然である。
「私の父親はね、お金は持っていたけど幸福にはなれなかった人なのよ」
彼女のその言葉が、耳の奥のほうでいつまでこだましていた。
そんな夜だった。