車名はなぜ外国語なのか

 郷秋<Gauche>の手元に「トヨタの概況2008」という冊子(A4変形、64頁)がある。その中にトヨタが国内で販売している47車種(レクサスブランドを含む)の一覧があり、ここに車名の由来が掲載されているのだが、唯一つの例外を除いた46車種の名前が外国語であることにあらためて気づき、驚いた。

 英語が最も多いのだか、スペイン語、イタリア語、ドイツ語、ラテン語も少なくないが、(各言語からの造語を含む)いずれにせよすべて欧州系の言語である。唯一日本語がベースになっているのが「カムリ」(冠)であるが、クルマのエンブレムは「CAMRY」となっており、果たして日本語と言えるかどうかは怪しい。

 他のメーカーはと言えばどこも似たようなもので、ホンダにも日産にもマツダにも三菱にもスバル(富士重工のことだ)にも日本語もしくは日本語由来の車名は見当たらない。って、実はスバルは「昴」(おうし座にある星団)という立派な日本語だが「スバル」はブランド名であり、「スバル」という名前のクルマは存在しない。

 日本語由来の車名を積極的に使っているのはミツオカ(光岡自動車)だ。「卑弥呼」は正式名称が漢字表記のようだ。他に「ガリュー」は「我流」、「オロチ」は「大蛇」がその由来。現行モデルではないが「リョウガ」が「凌駕」、「ユーガ」は「優雅」、「レイ」は「麗」が由来であったと記憶している。立派だぞ、ミツオカ!

 そう云えば1980年代にいすゞにアスカというクルマがあった。GMグループのグローバル戦略としての“Jカー”の一員でオペルのアスコナやシボレー・キャバリエの姉妹車である。名前の話であった、元へ。車名の元は「飛鳥」だろうな。いすゞも立派であったぞ!

 さて、なぜ日本車に日本の名前を付けないのか。のっけから結論であるが、これはもう「脱亜入欧」思想そのものだろう。アジア(当然日本を含んでいる)の文化は劣りヨーロッパのそれは優れていると云う考え方であり、これが明治以降の富国強兵政策の基本となっている。

 この流の中に日本語は劣った言語でありラテン語、英語、フランス語、ドイツ語は優れた言語であるという考え方がある。更に太平洋戦争後、欧米の言語はお洒落で(洗練されており)日本語はダサい(泥臭い)という、言語学的な優劣(因みに、そんな優劣は存在ないと断言できる)の他にファッションとしての優劣が加わった。

 クルマは日本の中産階級が買える最も高価なモノだ。せっかく買った高価な耐久消費財だから名前はお洒落な方がいい。だからみんなヨーロッパ言語系の名前なのだろうな。郷秋<Gauche>だって「市民」より「シビック」の方がいいもんな。ってことは郷秋<Gauche>も結局は「脱亜入欧」の呪縛から逃れ得ないということか?


 例によって記事本体とは何の関係もない今日の一枚は、冬。寂れた公園のブランコ、その二。
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