がん哲学ノート

順天堂大学医学部 病理・腫瘍学 教授
樋野興夫ブログ

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「がん哲学ノート」150回記念 ~ジュネーブにて~

2013年03月26日 | 日記
 「がん哲学ノート」は、ここに150回を迎えた。ささやかな、継続の達成感である。記念すべき時、丁度、今、ジュネーブ(2013年3月24日)である。初めての訪問である。今回は、偶然にも、筆者のテーマでもある「結節性硬化症」の会議「Multidisciplinary Treatment of Tuberous Sclerosis Complex: Optimizing Care for Children and Adults」に参加する機会が与えられた。本疾患は、小児から発症する、症状も極めて多様であり、治療法も開発途上であり、且つ、遺伝疾患でもあり、病理学者として心悩める、まさに難病である。この度、専門家、家族と一緒になって「日本結節性硬化症学会」を立ち上げた。記念ずべき第一回の「日本結節性硬化症学会総会」の開催(2013年11月1日)に向けて、日進月歩の最新情報を得ることが出来、大いなる学びの時となった。また、本疾患の大家であり、長年の友人であるイギリスの医学者と再会が出来たことは、大変嬉しかった。

 筆者にとって、ジュネーブといえば、まず、ジュネーブ生まれの Paul Tournier(1898-1986:精神科医)を想い出す。筆者が医学部の学生時代、神戸で、Paul Tournier の講演を聞いたのは、人生の大いなる出会いであった。どうして、Paul Tournier の講演を聴く場に導かれたのか、思い出せない。筆者は、今回の旅に、Paul Tournier の著作『聖書と医学』(赤星進訳 聖文舎発行)を携えた。1975年7月6日購入、1975年7月16日通読と本末に記述されていた。21歳の医学部生の時代であり、400ページを超える本で、至る所に、赤線が引いてあり、まさに、夜を徹して読んだことであろう。「どの人にとっても、彼に現在起こりつつあることは ー病気、不安、悲しみ、困難ー が問題なのである。彼はその出来事から何かを学び、決定を下さなければならぬのである。彼はどこに助けを見いだすであろうか。」(page 119)に、既に「がん哲学」&「がん哲学外来」のコンセプトがあり、再発見の大変貴重な長旅の機内の読書の時間となった。

 さらに、忘れてはならぬのは、新渡戸稲造(1862-1933)が、1920年に設立された国際連盟の事務次長の時代(1920~1926)を過ごしたジュネーブである。会議が終わり、国際連合欧州本部(旧国際連盟本部)の建物を見学し、それから、徒歩でレマン湖に出て、まだ、肌寒い湖岸の遊歩道を散策した。花時計、大噴水、さらに、サン=ピエール大聖堂では、カルヴァンが説教の際に使っていたという椅子を見た。「新渡戸稲造没80周年記念」の年に、国際連盟の地:ジュネーブを訪れることが出来たのは不思議であり、『「知的協力委員会」(1922年設立)の21世紀版』にとって、大いなる静思の時でもあった。

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出会いの連鎖反応 ~「南原繁 → 新渡戸稲造 → 内村鑑三 → 矢内原忠雄」~

2013年03月19日 | 日記
 先週、京都で、講演「新渡戸稲造(1862-1933)没80周年記念:がん哲学 ~日本国の処方箋~」(烏丸御池)する機会が与えられた。NHK大河ドラマで話題の、同志社大学の創設者の新島襄(1843-1890)生誕170周年記念事業の心意気で語った。講演に先立ち、久しぶりに烏丸御池を歩いて、30年前の若き日の大学受験の浪人時代が甦ってきた。人生の静思の一時であった。筆者にとっては、京都は、忘れ得ぬ「人生邂逅の場」である。

 思えば、京都での浪人時代に、東大法学部の学生時代に南原繁(1889-1974)から直接教わった人物に出会い、その人物を通して、南原繁の風貌を知るに至った。大変、興味を抱き、南原繁をもっと知りたいと思った。「将来、自分が専門とする分野以外の本を、寝る前に30分読む習慣を身につけよ。習慣となれば、毎朝、顔を洗い、歯を磨くごとく、苦痛でなくなる」と言われた。そこで南原繁の本をいろいろと購入して、必死に読んだ。当然、30分間では十分ではないので、夜を徹して読むこともしばしばであった。南原繁の著作を読んでいると、新渡戸稲造に行き当たる。南原繁は、「何かをなす(to do)の前に何かである(to be)ということをまず考えよということが(新渡戸稲造)先生の一番大事な教えであったと思います」と語り、また「明治、大正、昭和を通じて、これほど深い教養を持った先生はなかったと言ってよい」と語っている。それではいったい新渡戸稲造とはどういう人物なのかと、今度は新渡戸稲造の本を購入して読むようになった。南原繁は、内村鑑三(1861-1930)に強い、深い影響を受けており、内村鑑三も必然的に読むようになった。さらには、同じく、新渡戸稲造と内村鑑三から強い影響を受けた矢内原忠雄(1893-1961)のことも学ぶに至った。「出会いの連鎖反応」によりこれら4人の人物(南原繁 → 新渡戸稲造 → 内村鑑三 → 矢内原忠雄)の膨大な著作に向かい、彼らの思索の中に分け入った次第である。今年は、矢内原忠雄生誕120周年でもある。

 大阪医師会の3地区の合同学術研修会で、「がん哲学外来 ~対話カフェ~」の講演の機会が与えられた。山極勝三郎(1863-1930)生誕150周年&吉田富三(1903-1973)生誕110周年記念事業の思いを込めての講演であった。熱心に聴いて下さり、「緒方洪庵記念 がん哲学外来」が開設される予感がする。日本医師会も「日本国の医療の理想」を、高らかに提示する時であろう。「医療の幕末」に突入の時代、京都と大阪で、時を同じくして、講演の機会を与えられたことは、不思議な思いである。また、丁度「島大病院にがん哲学外来」(山陰中央新報 2013年3月15日付け)の記事が手元に送られてきた。

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ベッドサイド朗読 ~寄り添う愛~

2013年03月12日 | 日記
 先日、病院での「がん哲学外来」で数組の「ベッドサイド がん哲学外来」の機会が与えられ、一組は「ベッドサイド朗読」の場となった。スタッフが『がん哲学』を4ページ枕元で朗読された。「吉永小百合プロジェクト」と謳いながら「偉大なるお節介」の実践である。筆者は、病室の傍らで、スタッフの真摯な朗読と患者さんの柔らかい表情を見つめながら、何とも言えない温かい雰囲気に大いなる感動を覚えた。今後の日本国の「ベッドサイドの緩和ケア」の在り方にもなるものと実感した。まさに、「がん哲学外来 ~主体の自覚:病気であっても病人でない~」の具体的な学びの時でもあった。

 実は、数年前に、試作的な意味を含めて、ラジオ番組の隙間で、アナウンサーによる『がん哲学』の一部が、朗読されたことがある。その時、良い反響を多数、頂いていたので、『がん哲学』は朗読に耐える文章であることは、さりげなく感じてはいた。それが、実際の現場で、実現するとは、本当に不思議な思いである。これも、時代の流れであろうか? 会話が難しい症状・状況になった時において、「ベッドサイド朗読」は「寄り添う愛」の「対話カフェ」のモデルとして、ますます必要性が求められる予感がする。

 『「先生は、我が国病理学研究の第一人者でありながら、「アスベスト・中皮腫外来」、「がん哲学外来」といった現代人に必要とされるユニークな外来を立ち上げられました。そこで心身ともに悩んだ患者さんへの温かいお言葉をかけておられます。また、「NPOがん哲学外来」を開かれ苦しんでいるがん患者の精神的救済に尽力していらっしゃり、素晴らしい人間性、行動力に敬服致します」』のメールを頂いた。涙なくして語れない。

 週末、「第4回 がん哲学外来シンポジウム ~寄り添って生きる~」が開催された(お茶の水 OCC)。大変盛況であった。筆者は、基調講演「寄り添って生きる」の機会が与えられた。牧師という「意外性の司会」と「社会福祉士、精神保健福祉士、看護師、患者」によるパネルデスカッションは、大変ユニークな組み合わせで、内容の濃いものとなり、会場は大いに盛り上がった。早速、「新たな気持ちで感銘深く聴かせて頂きました。講演後の質疑応答でも、分かり易い事例をだして、丁寧にご説明頂き、講師と会場が一つとなっていることを実感して嬉しく思いました。特に日米での東日本大震災のボランティアの比較は、今後の我が国のボランティアの在り方を示唆している事例で、大変興味深く思いました。」とのコメント頂いた。「がん哲学学校」の様相を呈して来た。

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学んだものを生かす ~社会性(ソシアリティ)~

2013年03月05日 | 日記
 文部科学省がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン採択事業「先導的国際がん研究の動向:アスベスト暴露による中皮腫 ~環境発がんのリスク予知と予防への新しい展開~」が開催された(順天堂大学)。タイ、ベトナム、韓国、インドネシア、日本の研究者、さらに、厚労省、文科省、環境省からの参加もあり、大変有意義な国際シンポジウムであった。シンポジウム終了後、今後の国際交流・協力のありかたが大いに議論され、極めて充実した時となった。最大の収穫は、全員一致による「国際環境発がん制御研究会(The International Society for Environmental Carcinogenesis Research )」の確認であろう。未だに、誤診の多い難病中皮腫の国際的な「病理・画像診断研修教育プログラム」の推進は「目下の急務」である。この活動が「21世紀の知的協力委員会」(Committee on Intellectual Cooperation in the 21st Century)の時代的要請に導く予感がする。

 早速、「大盛況で先生の企画力を再認識させて頂きました。本邦でも中皮腫研究の重要性をさらに国全体に認識させる必要性を痛感いたしました。」、「貴君のおっしゃるように、アジア諸国とのコラボレーションはアジアの一員として重要と感じます。かつ、human relationshipを説かれる貴君の姿勢にも共感を覚えます。フランスで、英国で、米国で、すでにアスベスト関連疾患が出ていたにも拘わらず、戦後の復興には低廉で丈夫なアスベストがどうしても必要だったのです。それが、今頃になって中皮腫の増加というしっぺ返しを食い、地震によって封印しておいた鬼が現れる。おとぎ話さながらです。しかも、日本のこの状況を知ってなおアジアの諸国はアスベストを使い続ける。それを人ごとにしておいてはいけないのだと感じています。――― 貴君の雄大な構想の礎石の一つにはなることもできるでしょう。ご指示ください。」と激励の言葉を頂いた。

 「がん対話カフェ in 天神」が調剤薬局(総合メディカル)の企画で開設された。それに先立ち、筆者は「開所記念講演:がん医療の隙間を埋める ~がん哲学とは?~」(福岡国際ホール)の機会が与えられた。会場は、驚くことに一杯であった。翌朝の新聞に大きな記事として紹介されたようである(西日本新聞 2013年3月3日付け)。今年は、山極勝三郎(1863-1930)生誕150周年・吉田富三(1903-1973)生誕110周年、新島襄(1843-1890)生誕170周年、新渡戸稲造(1862-1933)没80周年記念の年である。「先人の会話の立ち聞き」を旨とする「病理学者」としての、『社会をよく見て、「がん」から学んだものを生かす=社会性(ソシアリティ)』(新渡戸稲造)の心得でもある。

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「本流の源流の先見性」 ~新島襄・新渡戸稲造と『がん哲学』~

2013年02月27日 | 日記
 先週、新島襄(1843-1890)の故郷の群馬で、{「新島襄生誕170周年記念:新島襄記念 がん哲学外来・カフェ ~医療の懸け橋~」『がん哲学』を語る}のタイトルで講演の機会が与えられた(群馬県桐生厚生総合病院)。病院長、看護部長を始め、多数の職員、また外部からの参加もあり、会場は熱気に溢れ、不思議な程に充実した時であった。年内に「新島襄記念 がん哲学外来」が、「内村鑑三記念 がん哲学外来」(独立行政法人国立病院機構 沼田病院)に次いで、群馬県内で、開設される予感がする。「新島襄 → クラーク(1826-1886)→ 内村鑑三(1861-1930)・新渡戸稲造(1862-1933)→ 南原繁(1889-1974)・矢内原忠雄 (1893-1961)→ がん哲学(樋野興夫)の本流ですね!」との、心温かい、ニューモア感のある、激励のコメントを頂いた。大変、微笑ましく、なんとなく嬉しさが込み上げた。今秋には、群馬県で「新島襄生誕170周年記念 市民公開シンポジウム」の企画が進められているようである。一方、80年前の三陸大津波(1933年)の後、被災地宮古を訪ね「Union is power; 協力は力なり」と人々を励ました新渡戸稲造の没80周年記念講演会が、「東日本大震災復興支援宮古講演会」として5月に岩手県宮古市で開催されるとのことである。筆者は、「新渡戸稲造博士とがん哲学」のタイトルで、先日、講演を依頼された。事の重大さに、本当に身が引き締まる思いである。

 「AACR-Japanese Cancer Association Joint Conference: Breakthroughs in Basic and Translational Cancer Research」(Feb 21-25, USA)が開催され、筆者は、Session2「Circulating Tumor cells and Other New Diagnostic Technologies」の座長をする機会が与えられた。約700人もの参加があり大盛況であった。日進月歩の「最先端のがん研究」の学びの時であり、また、1993年「分断構造を持つ遺伝子の発見」でノーベル生理学・医学賞を受賞した Phillip A. Sharp 博士夫妻と話す機会があり、筆者の恩師 Knudson博士 (1922~) の話題にまで会話が発展し、大変貴重な想い出となる日米がん会議であった。

 読売新聞「論点」(2013年2月21日付け) の記事「中皮腫対策 国家戦略で ~診断・治療法の確立急務~」が送られて来た。『「論点」拝見。いま、本当にリーダーシップが問われていますね。「がん」研究のリーダー、オリジン・オブ・ファイアーに期待しています。』との身に余るメールを頂いた。飛行機内で、映画「あなたへ」(高倉健 主演)を観賞した。大変感動的で涙した。NHK大河ドラマ「八重の桜」の主人公の綾瀬はるか も出演しており、改めて八重の夫:新島襄の「本流の源流の先見性」を静思した。

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