ひまわり博士のウンチク

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深沢七郎『風流夢譚』

2010年02月09日 | 本と雑誌
Furyuyume
 
 深沢七郎の『風流夢譚』は「中央公論」の1960年12月号に掲載された短編小説である。物語は、ある夜一晩の夢である。夢の中で、日本に革命が起きる。
 自衛隊も革命軍と行動をともにする。
 
 「自衛隊もみんな俺達と行動を同じにしていて、反抗するのは幹部だけで、下ッパはみんな農家の2、3男坊ばかりだから、みんな献身的に努力しているのだ」
 
 革命が起きたという夢の話だけなら、なんのことはない、ありきたりの左翼系の小説だが、次の一節が大問題になった。
 
 皇太子殿下と美智子妃殿下が仰向けに寝かされていて、いま、殺られるところなのである。私が驚いたのは今、首を切ろうとしているそのヒトの振り上げているマサキリは、以前私が薪割りに使っていた見覚えのあるマサキリなのである。私はマサカリは使ったことはなく、マサカリよりハバのせまいマサキリを使っていたので、あれは見覚えのあるマサキリなのだ。(困るなァ、俺のマサキリで首など切ってはキタナクなって)と、私は思ってはいるが、とめようともしないのだ。そうしてマサキリはさーっと振り下ろされて、皇太子殿下の首はスッテンコロコロと音がして、ずーッと向うまで転がっていった。(あのマサキリは、もう、俺は使わないことにしよう、首など切ってしまって、キタナクて、捨てるのも勿体ないから、誰かにやってしまおう)と思いながら私は眺めていた。私が変だと思うのは、首というものは骨と皮と肉と毛で出来ているのに、スッテンコロコロと金属性の音がして転がるのを私は変だとも思わないで眺めているのはどうしたことだろう。それに、(困る困る、俺のマサキリを使っては)と思っているのに、マサキリはまた振り上げられて、こんどは美智子妃殿下の首がスッテンコロコロカラカラカラと金属性の音がして転がっていった。首は人ゴミの中へ転がって行って見えなくなってしまって、あとには首のない金襴の御守殿模様の着物を着た胴体が行儀よく寝ころんでいるのだ。
 
 この部分が、不敬であるとして右翼の17歳の少年が、中央公論社社長の嶋中鵬二宅に押しかけた。少年は当初、作者の深沢七郎を襲うつもりであったのが,住所がわからず、発行元の中央公論社社長である嶋中との面会を求めた。
 しかし、嶋中は不在で、雅子夫人が重傷を負い、止めに入った50歳の家政婦が刺殺された。
 これが「嶋中事件」である。
 
 深沢七郎はその後この作品を封印し、『風流夢譚』は表舞台から姿を消した。
 
 僕はこの小説を、オリジナルの中央公論で読んでいる。回収前に父親が購入していていたのを読んだのだ。
 中央公論の原本はその後行方不明になり、残念に思っていたところ、2002年に鹿砦社が『スキャンダル大戦争』という、いささか怪しげな雑誌に無断でそっくりそのまま転載した。
 しかし、僕がそれを知ったのはごく最近のことで、すでに入手はかなり困難な状況だった。
 それが、偶然先頃入手することができた。
 
Scandal1
 
 新たに組み直したものでなく、発行当時のままに復元されている。
 コンピューターでテキスト化されたものならネット上にアップされているが、活字とフォントはかなり雰囲気が異なる。
 
 しかし、改めて読んでみて、作品としては駄作である。表現がストレートすぎてグロテスクだ。右翼の茶々が入らなければ、自然消滅したことだろう。
 文学作品としてではなく、近代史の遺産として残しておきたい。
 
 この『スキャンダル大戦争』には、同じく右翼の抗議で封印された、大江健三郎の『セブンティーン』の後編、『政治少年死す』も著者に無断で掲載されている。
 
 Seijishonen
 
 こちらは1961年2月に「文学界」に掲載された作品である。
 浅沼稲次郎事件を、右翼の少年(山口二矢がモデル)の目を通して描いたもので、右翼から猛烈な抗議が来た。そのため、前半の『セブンティーン』は『性的人間』とともに単行本化されたが、『政治少年死す』は作品集の中にも文庫でもまったく刊行されていない。
 しかし、前編である『セブンティーン』を読んだら、後編も読みたくなるのは人情だ。
 
 この作品はかなりしっかりしているし、封印を解いても良いのではないか、と思うのだが、どうだろう。
 
 テキストだけなら、ネットにアップされたものを読むことは出来る。
 リンクは以下。
 
 『風流夢譚』
 『政治少年死す』
 
          ■■■■■■■■■
 
 ところで今日(2月9日)は、夏目漱石の誕生日である。
 このところ、やたらと漱石が気になっていて,話題にも良く上っていた。
 どうやら、漱石に呼ばれていたらしい。
 
 読解力指導のテキストに、『道草』でも使おうかと思っていたところだ。
 
Natsume_soseki
 
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