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大田昌秀『沖縄 鉄血勤皇隊』

2017年06月17日 | 昭和史

 
 先日亡くなった大田昌秀さんの最後の著書である。
 大田さんは生前、「生涯で100冊の本を出す」と言っていたが、90冊は超えたはずだが100冊には届いていないのではないだろうか。
 米軍基地返還後の沖縄経済と琉球独立に関する本を書きたいと、ずいぶん調査をされていたようだ。楽しみにしていたがその本は出ずじまいだった。
 本書の奥付けを見ると、発行日が「2017年6月12日」となっている。6月12日は大田さんの92歳の誕生日である。6月初めには店頭に並んでいたので、版元が気をきかせたのだろう。
 しかし、奇しくも命日になってしまった。出版社としては複雑なところだろう。
 写真は10年ほど前、東京阿佐ヶ谷の居酒屋で撮ったツーショット、それと自筆の毛筆書きサインのみの名刺。
 
 「鉄血勤皇隊」とは沖縄戦にかり出され、日本軍と行動をともにした十代の少年兵達である。武器を持たされることはめったになく、弾運びや伝令が主な仕事だった。米軍の艦砲射撃や機銃掃射の飛び交う中、危険な作業を強いられた少年兵の犠牲者数は約900名。これは沖縄戦の悲劇の象徴とされる「ひめゆり学徒」の犠牲者数をはるかに超えている。しかし、本土では「ひめゆり学徒」は知っていても「鉄血勤皇隊」を知る人は少ない。
 「鉄血勤皇隊」の慰霊碑は、主に出身学校単位で複数ある。その中の一つに、大田さんの出身校である沖縄師範学校の犠牲者を慰霊する「沖縄師範健児之塔」がある。大田さんはその脇に、学生時代からの念願であった「平和の像」を建立した。だが、いつもひっそりとしていて、訪れる人は疎らだ。
 「ひめゆり」もそうだが、「鉄血勤皇隊」も本土の法律では兵士として認められる年齢に達していない若者が多数いる。明らかに沖縄差別であり、さらには政権が末期症状になると、無謀・横暴な行動に出ることのあらわれである。現在の安倍政権のやりかたもそれに近い。
 
 大田さんの鉄血勤皇隊に関する著書は複数あり、『沖縄健児隊』というタイトルで出版されたものが最初で、この本の出版社は約束された「平和の像」建立の寄付金を払わないどころか、印税も未払いのまま廃業してしまったという。大田さん自らが鉄血勤皇隊として動員され、「千早隊」という伝令を受け持つ危険極まりない体験をもとにドキュメンタリータッチで書かれた『鉄血勤皇隊』(ひるぎ社)は前著を増補したものである。後に那覇出版社から新書判になって復刊された。
 本書『沖縄 鉄血勤皇隊』(高文研)は、出身校単位の記録を元に書かれているので、「鉄血勤皇隊」の全体像がわかりやすい。
 第3章の慰霊棟についてのエピソードは、以前お話をうかがったことがある。裏話的な要素が多くて興味深いので、本になったことはあり難い。

 15日に、大田さんの葬儀は無事に執り行われたと聞いた。本来ならば参列すべきだったが、どうにも動きがとれず、献花だけで遠方から冥福を祈った。
 
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