『子供たちにとっての本当の教科書とは何か』 ★学習探偵団の挑戦★

生きているとは学んでいること、環覚と学体力を育てることの大切さ、「今様寺子屋」を実践、フォアグラ受験塾の弊害

思いがけない中学受験

2013年01月19日 | 学ぶ


 塾をはじめたい(始めなければならない)と思った大きなきっかけはひとつではありません。
 長男が六年生になった時、家人が、荒れ始め評判が悪かった地元中学より私立へ進学させる方がよいのでは、と切り出したのです。何度か家族で話し合った末、受験することに決まりました。
 「男は仕事」と、自らが育った雰囲気のまま、それまでは学校や子どものことは任せっきりでした。盛んになっていた世間の私立志向や受験情報など、知識はまったくありません。入塾テストがあるということさえ、そのときはじめて知りました。

 しかし、小さいころからメダカやザリガニが好き、遊びに夢中で6年生まで宿題以外の勉強はしたことがない、そんな小学生が合格できるほど「難関中学をめざす入塾テスト」は甘くありません。それでも何とか中堅塾に潜り込みました。

 


 急な受験勉強にもいやがらず通っていましたが、数ヶ月たっても成績は芳しくありません。遊びに夢中でしたが、彼の潜在能力については僕なりに手応えを感じていたので、次第に不安がつのりました。
 気になって彼の鞄をのぞいて見ると、算数と国語のテキストは電話帳のような全国私立中学入試問題集です。テキストのボリュームを指導レベルの言い訳にしているのではないか? あるいは「下手な鉄砲」式の指導が行われているのではないか? 
 それまで小学生を教えたことはありませんでしたが、ぼくの受験経験と彼の今までの勉強経験から判断すれば、そのままでは学力が伸びることは到底考えられません。既に夏休みを迎え、入試までに残された時間は限られています。そのまま放ってはおくわけにはいきません。
 指導のようすや塾の考えを知りたくて、塾長立ち会いの進路相談日にはじめて自分で出席しました。
 おもむろにC学園の入学案内を出してきた塾長が
  「ここならいけると思うのですが・・・」
 話のようすからして、やはり長男の能力をきちんと見通しているようには思えません。私立中学の受験レベルがまったくわからないまま、聞きかじりだったS学園に進学させたいと言うと、
  「それはちょっと・・・・・・」
 返事を聞いて、身体の奥から湧きたってくるものがありました。「そんなにむずかしいはずはないだろう!」と、もう一人のぼくが言いました。長い間忘れていた昔のぼくの懐かしい声でした。
 抑えていたつもりが、
  「それじゃ、家でやらせます」
 思いもかけない「無謀な」セリフでした。

 

 翌日仕事帰りに書店に立ちより、とりあえず受験参考書に目を通していきました。
 二十年近く前のことです。型どおりで子どもたちの興味を引きそうにもない抽象的な説明、申しわけ程度に添えられた無味乾燥な写真やイラスト。受験のために、(おそらく暗記中心の)おもしろくもない学習をさせられている、かわいそうな小学生のようすが彷彿としてきました。しかし、まったく経験がないのですから、それらを使わなくては仕方がありません。説明が丁寧でバランスのよいものを選び、帰りの電車の中で入試までのスケジュールを組み立てていました。日曜日や休日を利用しての学習指導です。半年間は瞬く間でした。
 入試が近づき、中学受験のようすも少しずつわかってきたので、学力レベルを考え第一志望はS学園、そして、腕試しはランク上の地元のN学園。
 N学園は奈良県内でもかなりレベルが高く、中学・高校時代の恩師が、まだ現役で指導されているという話を聞き懐かしくもあり、入学後の安心感もあったのです。受験校は決まりました。

 

合格発表日の出来事


 ところが、N学園の試験後、青い顔をして会場から出てきた長男が、
  「・・・手が全く動かなかった」
 精神状態さえ、うまくコントロールするだけの余裕がなかったことが悔やまれました。限られた時間、指導する僕自身も「合格」という目標しか見えず、夢中で突き進むだけでした。
 翌日、発表を見に行きましたが、もちろん番号はありません。家に結果を連絡して、「可能性はあるから」と二次試験の願書を受け取るために事務室前に並んだときのことです。
 窓口で申し込むと、後ろの方で母親らしき二人組が、
  「まァ、二次試験の願書ですって!」
  「ふふっ」
 なんだ!? なんなんだ、これは? こういう母親がいるのか、今は! 頭に血が上り、次に全身が熱くなりました。日比谷公園、渋谷、新宿・・・学生時のデモ以来でした。
 たいせつな合格発表を見に来るときは、身なりの前に、心を磨いて来るべきではないのか。「開いた口がふさがらない」と聞くことはありましたが、そのときまで、自分がなるとは思いもしませんでした。
 まず、子どもたちのことが頭に浮かびました。こういう感覚で育てられた子どもたちが合格し、しかるべく大学に進む? やがては社会に出て、それなりにリーダーシップをとるようになっていく? 少年犯罪が、盛んにニュースに取り上げられるようになっていたときです。問題の一端が見えた気がしました。
 半年前、長男に塾をやめさせたときと同じ声が大声でわめいています。「やれ! お前がやれ! 絶対やれ」。 長い間忘れていた夢が頭の中いっぱいに蘇り、ずーっとこのときを待っていたような不思議な感じがしました。

 

 

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