ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

アグー

2012年06月29日 | 動物:哺乳類

 正体不詳の美味

 アグーとは豚の1品種である。食べ物としてのアグーについては今(2012年)から約6年前の2006年5月に紹介し、今年になって一般のスーパーで売られているアグー肉がアグーと多種豚のハーフであり、100%アグーを生産している養豚農家もあるということを知って、先々週には『アグーの本物』として再度アグー肉を紹介した。

 2006年5月に紹介した時の記事の中で、

 去年だったか、テレビの料理番組でもアグーが紹介された。そのテレビ番組が放送されてからであろうが、ある日、従姉が言う。
 「あんた、アグーって知っている。豚肉のことなんだけど。美味しいらしいよ。」
 「グルメの俺が知らないわけ無かろう」と私は威張って答える。「グルメの」はともかく、「知らないわけ無い」はその通りで、私はもう何年も前からアグーを知っており

 と私は書いているが、去年まで住んでいたアパートの近くにJA沖縄が経営するスーパーがあり、そこには確かに2006年よりも前からアグー肉を置いてあった。初めてアグー肉を見た時に、当然の如く「何だアグーって?」と疑問を持った。

 2006年5月に紹介した同記事の続き、

  その名前が面白かったので、数年前に私はアグーを調べている。沖縄に古くから食用として飼われており、成豚の体重は100キログラム内外と、食用豚にしてはそう大きくは無い。全身黒色の毛で覆われており、いわゆる黒豚といわれるものであるが、素肌は肌色である。鼻先が尖っていて、イノシシに似た強そうな顔をしている。

 その記事を書いてから6年が過ぎた今年(2012年)1月、ヤンバルの羽地ダムを散策し、そこの資料館を覗いた時に初めてアグーに出会った。アグーといっても生きては  いない。剥製のアグー。でも、写真で見て想像していた通りの姿だった。メタボというイメージのある豚という動物からは遠い。豚よりは�に近い。ちょっと怠けて小太りになった�、野生の荒々しさが消えた表情の�、といった感じ。
 今年5月には生きているアグーに会った。アグー生産農家を訪ねたのであった。生きているアグーもやはり、見た目は豚より�に近い。まだ若いアグーはよく動く。普通の白豚に比べるとスマートなので体も動きやすいのであろう。成長した豚でもそう太ってはいない。小太りといった感じ。成豚の(たぶん) 雄には牙も生えていた。

 アグーとはいったい何者かと改めて調べてみた。沖縄県の畜産関係のサイトなどを見ると、「14世紀に中国から渡って来たもの」とあるが、それも確かでは無いようだ。アグーという名前の由来が「粟国島」ではないかという説もある。であるあらば、元々沖縄に生息しているリュウキュウイノシシを粟国島で家畜にされたとも考えられる。
 島豚アグー、結局、どこからやってきたのか正体不明。あんたはいったい何者?と問いたい気持ちもあるが、いいのだ、正体不明でも。美味しければ。

 
 アグー(あぐー):ウシ目の家畜
 イノシシ科の哺乳類 中国渡来なのか在来なのか不詳 方言名:アグー
 「察度王(1385年)の時代、中国から久米36姓の移住に伴って持ちこまれた・・・豚は、背中が湾曲し腹が地につく程に垂れた、中国奥地の黒豚と同じだったとする説もある」と『沖縄身近な生き物たち』に書かれてある。「背中が湾曲し腹が地につく程に垂れた」は、養豚場で見たアヨーという名の豚の特徴である。
 同書に「太平洋戦争まで普通に飼われていた島豚(シマウヮー)は、・・・バークシャーとの交配種だと言われている」ともあり、それらから類推すると、1385年に持ち込まれたのはアヨーで、アヨーとバークシャーの交配種が島豚となる。
 ただ、『沖縄身近な生き物たち』も「・・・とする説もある」とか、「・・・と言われている」などと断定しているわけでは無い。元々リュウキュウイノシシがいたので、中国からの豚が入ってくる前に、それを家畜化していた可能性もあるとしている。
 リュウキュウイノシシを家畜化したものがずっと昔からあって、それとアヨーとの交配種が島豚アグーなのかもしれない。アグーの雄は牙が生えていて、イノシシの雰囲気が少しある。もちろん、私の推理も根拠が無い、素人の想像である。
 
 アグーを養っている農場ではフリーセックスとのこと。自然の欲求で仔が生れる。
 
 アグーの成体、雄(たぶん)には牙が生えている。イノシシの名残であろう。

 
 アヨー(あよー):ウシ目の家畜  イノシシ科の哺乳類 黒毛豚の一品種 方言名:アヨー
 中国産で14世紀に沖縄入ってきたと推察される豚。背中が湾曲し腹が地につく程に垂れて、全体は黒色だが、四肢が白い。

 バークシャー(Berkshire):ウシ目の家畜
 イノシシ科の哺乳類 黒毛豚の一品種
 イギリスのバークシャー州で作られた品種で家畜の豚としては中型。全体は黒毛に覆われるが、四肢、尾、鼻の先は白色。

 記:ガジ丸 2012.6.23 →沖縄の動物目次
 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
 『日本の哺乳類』志村隆編集、株式会社学習研究社発行