ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

ミナミコメツキガニ

2013年07月26日 | 動物:魚貝類

 手の平の上のカニ

 カニはハサミを持っていて、うっかり掴もうとするとそのハサミに挟まれて痛い思いをすることを、私は子供の頃の経験で知っている。なので、生きているカニを掴む時は注意して背中側から甲羅をしっかり掴むようにしている。したがって、手のひらの上にトンボやチョウ、カナブン(ハナムグリ)、バッタなどの昆虫、あるいは、カエルなどが乗っかっても何とも思わないが、カニを手の平の上に乗せようとは思わない。

 去年の年末から今年の正月にかけて小豆島に住む友人Oが8泊9日の日程で沖縄に遊びにやってきた。その頃既に畑仕事に忙しくしていたので、私はほとんど相手ができず、彼は一人で観光した。滞在中の2日目から4日目にかけては八重山の旅を楽しんだ。
 彼が石垣から那覇へ戻ってきた夜、一緒に飲みに行く。そこで彼の石垣、西表旅の話を聞いた。デジカメを持っていてその写真も見せてくれた。「カンムリワシと思われる写真も撮ったよ」と言う。カンムリワシの写真を撮りたいと常々願いながら、2度の八重山の旅でそれを果たせず悔しい思いをしていただけに、「チクショー」という想いも少しはあったが、「しめた」という想いが強く、「この写真、俺にもくれ」と頼んで、頂いた。
  彼の撮った写真の中にもう一つ欲しいものがあった。何者か判らなかったが、青いきれいな小さなカニの群れ。群れは女性の両手の上にあった。もちろん、女性の手に興味があったのでは無く、青いカニに興味を持った。「何奴だ」と、この写真も頂いた。

 手のひらの上のカニはミナミコメツキガニとすぐに判明した。手の持ち主は観光ガイドの一人で、海担当のインストラクターとのことであった。「カニを手の平に乗せるなんて豪傑な女性」などとは思わない。ミナミコメツキガニはとても小さく、これなら私でもハサミを怖がること無く手の平の上に乗せることができるに違い無い。
 「インストラクターだよ」とOが私の質問に答えた時、私はさらに「その女、美人だったか?若かったか?スタイルはどうだったか?ビキニだったか?」などと訊くことはしなかった。あくまでも私が興味を持ったのは手の平の上の青いカニであった。ただ、海の小さな生き物を優しく手の平の上に乗せる、その心には興味を持ったが・・・。

 
 ミナミコメツキガニ(南米搗蟹):甲殻類
 ミナミコメツキガニ科 奄美大島以南の南西諸島、東南アジアに分布 方言名:不詳
 名前の由来について資料は無いが、奄美大島以南に分布することからミナミ(南)、カニの一種なのでガニは迷うことは無い。コメツキについては、「米搗き」が広辞苑にあり、「玄米をついて精白すること」のこと。「米搗蟹」も広辞苑にあり、その中の「両方のはさみを上下運動させる」が「米搗き」の動作に似ていることからだと思われる。
 方言名は不詳としたが、本種はよく目に付くので呼称が無いとは思えない。カニの総称はガニと言う。本種は小さいのでガニグヮー(蟹小)とか言うかもしれない。ちなみに、シオマネキの類はカタチミガニグヮーという沖縄語がある。片爪蟹小という意。
 甲長15ミリていどの小さなカニ。甲は球形で、全体が青みがかっている。砂質の干潟に生息し、数百~数千の大集団を成す。危険が近付くと砂に穴を掘って潜る。
 「歩き方に大きな特徴がある。横に歩くのでは無く、前進歩行する」と文献にあったが、私は未確認。カニが前に歩くのである、ぜひ見てみたい。砂に潜る際の潜り方にも特徴があるようだが、これも私は未確認。夜も活動するとのこと、これももちろん未確認。

 記:2013.7.20 ガジ丸 →沖縄の動物目次

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
 『沖縄釣魚図鑑』新垣柴太郎・吉野哲夫著、新星図書出版発行
 『水族館動物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団監修・発行
 『磯の生き物』屋比久壮実著・発行、アクアコーラル企画編集部編集
 『沖縄海中生物図鑑』財団法人海中公園センター監修、新星図書出版発行
 『いちむし』アクアコーラル企画発行