ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

センダン

2017年07月17日 | 沖縄の草木:公園街路

 もう15年以上もご無沙汰しているが、漆工芸作家のMさんと一時期親しくしていただいた。沖縄の伝統工芸である漆器は琉球王朝時代から盛であり、現在も多くの漆器工芸家が活躍している。その中でもMさんは技術も知識も確かな人で、私は漆器をやるわけではないが、彼の工芸に対する姿勢、つまり、仕事に対する姿勢には多くのことを学ばせてもらった。Mさんには申し訳ないことだが、学んだことはしかし、役に立てずにいる。
 当時、一度、Mさんの家を訪ねたことがある。古文書の研究会にも参加して、沖縄漆器の古い技術なども調べているという話から、琉球王朝時代は王府に貝摺奉行(注1)という役所を設け漆関係の管理をしていたほど、沖縄にとって漆工芸は重要であったなどという話まで興味深く聞かせていただいた。
 「ウルシと、器の木地となる材料を自家生産しようと思い、近くに土地を借りて、それらの木を植えてある。見に行こうか。」と言うので、ついて行った。借りた土地というのは雑木雑草の生い茂った原野のような中にあり、獣道のようなところを歩いて行く。
 「ハブがいそうですね?」と訊くと
 「いるよ。」と、当然じゃないかといったような顔をして答える。そういう場所を一人で切り開いて、植林したということだ。
 数本のウルシの木があった。昔は沖縄にも多くのウルシの木があって、その樹液を採取していたらしいが、現在はほとんど無いらしい。漆生産が採算に合わないということもあるが、ウルシの木そのものが沖縄にはほとんど無いとのこと。気候が合わないのか、台風のせいか、潮風に弱いのか詳しい原因は不明だが、Mさんのウルシの木も健やかに成長しているとは言えなかった。
 「古文書を読みながら試行錯誤の段階」とMさんは言った。

 Mさんの植林地には、器の木地となる材料も植えられていた。センダンであった。ウルシの木よりもはるかに数は多く、こっちの方はいたって健やかで、高さは3~4m、幹の直径は10cmほどに成長している。材料として使うには直径30cmは欲しいとのことで、あと14、5年は待たないといけないということだった。
 センダンはその木目が美しく、肌もきれいなので、木製器の材料としては一級品とされている。特に透明な仕上げとなる拭き漆(注2)の技法でよく用いられる。木目の美しさから家具材としても重宝されている。成長が早く、20年ほどで直径30cm以上となり、家具の材料として十分役に立つ。昔は娘が生まれたら庭にセンダンを植え、娘が嫁に行く頃にはそのセンダンを伐採し、タンスの材料にしたらしい。

 注1、貝摺奉行の貝摺とは、螺鈿に用いる貝(夜光貝など)を摺るという意の貝摺。そのような仕事をする人を貝摺師という。薄くした貝は装飾の材料になる。装飾法は螺鈿の他に堆金、沈金などがある。螺鈿も含めて詳しい説明がいるかと思うが、いずれ別項で。
 注2、精製した漆は元々透明な塗料で、それに顔料を混ぜて朱色や黒色になる。漆工芸に関しては、注1の内容と合わせて、いずれ詳しく述べたいと思う。
 
 センダン(栴檀):公園
 センダン科の落葉高木。原産分布は九州以南、台湾、他。方言名:シンダンギ
 高さ20mに達する。枝を横に広げ自然に美しい傘状の樹形となる。陽光を好むが、耐潮風性が弱いので、風当たりの強い場所への植栽には向かない。成長はきわめて速い。
 春、円錐花序で紫色の小花を枝の先に多く咲かせる。花には芳香がある。開花期は3月から5月。別名タイワンセンダン。上述の通り木材としての価値も高い。軽くて耐久性が強いので、家具の他、壁板などの建築材としても利用される。
 文献に「樹皮にフリペルテノイドが含まれ、駆虫剤、殺虫剤として利用する。」とあり、また、「古来、獄門の木として忌まわれた。」とあったが、それらは知らなかった。
 「栴檀は双葉より芳し」の栴檀はビャクダン(白檀)の異称で、インドネシア原産のビャクダン科の半寄生常緑高木。香料植物として利用されているまったく別の植物。
 
 花序
 
 花
 
 板材

 記:島乃ガジ丸 2005.3.13 →沖縄の草木目次

 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行

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