ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

古酒の店

2012年07月20日 | 沖縄05観光・飲み食い遊び

 今年3月の模合(もあい:正当な理由のある飲み会)はメンバーの1人Tが発掘した店で、泡盛をメインとした飲み屋。名前を「名もなき店」という。
 その飲み屋が、沖縄広しと言えど(広くはないか?)そうは無い店、たぶん、他に類を見ないのではないかと思われるような店。酒好きの私は、酒飲んで感動することがある。あるといってもまだ日本酒で2度、ウィスキーで1度、泡盛で2度、今思い出せるだけで言えばその5度だけ。しかしその日は一晩で3度も感動した。
 日本酒の2度はどちらも極上の吟醸酒で値段も高かった。ウィスキーの1度はスコッチの30年物、これも高かった。泡盛の2度はどちらもクース(古酒)、これもまた高価なもの。思えば、10年ほど前までは高価な酒もまれにだが飲む余裕があったのだ。今はもうビールをけちって発泡酒しか飲めない日々となっている。

 私の落ちぶれた話はさておき、「名もなき店」で一晩に3度も感動した酒はいずれも泡盛のクース、クースとは泡盛を3年以上寝かしたものを言うが、『沖縄大百科事典』の記事を借りると、「泡盛を長期間密閉容器に貯蔵した酒。ことばでは表現できないような芳香を発し、ほとんどアルコール味を感じさせないまろやかな甘味を呈する酒」とある。この記事を書いた人はこよなく泡盛を愛し、極上のクースを飲んだ人なのであろう。
 その辺のスーパーに行けば、クースは手に入る。安いものだと一升瓶で3千円位のものがあるが、四合瓶で数千円のものも含めて、その程度では「ことばでは表現できないような芳香を発し、ほとんどアルコール味を感じさせないまろやかな甘味」には至らない。四合瓶で1万円を超えるものだと、「うむ」と肯き、笑みも漏れる。

  さて、「名もなき店」で一晩に3度も感動した酒はいずれも「芳香を発し、ほとんどアルコール味を感じさせないまろやかな甘味」であった。「芳香」は、泡盛の持つアルコールの刺激臭が微塵も無く、上品に甘い。うっとりする甘さ。私が言葉にすれば「和装の吉永小百合がにっこり微笑んで出してくれた上品な和菓子の匂い」となる。
     

 「どこからこんな旨いクースを手に入れるのですか?」と店長に訊いた。
 「店じまいするマチヤグヮーをあちこち回って入手しました」との答え。

  マチヤグヮーとは小売店であり、今のコンビニのようなもので生活に必要ないろいろなものを置いてある店。倭国でいう雑貨屋に近いかもしれない。そこはまた、その横町の情報が集まる場所であり、横町の人々が情報交換をし、ただユンタク(おしゃべり)する場所であり、店主と客の数人がお茶を飲みながら時間を過ごす場所でもあった。
 マチヤグヮーはコンビニに押され、しだいに少なくなった。つまり、マチヤグヮーはどんどん店じまいしていった。マチヤグヮーのほとんどは酒も販売していて、泡盛も多く置いてあった。古いマチヤグヮーには当然、売れ残りの古い泡盛もあった。
 泡盛のクースは概ね甕に貯蔵して何年も寝かせるのだが、瓶の泡盛でも環境が良ければ旨いクースになるらしい。それを店長は狙って、買い入れたのだそうだ。他にも酒造元が何かの記念で出したビンテージ物を買い、それらも長く保管しているとのこと。
 泡盛をこよなく愛す店長のいる店、酒の好きな人は肴もおろそかにしない。クースがあまりに美味くて何を食ったか覚えていないが、肴もたぶん美味しかった。
     

 記:2012.7.8 ガジ丸 →沖縄の生活目次

 参考文献
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『泡盛の文化誌』萩尾俊章著(有)ボーダーインク発行

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