ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

魔法使いカリー・ヒッター

2016年05月13日 | ガジ丸のお話

 プロローグ

 いつも楽しい夢を見ている私が、今年(2016年)の3月はしばしば楽しくない夢を見て夜中目を覚ますことがあった。そんな夢、いくつもあるが2つ例を挙げると、
 夜、繁華街を歩いていると、爺様がチンピラに殴られていた。爺様は仰向けになって倒れ、それに馬乗りになったチンピラが爺様を殴っている。それを見た私は走って近寄りチンピラの顔を蹴り飛ばした。蹴り飛ばされたチンピラは傍に倒れピクリとも動かない。私は爺様を近くの店へ運んで手当てを頼んでその場を去る。しかしその後、チンピラが起き上がって私を追いかけてきた。彼は手にナイフを握り「殺す!」と叫びながら私に向かってくる。私は逃げた。追われる夢、殺されるかもしれない夢、その恐怖で目が覚めた。
 もう1つは、高校の同級生が何人も出てくる夢。同級生のA男が化け物になっていて、隣の家にいる。「あんた、彼に狙われているから逃げた方がいい」とE子やH男にうながされ、私はそっと家を出るのだが、A男に見つかる。彼は大きなカニの姿に変身して、仮面ライダーに出てくるショッカーみたいな数人の子分に私を襲わせる。私は戦う。子分を何人も倒した後、ついにカニと対峙する。カニのハサミは大きく鋭い。大きいくせに動きは速い。「勝てねぇ、俺の命もここまでか」と観念したところで目が覚めた。

 4月に入ると楽しくない夢も少なくなって夢で起こされるということはほとんどなくなったが、4月後半に入ると変な夢を見るようになった。変な夢とは結婚する夢、4月後半の2週間で4回も見てしまった。結婚生活には不向きの性格である私が、結婚生活には不能の財力と金玉力の私がそんな夢を見た。潜在意識の願望なのだろうか?
 結婚する夢はそれぞれ日を置いて4回だが、相手は4回とも異なっている。そして、4人とも私の知っている女では無い。結婚相手なら真っ先に静岡の才媛K女史が出てきそうなものだが、彼女では無い。あるいは、既婚者ではあるが、子供の頃から仲良しの従妹Tや、従姉の娘Mや、従姉の息子嫁Mらが、「離婚したよ」と言って私に抱きついてくることも(私の願望として)考えられるが、彼女たちの誰でも無い。そして、私の知っている美人女優とか美人歌手とかでも無い。そもそも4人とも特に美人ではない。
 4人とも違う人だが、歳は概ね30歳くらい。美人ではないが大人しめの顔立ちで、上流階級では無いが精神に上品さがあり、謙虚さが顔に出ているような雰囲気。
     
 何はともあれ、結婚する夢を2週間で4回も見たというのが私にとって特別なことなので、これはいかなる意味を持った夢なのかとしばし考えた。妄想癖のある私は考えている内に妄想に走った。妄想は膨らんで物語となった。それが以下。



 1、名前?・・・無ぇよ

 「魔法使い」というと聞こえがいいが、ウチナーグチ(沖縄口)でいうとマジムン、魔物という意味。墓に囲まれた家に住んでいると、そういう類の者が現れやすいようで、既に何人(匹?)かのマジムンがやってきている。面倒なので見えないふりをし、なるべく相手にしないようにしている。であったが、ある夜、台所から、
 「旨ぇなぁ、この酒」と、マジムンらしからぬはっきりした声が聞こえたので、人間かと思って「誰だ?泥棒か?」と思いつつ台所を覗くと子供(小学校4、5年生くらいの男の子)が一人食卓の前に座っていた。見た目は人の子だが、雰囲気からマジムンだとすぐに判った。座って私の作った日本酒を飲んでいた。冷蔵庫から勝手に出したようだ。
 「あっ、お前、俺の大事な酒を、勝手に飲みやがって!」と私は声を上げ、食卓の上の四合瓶を奪い取った。まだ飲み始めたばかりのようで、さほど減ってはいなかった。
     
 「ケチケチするなよ。いっぱい入っているじゃねーか。」
 「ケチケチだとー、この糞ガキ!人の家に勝手に入って来やがって!」
 「大声出すんじゃねーよ、さあ、注いでくれ、コップが空だ。」
 「注いでくれだとー!ガキのくせに酒飲みやがって。」
 「ガキじゃねーよ、お前ぇよりずっと長く生きている・・・生きているというのは可笑しいかな、まあ、何というか、取りあえず存在しているよ。」

 ここまで会話して、やっと私も落ち着いてきた。「そうか、やはりマジムンか」と心で思い、「しまった、相手してしまった」と少し後悔したが、もはや手遅れ。しょうが無いので自分用のぐい呑みを出して、彼の対面に座った。

 「そんじょそこらにある酒じゃないんだ、俺が自分で作った大事な酒だ、もう一杯だけだぞ。足りなければ、市販の酒が別にある。それを飲め。」
 「あー分かったよ。そうか、自分で作ったのか、うん、それでか、造り酒屋に似た甘い匂いが漂っていたんだ。それで俺もついフラフラと入ってしまったんだ。」
 「褒めてくれてありがとう。酒の味が判るマジムンなんだな。さあ、注いでやる。」
 「ほいほい、なみなみと注いでくれ。ありがたやありがたや。」

 大事な酒を彼のコップに注ぎ、それから、自分のぐい呑みにも注いで、一口飲んだ後、彼の顔をマジマジと見た。全体の見た目は人間の、日本人の男の子だが、目が人間とは違う。鈍く青く光っている。見つめていると引き込まれそうな深さがある。
 なるべく彼の目を見ないようにして、大事な酒は言った通り、それ一杯にして、あとは別の酒を出し、それを飲みながら会話を続けた。

 「マジムンが酒を飲んで、飲んだものはどこへ行くんだ?小便もするのか?」
 「小便なんてしねぇよ。飲んだものは体全体に行き渡って、その内蒸発する。」
 「旨いって言っていたが、味は判るのか?」
 「舌に味覚はあるから旨い不味いの感覚はある。」
 「ふーん、そうなのか。あー、そんなことより先に、名前を聞かせてくれないか?」
 「名前?か、そんなの必要無ぇだろう?」
 「えっ、マジムン同士で呼び合ったりしないのか?」
 「そいつを意識すればそいつが応じる。お前ぇ後ろ向きになってみろ。」というので、彼の言う通り椅子ごと後ろ向きになってみた。すると、すぐに彼に呼ばれた・・・気がした。名前を呼ぶのが耳に聞こえたわけでは無く、「おい」とか「ちょっと」とかいった呼びかけでも無く、私の存在そのものに声を掛けられたような感じ。

 「なるほど、そういうことか。でも、俺みたいな人間からすると名前はあった方が便利だ。混沌の中から一つの形を作り出せる。そのもの本質を表すわけではないがな。」
 「ふーん、そいうもんか。だったら、お前ぇが勝手につけたらいいさ。」
 「そうか、ならそうしよう。でも、何か名前の根拠となるようなヒントが欲しいな。」
 「何だそれ?」
 「お前を代表する性質みたいなもんさ。例えば、見た目が牛の様であったら牛次とか、犬の様だったらケン太とかなるんだが、お前の見た目はどこにでもいそうな子供で特徴が無いから、何か得意技とか、独特な魔法が使えるとか無いのか?」
 「得意技?・・・なんてものは無いな。酷い魔法や強い魔法なんてのも俺は使わないしな。俺がやっているのはたいていはイタズラ程度の、痛くも痒くもない、だけど、ちょっと笑えるかもしれない程度の魔法だ。それもたまにだがな。」
 「笑える魔法か、それは面白いかも。最近ではどんなイタズラをした?」
 「最近だと、そうだなぁ、・・・あっ、一週間くらい前だったかなぁ、あー、ちょうど清明の頃だったよ。女が一人墓参りに来て、このすぐ後ろの墓だ。その墓の前で「結婚相手が見つかりますように」なんて呟いていたからよー、魔法をかけてやった。」
 「どんな魔法をかけたんだ?相手がすぐに見つかるような魔法か?」
 「あー、そうだ。これから出合って、お前と話をするような状況になった男の中で、最初に「あい」という言葉を発した奴にお前は惚れる、っていう魔法だ。」
 「ほう、それは面白いな。で、その女は結婚できそうな女か?つまり、若いか?」
 「歳か、お前ぇよりはずっと若ぇよ。30くらいかなぁ。」
 「それで、上手く行きそうなのか?」
 「そりゃあ当然、上手くいくだろうよ。俺の魔法はなかなかのもんなんだぜ。」
 「ふんふんふん、そうか、そういうイタズラをするのか。そうか、・・・ちょっと待てよ、・・・よし、決まった。お前の名前はカリー・ヒッターだ。」
 「何だそれ、ハリーポッターのもじりか?」
 「そうだ。けれど、ちゃんと意味はある。カリーは沖縄で「目出度い」という意味だ。それをヒットさせる奴ということになる。どうだ?」
 「勝手にしろよ。」
     
 ということで、私の大事な酒を盗み飲みしたマジムンの名前はカリー・ヒッターとなった。私も不本意ながら、マジムンの知合いができてしまった。カリーはそれ以降も時々やってきて、勝手に家に入ってきて、勝手に私の酒を飲むようになった。マジムンの知り合いが出来てしまった。それが幸か不幸なのかは今のところまだ不明。



 2、魔法にかかった女

 カリーが消えた後、「マジムンと知合いになってしまったなぁ、面倒なことにならないかなぁ」とくよくよ考えながら寝床に着いた。その時ふと、
 「一週間くらい前に、結婚したがっている女に相手がすぐに見つかるような魔法をかけた」とカリーが言っていたのを思い出した。「一週間前」、「30女」ということから、そういえばと思い出した。一週間前のできことを。

 いたずら好きの魔法使いカリーヒッターと出会う一週間前のこと。行き付けの銀行へ用があって出かけた。従姉の娘Y子が銀行員で、たまたま去年からその銀行が勤務先となっていて、投資とかいった面倒な用の時は彼女を指名して相談している。
 その彼女がそういえば、この間変なことを言っていた。
 「ねぇ、おじさん、私と結婚してくれない?このままだとずっと独身で、子供を産まないまま人生が終わりそうさぁ。」と。彼女はもう30になっているが、まだ独身。

 Y子は美人、私から見ると「とても可愛い娘」の類に入る。彼女が赤ん坊の頃から可愛がっていて、彼女も私のことが大好きで、彼女が小学生から中学の頃までは時々デートもした。映画に連れて行ったり、食事に連れて行ったりだ。高校を卒業した後も飲みに連れて行ったりした。大学を卒業して社会人になってからは彼女も恋に忙しく、私もそれを邪魔してはいけないという配慮をし、デートに誘うことも無く、親戚の集まりなどで「たまに会う」程度であったが、それでも、親戚の中ではごく親しい間柄は続いていた。
 Y子は美人なので恋人ができないということは無い。詳しくは聞いていないが、大学の頃にごく親しく(肉体関係のある)付き合う男ができ、その男と別れてからも、社会人になってからも数人の付き合う人(肉体関係まで達しない人も含め)がいたらしい。
 ところが、何が悪いのか、彼女はまだ独身である。性格に欠点がある?とは思えない。美人にありがちな多少のタカビー(高飛車)はあるが、基本的に優しい。
 そんな彼女からの「結婚してくれない?」発言に冗談だろうと思いつつも、恋愛にも結婚にも慣れていないオジサンはアタフタしてしまった。
 「何言ってるんだ、娘のような歳の女とどの面下げて結婚できるというんだ。いくらこの歳で独身だといってもだ、俺にも世間体というものがあるんだ。」と応えると、
 「だよね、私にとっておじさんは最後の最後の滑り止めなんだけどさ、滑り止めを選ぶにはまだ早いね、もう少し婚活、頑張ってみるよ。」としゃあしゃあと言う。やはり冗談であった。ということで、魔法使いカリーの魔法にかかったのはY子ではない。

 その日その時のことをよーく思い出し、初めから振り返ってみる。朝、畑仕事を少々やって、畑小屋で作業着から普段着に着替えて、そこから車で銀行へ行った。銀行へ着いたのは昼前、11時頃だった。番号札を取り、待合のソファーに座りのんびりと順番が来るのを待った。畑を出る前に電話してY子に予約してあった。
 2、3分も待たずにY子がやってきて、「おじさん、あそこのテーブル席で話しましょう」と言い、彼女が指差した方向にある衝立の向こうに案内された。投資の話を始める前に、上述の、オジサンがアタフタするような話となったのだが、その後すぐ、別の女子行員が我々のテーブルにコーヒーを運んできた。
 「いらっしゃいませ」と言って、私に向かいニッコリとほほ笑む。可愛い娘だ、その顔はしかし、見覚えがある、つい最近どこかで会っている。
 「私と同期のK子、可愛いでしょ、私と同じ歳で彼女も独身。」とY子が紹介する。
 「こんにちは」と言って、彼女も気付いたのか、「あっ!」という顔になった。そこで私は思い出した、つい最近、というか、昨日、私の家で会っている。
 「あい、あんた、昨日墓参りしていた人じゃないの?」
 私の家の周りにはいくつもの墓があって、彼女は昨日、墓参りの後、手を汚したと言って私の家に水道を借りに来ていたのだ。私の問いに彼女はすぐ、
 「はい、昨日はありがとうございました。」と答えた後、私を見て、私の顔をしばらく見つめて、そして、困惑したような表情を見せつつ、その場を去った。若い女性に見つめられるなんて何十年も無かったこと、オジサンの私も少しドギマギしたが、こんなしょぼくれたオジサンにまさかのことは起きるまいと思い直し、そのことは忘れた。
     
 ところがだ、カリーが魔法をかけたのは私の家の近くにある墓で、「一週間前」で、かけた相手は「30女」ということだ、どれもがK子に当てはまる。そしてカリーは、
 「これから出合って、お前と話をする男の中で、最初に「あい」という言葉を発した奴にお前は惚れる、っていう魔法をかけた」と言っていた。私は確かに「あい」と言った。私の「あい」は愛という意味ではなく、ちょっと驚いた時に発する「あらっ」と同じ意味の沖縄語「あい」だ、それもカリーの言う「あい」に違いないということか?
 それから4日経った金曜日の夜、Y子から「おじさん、今家にいる?ちょっと寄って行きたいんだけど。このあいだ紹介したK子も一緒だけど。」と電話があった。
     


 エピローグ

 2週間で4回も結婚する夢を見たのだ、貧乏農夫の私でも惚れてくれる女がいるかもしれない。結婚不適応者の私でも「結婚して」と言ってくれる女がいるかもしれない。そんな、彼女にとっては迷惑な魔法にかかった女にこれから出会えるかもしれない。
 しかし、その前に私は、女に魔法をかける魔法使いカリー・ヒッターに出会わなければならない。マジムンに出会う・・・のか?マジムンと知りあう・・・のか?マジムンと酒を飲みながら語り合う・・・のか?・・・うーん、それはちょっと嫌だなぁ、ということで、自身で長々と書いておきながら、この話は無かったことにしたいと思う。

 記:2016.5.7 ガジ丸 →ガジ丸のお話目次


ジャンル:
ウェブログ
この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« なびぃへの旅2012 粟国島 | トップ | 2016.5.13 暑いぜ!まだ5月... »

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 30日以上前の記事に対するトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。