ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

サシミヤー

2010年12月31日 | 沖縄04行事祭り・生活風習・言葉

 サシミヤーとは漢字で書くと刺身屋となるが、といっても、魚の刺身だけを売っている、あるいは食べさせてくれる店のことでは無い。
 「サシミヤー行って、マグロの刺身1斤(600グラム)買ってきて」と使いに出されたりするが、
 「サシミヤー行って、三枚肉(皮付き豚ばら肉)半斤(300グラム)買ってきて」と言われる場合もある。サシミヤーは魚の刺身だけで無く、魚丸ごとや切り身だけで無く、豚肉、鶏肉、牛肉などの肉類も置いてある店である。サシミヤーは俗称であり、正式には精肉鮮魚店となる。サシミヤーの看板には概ねそう書かれてある。

 肉はお肉屋さん、魚は魚屋さんで別々に買うのが普通である倭人にとっては、肉と魚が一緒に売られているのには驚くかもしれない。であるが、元々、動物性蛋白の摂取はもっぱら魚からであった倭国では(獣の)肉食文化が無く、魚屋は遠い昔から存在したが、肉屋というものは文明開化した明治以降のことであろう。ところが、琉球には古くから肉食文化があり、豚を養い、山羊を養い、その肉を食い、牛も鶏もアヒルも食い、犬や猫まで食った。ウチナーンチュにとっては魚の肉も獣の肉も、同じく肉なのである。
  といっても、おそらく、魚と獣肉を一緒に売っている精肉鮮魚店の出現は戦後のことであろう。昔の沖縄は貧乏だった。その頃、獣肉は、庶民の口にはそう頻繁には入らなかった。盆正月くらいであった。だから、肉屋などというものは日常に必要無かった。近所に魚屋はあっても、肉屋は特別な場所にしか無く、数も少なかった。沖縄もある程度裕福になって、獣肉を日常に食えるようになってから精肉鮮魚店が現れたのだと思う。元々魚だけを売っていた店が、冷蔵設備があるということで肉も扱うようになったのであろう。もちろん、肉を扱わずに魚だけを売っている魚屋も多くあった。また、魚は行商で売られていることが多かった。糸満の魚売りであるが、・・・これについては後日別項で。

 私の実家から北へ30秒歩くとマチヤグヮーがあり、南へ30秒歩くとサシミヤーがあった。どちらも今は無い。私の母は、肉も魚も、野菜も雑貨も、今は歩いて5分ほどの場所にあるスーパーマーケットで買っている。私が今住んでいる首里石嶺には、まだマチヤグヮーもサシミヤーも残っている。首里は古い文化の残る街なのである。そんな首里も最近になって、スーパーマーケットや、特にマチヤグヮーに内容の似ているコンビニに押されて、その数も少なくなりつつある。どちらも沖縄の文化だと私は思うのだが。
     

 記:ガジ丸 2006.3.11 →沖縄の生活目次

 参考文献
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行