ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

竜洞谷のエリカ

2016年06月17日 | ガジ丸のお話

 場面は、以前勤めていた職場の事務所、事務員が2人いる頃なので20年ほど前、私は同僚Oさんが現場監督をする工事の書類作りにパソコンとにらめっこしている。その時、事務員の1人K子が入ってきて、「S(私のこと)さん、お願いがある。」と言う。
 「何だ、今忙しいよー、デートの申し込みは後にしてくれ。」
 「デートは来年でも再来年でもいいさぁ、それより、M子が、息子が急に熱出して今日は休みますってさっき電話があった。」と困ったような顔で言う。M子はもう1人の事務員で、同僚のTさんが現場監督をしているもう1つの工事の書類作りを担当している。
 「Tさんの工事、明日提出する書類があるって、それを私にお願いって。」
 「お願いされたらやればいいじゃないか。」
 「数字を入れるだけなら私にもできるけど、その書類さぁ、数字が何でこうなったかって説明する文章もたくさん書かなければならないのよ、それは苦手なのよ。」
 「で、それを俺にやれってか?」
 「Sさん以外にできる人はいないんだから、しょうがないさぁ。」
 「今日は夕方、大事な約束があるんだ、明日ではダメか?」
 「M子が言うにはどうしても今日中なんだって、お願い。」
     

 宇崎竜童が友人のもう1人のミュージシャンと2人で私の実家に宿泊することになっていた。空港まで迎えに行く約束をしていたが、残業になりそうで迎えに行くのは難しくなった。竜童に電話(当時既に携帯電話を持っていた)し、その旨伝える。
 「タクシーで行くから大丈夫だよ、近くに飯食う所ある?」
 「有名な店があります。タクシーの運転手にその名を言えば知らない運転手はいないでしょう。その店から私の実家は徒歩30秒くらいです。」ということになり、やはり残業となった私は、遅れてその店へ向かう。私の車は近所のKさんに「2、3日1台分貸して下さい」と予め頼んであったので、数台分の広さがあるそこの駐車場に停める。
 その時、夜7時を過ぎていたが南国沖縄の夏はまだ薄明るい。Kさん家の娘と思われる5、6歳位の女の子が立っていてこっちを見ている。「こんにちは」と挨拶すると、女の子は満面に笑みを浮かべて「こんにちはじゃないよ、こんばんわだよ」と言う。
 「そうだね、こんばんわだね。お嬢さんはKさん家の子供?」
 「そうだよ、エリカっていうんだよ。」
 「そうか、エリカちゃんか。オジサンはガジ丸って言うんだ、よろしくね。」
 「うん、友達になろうね。」
 「うん、今日から友達だ。・・・エリカちゃん、オジサン、ちょっと用事があるから今日はこれでサヨナラしようね、また会おうね。」
 「うん、バイバイ。」
     

 その後、私は飲み屋へ入る。竜童一行は既にいて、店に入る私を見て「こっち」と手招きし、私が席につくと、「お疲れさん、急な残業だったんだって。」と、テレビで良く見る髭面のいかつい顔が、テレビでよく見る無邪気な笑顔になって言う。
 「遅れて済みません。私も少し飲んでいいですか?」
 「もちろん、どうぞどうぞ。生でいい?」と無邪気な笑顔は言って、ビールを注文してくれた。そのビールを飲んで、少しおしゃべりして、30分ほどで店を出る。
 「車どこ?荷物の多くは車に乗せておきたいんだけど。」
 「その方がいいですね、車はすぐそこです。」と私は2人を駐車場に案内する。荷物を車に乗せていると、駐車場のすぐ傍、Kさん家の窓からさっき友達になったばかりのエリカがこっちを見て手を振っている。私も手を振り返す。
 「可愛い子だね、知合い?」
 「この家の子供です。さっき知合いになりました。」
 「俺も知合いになろうっと、紹介して。」といういことになって、竜童をエリカに紹介した。竜童はエリカのことが気に入ったらしく、大いに語り合っていた。その経験から後のヒット曲『沖縄ベイブルース』が誕生した・・・ということは無い。

 竜童とエリカがおしゃべりしている間、私と竜童の連れの2人は駐車場で立ちっ放しであったが、その時、私の両足、足首からふくらはぎにかけて痒くなった。痒みは腿にまで上がり、それはすぐに異常な痒さとなった。その部分を見る。私は靴下を穿いている、その靴下の中が異常に痒い、靴下を脱ぐとそこに夥しい数のダニがたかっていた。
 そのおぞましい光景と、あまりの痒さで目が覚めた。
     
 
   ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

 以上は夢の中の話、2016年5月27日の未明に見た夢。8割方は夢、あとの2割は覚めてからの妄想を付け加え脚色している。元同僚のTさん、事務員のM子とK子、宇崎竜童の顔ははっきりと出てきた。女の子エリカは「エリカ」という名前ははっきり覚えているが顔はボケている。そして、もっと強烈に覚えているのは足の痒み。
 5月下旬、畑の、もうすぐ熟しそうであったバナナが何者かに食われ、それを防ぐために袋を被せたら、袋の中が最適空間だったのか、小さな虫の類が大量に発生し、24日、まだ半分は残っていたバナナの房を切り取って畑小屋の中に吊るした。竜童の夢を見たその前日の26日、吊るしていたバナナの実の上列の8本が熟しかけていたので収穫し、ビニール袋に入れ、家に持ち帰った。袋の口はバナナが蒸れないよう開けておいた。
 で、27日の未明、足のあまりの痒さを経験する。おそらく、バナナの実に着いていた虫がそのまま着いていて、私は虫着きのバナナを家の中に持ってきて、虫はバナナから離れて部屋の中に散らばり、寝ている私の足を齧ったに違いない。
 5月31日、部屋の中に見慣れぬ小さな虫を見つけた。まだ何者か判明していないが、ごく小さいので何者かの子虫かもしれない。その後、畑小屋の中のバナナを揺すって、虫らしきものが落ちるのを確認して、その写真も撮った。これもまだ何者か判明していないが、これは先の者よりさらに小さい。もしかしたらダニかもしれない。 
     
     
     
 『アルプスの少女ハイジ』とか『風の谷のナウシカ』とかいったカッコ良く、爽やかな面白い物語にしようと思って『竜洞谷のエリカ』を妄想したのだが、ダニが部屋で繁殖して、寝ている私の全身を襲うといったおぞましい妄想しかできなかった。
 『竜洞谷のエリカ』、宇崎竜童から竜洞、ダニから谷、エリカは夢に登場した可愛い少女の名前からですぐに思い付いた。なかなか良いタイトルと思ったのだが・・・。

 記:2016.6.10 ガジ丸 →ガジ丸の生活目次