ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

父の遺産、叔父の計算

2010年12月18日 | 沖縄04行事祭り・生活風習・言葉

 先日(26日)、友人Hの家で泡盛の古酒入り壺の口切式があって、出掛けた。口切式とは、正式な行事として沖縄の文化風俗にあるわけではない。長い間寝かせてあった泡盛壺の蓋を初めて開けることを私がそう言うだけのことだが、とても楽しい儀式である。
  「どんな味かなあ」と想像するだけで楽しい。こびりついた埃を拭き取り、きつく縛られた蓋の紐を外し、ゆっくりと蓋を開ける。その少し前からすごく良い匂いがする。十分に熟成された泡盛の香り。子供の頃からケーキ屋の甘い匂いは嫌いだったが造り酒屋の甘い匂いは好きだった私にはたまらない匂い。その匂いを嗅ぐだけで幸せになる。実際飲んでみて、酒が旨い(古酒は概ね旨い)となお幸せな気分になる。
 昨年亡くなったHの父親は、酒を飲むというより集めるのが好きだったようで、その部屋にはたくさんの泡盛やウイスキー、ブランデーなどが保管されていた。泡盛の壺入り古酒もいくつかあったらしい。末っ子のHにもそのうちの一つが形見分けされたとのことであった。はっきりとはしないが、おそらく25年は経っているだろうという二升壺、銘柄は久米仙。保存状態も良かったようで、中身は全く期待を裏切らなかった。

 姉の二人の息子のために、長男が10歳の頃、10年古酒の入った五升壺を、表に長男の名前を彫り込んでプレゼントした。その5年後、次男が12歳の頃、同じ内容の五升壺を、表に次男の名前を彫り込んでプレゼントした。プレゼントといってもタダであげたわけではない。その口切には私が必ず立会い、私もその酒の味を楽しむという条件付。
 現在、姉一家はアメリカに住んでいる。アメリカ生活は25年ほどになる。二人の兄弟共にアメリカで生まれた。義兄は毎年夏には子供を連れて沖縄にやってきていたが、思春期の息子たち、次男は昨年から、長男は4、5年前から父親に付いてこなくなった。
 長男は去年二十歳になった。そして、今年の夏はきっと、彼も4、5年ぶりに沖縄へやってくるだろう。口切式をやるというオジサンとの約束があるからだ。10年古酒を10年寝かせてあるので20年古酒となる。父の遺産であるHの壺の中身は25年古酒であったのでちょっと負けてはいるが、それでもとても楽しみなことなのだ。
 口切式から彼の滞在中の数日間で、五升壺の中身は減る。減るが、しかし、飲む人間は彼と義兄と私の三人なので、おそらく一升も飲むまい。壺の中には四升の古酒が残る。四升入りの壺は重い。したがって、それを彼がアメリカへ持っていくことはあるまい。残った酒は必然的に私のものとなる。泡盛古酒五升入りを甥にプレゼントしたその日から、それは予想されていたこと。将来をきちっと見据えた叔父の計算なのであった。

 沖縄の銘酒泡盛。材料はシャム米。県内各地に40ヶ所以上もの造り酒屋がある。私が普段飲みするのは久米仙や多良川、瑞泉、瑞穂、北谷長老などの普通酒。今夜はちょいとイイ酒をと思った時はそれらの古酒にする。中でお気に入りは北谷長老だが、他のものも全て旨いと思う。甥たちの壺の中身は瑞泉。泡盛についてはまた別に詳しく述べたい。
     

 記:ガジ丸 2005.3.29 →沖縄の生活目次

 参考文献
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行

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