ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

アバサー

2011年05月06日 | 動物:魚貝類

 美味なる海のハリネズミ

 もうここ何年も行っていないが、それまでは2、3年に1回くらいの割合で釣りに行く機会があった。私の持っている道具は縦50センチ、横25センチ、厚さ7センチくらいの箱に竿、リール、糸、針、錘など一式が揃って980円だったもの。仕事で久米島に行った時に買っているからもう15年くらいになる。

 おもちゃのようなその道具を使い、久米島で私は30センチを超えるチヌ、キンメダイをそれぞれ1尾ずつ、20センチ程度のイシミーバイを数尾吊り上げている。チヌは引きが強くて、おもちゃのような竿が折れそうになったのを覚えている。
  久米島出張には同僚4人が一緒であった。彼らは皆釣が好きで、それぞれ道具もそれなりのものを持っていた。彼らは私の道具を見て、「そんなんじゃあ、大物は無理だな。」と言って、大きな針を付けた上等の長い竿を慣れた手つきで振って、遠くへ投げた。私はウキ釣りが好きなので、護岸から数メートルも離れていない場所に糸を垂らし、ビールを飲みながら、タバコ吸いながらボーっとウキを眺めていた。
 そんな私に大きなチヌがかかるそのちょっと前、同僚の一人が何か釣れたと言って、上等のリールを懸命に巻いた。彼が吊り上げたのは20センチほどのアバサーであった。アバサーは調理が面倒なのでその場でリリース。その直後に私の竿にチヌ。釣り上げたのを見て、上等の道具を持った同僚が憮然としたのは言うまでも無い。

 アバサーはハリセンボン類を指し、沖縄に4種分布する。その中でもハリセンボンとヒトヅラハリセンボンが多く見られ、調理される。アバサー汁という名前になるが、ミーバイ汁、イカ墨汁等と並んで海の幸の汁物としては、美味なるものとして有名。

 
 アバサー
 和名:ハリセンボン(針千本) ハリセンボン科の海産硬骨魚
 全長30センチ 生息場所、内湾からサンゴ礁域 食性は貝類、甲殻類(カニ類)
 世界中の温帯、熱帯域に生息する。棘の数は400本前後。倭国の居酒屋でよく見るふぐ提灯や、他の飾りものにもする。本種は額の針が長いことが特徴。無毒で美味。

 和名:ヒトヅラハリセンボン(人面針千本) ハリセンボン科の海産硬骨魚
 全長60センチ 生息場所、サンゴ礁域 食性は貝類、甲殻類(カニ類)
 ハリセンボンより大きい。額の針が短い。背中の斑紋の位置も違う。無毒で美味。

 記:ガジ丸 2006.9.9 →沖縄の動物目次
 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
 『沖縄釣魚図鑑』新垣柴太郎・吉野哲夫著、新星図書出版発行
 『水族館動物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団監修・発行
 『磯の生き物』屋比久壮実著・発行、アクアコーラル企画編集部編集