ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

瓦版083 餅栗ぜんざい

2009年02月20日 | ユクレー瓦版

 今年の冬は史上稀に見る短かい冬であった。1年で最も寒い時期である2月の上旬から暖かい日が続いて、野山は既に春の匂いがしている。
 そんな暖かい、のんびりした週末の昼下がり、いつものようにブラブラ散歩をして、そのままユクレー屋へ、いつもよりだいぶ早い時間に着く。
 ユクレー屋に入ると、ケダマンが庭でのんびり日向ぼっこをしていた。
 「よー、気持ち良さそうだね。」と声をかける。
 「あー、ダラダラは気持ちいいよな。怠けない誘惑なんて俺には無いな。」
 「何だそれ、怠けない誘惑って?」
 「んー、ウフオバーが言ったんだよ。オバーは今日も畑仕事だ。『よく働くなぁ』って言ったらよ、『働きなさいって誘惑される』らしいんだな。」
 「ふーん、さすがだな。偉い人だね。人間の鑑だな。」と言いながら、しかし、私もどちらかというとケダマンと同類だ。暖かい、のんびりした週末の昼下がりは日向ぼっこも気持ちいい。ケダマンと並んで、芝の上に寝転んだ。
 そうやってしばらく、二人でダラダラしていると、店の方から声が聞こえた。

 「ケダーーー。」と呼ぶのはユイ姉だ。
 「おう、何だ?」とケダマンは顔を上げ、声の方向を見る。私も一緒に見る。ユイ姉はドアを半開きにして、顔だけ出してこっちを見ている。そして、小さく手招きする。
 「あー、ゑんちゅもいたの?二人ともちょっと来て。」
 「えっ、何だ、話ならこっちからでも聞こえるぞ。」
 「寒いからドアを閉めたいのさあ、中に入ってよ。」
 暖かい日なんだが、ユイ姉には寒いらしい。冷え性なのかもしれない。
 「人がのんびりと良い気分でいるというのに、まったく、面倒臭い奴だ。」とケダマンはブツブツ言いつつ立ち上がる。私もケダマンも、ユイ姉には毎日旨いものを食わしてもらっている恩義がある。言うことをきくしかない。

 「おう、何だ、何の用だ?」(ケダ)
 「正月の餅がが残っていたからね、ぜんざい作ろうと・・・」
 「おー、ぜんざいか、食う、食う、食う。」(ケダ)
 「まだ、話は終わってないよ。それに、まだできてもないよ。これから作るんだよ。でさ、たくさん作るからさ、あんた、ゑんちゅと一緒にひとっ飛びして、ジラースーのとこへ行ってきてちょーだい。もう船は着いてるはずよ。」
 「ジラースーはケータイ持っているだろう?電話すれば済むだろうよ。」(ケダ)
 「ジラースーがね、栗を持ってきてるのさ、それを早く取ってきて欲しいのさ。それからついでに、そこにいる新さん、勝さん、太郎さんやジラースー、ガジ丸、シバイサー博士、もちろん、ゴリコとガジポも含めてね、なんかにも伝えておいてね。」
 「あー、分ったよ。そうか、栗か、俺、大好きだぜ、栗ぜんざい。」(ケダ)
 「餅だけでなく、栗も入れるわけだね。」(私)
 「そう、餅栗ぜんざいだね。」
     

  ということで、ケダマンと、その背中に乗った私は港へひとっ飛び。ユイ姉の言う通り船はもう着いていた。荷物の運び出しの最中だった。
 ジラースーから袋入りの栗の実を受け取る。ユクレー島もオキナワも亜熱帯気候にあるので、マテバシイの実など食えるドングリはあるが、栗の木は育たない。ジラースーが持ってきたのは倭国産、時期はずれということもあって、皮の剥かれた加工品。
 その後、シバイサー博士の研究所へ寄って、博士はいつものように寝ていたので、ゴリコにぜんざいパーティーのことを伝え、ユクレー屋に戻る。

 豆は既に火にかけられてある。ユイ姉は栗と水を鍋に入れ、何やら味付けして、それを火にかけると、手が開いたようだ。カウンター席の我々の前に来て、しばし休憩。
 「餅と栗が一緒なんて盆と正月が一緒に来たみたいなもんだな。」(ケダ)
  「そんな大げさな。」(ユイ姉)
 「両手に花と言ってもいいよ。可愛い系と美人系の二人。」(私)
 「あー、そりゃあいいな。二人とも食べちゃうぞーってな。」(ケダ)
 「あんたたち、ホントに品が無いね。呆れるさあ。」(ユイ姉)

 などと、ユンタク(おしゃべり)している間にぜんざいはできあがり、電話連絡してあったマミナが来て、ガジ丸一行、シバイサー博士一行もやってきて、みんなでぜんざいをご馳走になる。さすが料理上手のユイ姉、ぜんざいはとても美味しく、パーティーは大いに盛り上がった。シバイサー博士がお代わりする際に、「餅と栗のぜんざい、もちっとくり。」と駄洒落を発した時には一瞬冷たい風が吹いたが・・・。
     

 語り:ケダマン 2009.2.20